第8号 平成22年5月31日 配信

内閣府仕事と生活の調和推進室
Office for Work-Life Balance, Cabinet Office, Government Of Japan


発行: 内閣府 仕事と生活の調和推進室

■□ カエル! ジャパン通信 Vol.8 □■

2010年5月31日 発行

  今回のテーマは、『北欧諸国のワーク・ライフ・バランス』です。

  ワーク・ライフ・バランスの先進国とされるノルウェー、スウェーデン、フィンランド等の北欧諸国では、20年以上前から積極的な施策が展開されてきました。いずれの国も男性の育児休業取得率は9割近くにのぼり、女性の社会進出も非常に進んでいます。また、育児休業中の経済的な保障もされている高福祉国家でもあります。

  今回は、北欧諸国の育児支援及び休暇に関する制度を紹介します。 

≪目次≫

★≪取組・施策紹介 Vol.3≫
 「スウェーデンのワーク・ライフ・バランス関連制度」

★≪統計・調査トピックス≫
 内閣府 2009年 「諸外国における政策・方針決定過程への女性の参画に関する調査-オランダ王国・ノルウェー王国・シンガポール共和国・アメリカ合衆国-」 他

★≪コラム≫
 女性の社会進出は少子化を加速させるのか ~ フィンランドの例から

★≪最新情報≫
 2009年通信利用動向調査【総務省】   他

★≪取組・施策紹介 Vol.3≫

◎「スウェーデンのワーク・ライフ・バランス関連制度」
日本では、2008年が「ワーク・ライフ・バランス元年」とされていますが、ワーク・ライフ・バランス先進国とされる北欧諸国は、20年以上前から積極的な施策を展開してきました。 スウェーデンの就業人口の3割以上は公共部門に従事するなど、経済活動における公共部門の割合が高いのですが、国際的な大企業としてはボルボやエリクソン、イケアが挙げられます。オンブズマンの発祥地と言われる同国では、2006年の総選挙で女性議員の比率が47.3%となりました。
今回は、スウェーデンの育児支援、休暇に関する制度を紹介します。
● 育児支援に関する制度
先進国における少子化の理由の一つとして、女性の社会参加の進展による、機会費用(出産・育児期間中に就業が中断されることに伴う費用)の増大がしばしば挙げられます。スウェーデンは、ワーク・ライフ・バランスを支援する包括的家族政策の整備・拡充により機会費用の軽減に成功し、1980年代半ば以降出生率を回復させました。もっとも、このような家族政策実施の背景には、少子化対策だけではなく労働市場と家庭における男女平等、児童福祉の推進という政策目標もあったともいわれています。
スウェーデンが行っている主な家族政策として、育児休業制度及び保育サービスの概要を紹介します。

◇ 育児休業制度
スウェーデンにおける育児休業制度には、「育児休業法」(休業の要件・効果を規定)と「両親保険法」(休業期間中の所得補償について規定)の2つの法律が関わっています。「両親保険」は、スウェーデンが1974年に世界で初めて導入した、父親、母親の両性が取得できる育児休業の収入補填制度です。
スウェーデンの育児休業制度の概要は、以下のとおりです。

*1.休業取得可能期間:出産10日前から子の8歳の誕生日まで
(1)子が18ヶ月に達するまで:完全両親休暇(全日休暇)
(2)子の8歳の誕生日まで:部分両親休暇(4分の3日、2分の1日、4分の1日の3パターンから選択可能)

*2.取得可能日数:両親合わせて最大で480日につき、有給で取得可能

※父親・母親はそれぞれ240日間の休業取得の権利があるが、各自60日間については配偶者に譲ることができない(パパ月・ママ月と呼ばれ、取得しなければ権利消滅)

※ 両親の同時休業取得:出産前の両親教室に参加する場合及び子の出産後29日間のみ可能

※ ひとり親家庭の場合は、一人で480日間の休業を取得可能

※ 双子以上の場合、子ども一人につき、180日が追加

*3.給付率:80%(ただし390日まで。残りの90日は最低保障額のみ支給)

