平成22年1月29日

内閣府仕事と生活の調和推進室 発行
Office for Work-Life Balance, Cabinet Office, Government Of Japan


改正育児・介護休業法について、厚生労働省雇用均等・児童家庭局職業家庭両立課長の定塚由美子(じょうづか・ゆみこ)氏にお話を伺いました。

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●人口減少社会の到来

現在、我が国では急速に少子化が進行しています。合