*4.連続して取得する必要はない

*5.全日、4分の3日、2分の1日、4分の1日の4パターンで取得可能


このように、休業期間を分割して取得することができ、短縮勤務として利用することもできるなど、スウェーデンは柔軟な育児休業制度を以前から有していましたが、取得可能日数の大半を母親が取得してしまうという点が問題視されていました。そこで、2008年には「パパ月・ママ月」分を超えて両親の双方が取得した育児休業日数に基づき、事後的に税還付を行う均等ボーナス制度を導入するなど、父親の育児休業取得促進に向けた取組を行っています。

スウェーデンにおける育児支援制度の詳細については、以下をご覧下さい。
「スウェーデン企業におけるワーク・ライフ・バランス調査」(内閣府経済社会総合研究所)

◇ 保育サービス
1970~1980年代のスウェーデンにおいては、女性の社会進出に保育所の拡充が追いつかず、待機児童問題が発生していました。この状況を踏まえ、1995年には、「教育法」に基づき、地方自治体は両親が仕事または学業に従事する家庭に対して、遅滞なく保育サービスを提供する義務を負うこととなりました。この新たな政策と高出生率を受けて保育施設が多数新設された結果、保育施設への入所待ちをしている子どもの割合は大幅に減少しました。

スウェーデンの保育制度の詳細については、以下をご覧下さい。
「スウェーデンの保育制度」(スウェーデン文化交流協会)
http://www.swedenabroad.com/SelectImageX/160679/ChildCare.pdf  [PDF形式:337KB]

● 休暇に関する制度

スウェーデンでは、1977年に制定された「年次休暇法」によって、年間最低25日の有給休暇の付与が定められています。同法は、レジャーの大型化に伴う労働者の余暇期間の拡大要求に応えて、年次休暇の期間を4労働週から5労働週に延長したことから、「5週間年次休暇法」とも呼ばれています。
また、同法制定のポイントは、付与日数の増加のみならず、実際の取得率を上げるための制度設計とした点です。具体的には、1970年代初めに行った調査により、年次休暇を取っていない者の大半が新規採用者又は中途採用者であることが明らかになったため、「年次休暇法」においては以下2つの制度を新たに導入しました。

*1.採用年度から25日の年次休暇(無給)を付与:それまでは、1年間の勤務が付与条件とされていましたが、これにより新規採用者・中途採用者が初年度から休暇を取ることが可能となりました。
*2.年次休暇手当補償制度の充実:年次休暇手当補償制度とは、既に付与されている有給休暇を取得する前に退職した等の理由で有給休暇の権利を行使できなくなった場合に、年次休暇手当の代わりに支払われる金銭的な補償制度のことです。中途採用者が転職先で初年度に与えられる無給の年次休暇を経済的理由で放棄してしまうことを防ぐために充実が図られました。

★≪統計・調査トピックス≫

  今回のテーマである「北欧諸国のワーク・ライフ・バランス」に関連した調査を紹介します。

◎「諸外国における政策・方針決定過程への女性の参画に関する調査-オランダ王国・ノルウェー王国・シンガポール共和国・アメリカ合衆国-」 内閣府 2009年

●ノルウェーは男女共同参画先進国

ジェンダーの視点から国を評価する場合は国連開発計画が導入したジェンダー・ギャップ指数やジェンダー・エンパワーメント指数があります。2008年の「人間開発報告書」では、ノルウェーはいずれも、1位、2位とランクされており、国全体の状況を判断する目安となる人間開発指数でも2位でした。

●ノルウェーの労働者の47.2%は女性

15歳以上の総労働力人口250万人のうち、男性は約132万人、女性は118万人で、女性比率は47.2%でした。

●ノルウェーの民間企業の取締役会における女性比率は25%

2003年時点のノルウェーの民間企業の取締役会の女性比率は8.5%でした。しかし取締役会の男女比率について法規制が導入されたことにより、2007年の同比率は25%まで上昇しました。また、2008年には40%になったと報告されています。

●ノルウェーの男女の収入格差は11.5%

2007年のノルウェーの男女の収入格差は11.5%で、過去5年間に大きな変化は見られません。しかし、女性のパートタイム比率が31.6%なのに対して男性のパートタイム比率は10.5%であり、男女間で雇用形態に差があることがわかります。


◎「ヨーロッパにおけるワークライフバランス-労働時間に関する制度の事例-」独立行政法人労働政策研究・研修機構 2009年

●ラトビア、スウェーデン、フィンランドで柔軟な労働時間制度の導入が進む

就業開始時間及び終業時間の変更制度や、代休制度など、柔軟な労働時間制度を導入している企業の割合は、ラトビア、スウェーデンが最も高く65%、次いでフィンランドが62%でした。「従業員のワーク・ライフ・バランスを図るため」という回答が制度の導入理由として最も多く挙げられています(調査結果はEU合計のみ)。

*European Establishment Survey on Working Time and Work-Life Balance、Eurostatなどの統計調査を元に作成

-http://www.jil.go.jp/institute/chosa/2009/documents/059.pdf  [PDF形式:968KB] 


◎「欧州における働き方の多様化と労働時間に関する調査」 独立行政法人労働政策研究・研修機構 2008年

●ノルウェー、スウェーデン、フィンランドで週48時間を超える長時間労働をする人は10%以下
ノルウェーは調査国31カ国中最も短い結果となりました。北欧諸国の他にもフランスやルクセンブルグ、オランダ、ドイツ、エストニアでも同様に、長時間労働者の比率は10%以下でした。また、スウェーデンは他国に比べて自営業者の長時間労働が少ないことが特徴的でした。

●北欧諸国及びスイスにおいて、女性が育児にかける時間は毎週15時間以上
北欧諸国及びスイスでは、男性も週に7時間以上の時間を育児に費やしており、男女ともに他のヨーロッパ地域と比べて高い水準でした。しかしながら、日本と同様、育児に充てる時間の男女の差が大きいことも明らかになりました。

●ノルウェー、9割の人がワーク・ライフ・バランスに満足
ノルウェーでは、実に9割の人がワーク・ライフ・バランスに満足していると答えており、非常に働きやすい環境であることが窺えます。その他に、北欧のデンマーク、フィンランドに加え、オーストリアやスイス、ドイツでも85%以上の人がワーク・ライフ・バランスの現状に満足している(『非常に満足』及び『満足』)という結果が示されました。

*調査対象 :ヨーロッパ31カ国における約3万人
調査方法 :インタビュー調査

-http://www.jil.go.jp/institute/chosa/2008/08-041.htm

(付属資料「欧州における労働時間とワーク・ライフ・バランスの実態」参照)


★≪コラム≫

女性の社会進出は少子化を加速させるのか ~ フィンランドの例から

  「女性の社会進出は、少子化を加速させる」という意見がありますが、果たしてこれは本当なのでしょうか。

  森と湖、そしてムーミンで有名なフィンランドは、世界で最も女性の社会進出が進んでいる国の1つだと言えます。歴史をたどれば、1906年に世界で初めて女性に被選挙権が認められたのはフィンランドでした。その後も女性の政治参加は積極的に行われ、現政権下でも閣僚の過半数は女性です。

  また、教育においても女性の進出は目覚しく、大学では特に人文科学、医学、法学の分野で、女子の学生数が男子の学生数を上回っています。

  フィンランドの女性は、労働市場にも古くから参加してきました。1960年代の女性の就業の増加は、フィンランドの優れた福祉政策の発展に貢献しました。現在でも、フィンランドの25歳以上55歳未満の女性の労働力率は、85%と世界でもトップクラスです。

  一方で、フィンランドの合計特殊出生率は1.86と、少子化が進む先進諸国の中でも高く、さらに年々上昇傾向にあります(日本の合計特殊出生率は1.37(2008年))。近年のフィンランドの例は、女性の社会進出と少子化問題解消の両立が可能であることを示唆しています。


注)出展元 高齢化社会における雇用政策: 日本とフィンランドの比較研究
(独立行政法人労働政策研究・研修機構)
-http://www.jil.go.jp/institute/chosa/2009/documents/052.pdf  [PDF形式:727KB] 
Statistics Finland(フィンランド統計局)
-http://www.stat.fi/til/synt/2009/synt_2009_2010-04-15_tie_001_en.html(出生率)

★≪最新情報≫

★調査結果紹介★
◇「平成21年 通信利用動向調査」【総務省】
総務省「平成21年 通信利用動向調査」によると、テレワークを導入している企業は19.0%と、2年前の10.8%からほぼ倍増していることがわかりました。テレワークの効果についても9割強(96.2%)の企業が「効果があった」と回答していることから、雇用形態が変わりつつあることがうかがえます。
-http://www.soumu.go.jp/main_content/000064217.pdf  [PDF形式:646KB] 

★イベント情報★
◇労働政策フォーラム「女性が働き続けることができる社会を目指して」【(独)労働政策研究・研修機構】
開催日時:2010年6月3日(木)13:30~17:00
開催場所:浜離宮朝日ホール 小ホール
-http://www.jil.go.jp/event/ro_forum/info/20100603.htm

◇平成22年度 男女共同参画社会づくりに向けての全国会議-話そう、働こう、育てよう。いっしょに。-【内閣府】
開催日時:2010年6月22日(火)13:00~16:30
開催場所:メルパルクホール東京

★助成金制度のご案内★
◇両立支援レベルアップ助成金【(財)21世紀職業財団】
仕事と家庭の両立を図る労働者を支援する事業主・事業主団体の方へ育児・介護雇用安定等助成金(両立支援レベルアップ助成金)を支給しています。本年度は、「代替要員確保コース」「休業中能力アップコース」「子育て期の短時間勤務支援コース」「育児・介護費用等補助コース」の申請が可能です。
-http://www.jiwe.or.jp/ryoritsu/01_assist.html

≪編集後記≫

随分昔の話ですが、ロンドンに行った際、平日の夜にミュージカルを見に行きました。午後7時開演で満員だったのですが、一番驚いたのは家族連れの多さ。お父さんは仕事が終わってから一度家に帰り、きちっとした服装で家族みんなで来ていました。「ゆとりと豊かさ」って、こういうことなんだよなと妙に感動しました。
日本ではまだまだかと思いますが、先般発表された財務省の提言には、「平日にデートも家族サービスもするが、いざとなれば寝食を忘れてやる」とあります。「ゆっくり」と「しっかり」のバランスの取れたメリハリある生活の実現に向けて頑張りたいと思います。(TA)

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地方公共団体でのワーク・ライフ・バランス推進の取組事例を募集します

●地方公共団体で、ワーク・ライフ・バランス推進のためにどのような取組を進めているか、取組事例を募集します。
 取組のきっかけや実績、効果など、ひと工夫した事例、ユニークな事例を含めてお寄せください。
 いただいた事例は、仕事と生活の調和推進室において内容を確認させていただき、今後、メールマガジン等でご紹介させていただきます。
 この機会に、取組を全国に向けてアピールしてみませんか?
※事例の締切りは当面ありませんので、随時ご応募ください。
また、紹介時期のご指定についてはお受けできませんので、あらかじめご了承ください。

取組事例のご応募はこちらから
https://form.cao.go.jp/wlb/opinion-0001.html
※ご記入の際は、冒頭に必ず【取組事例応募】と明記して、ご記入ください。

カエル! ジャパン通信へのご感想やご意見、ご要望をお寄せください

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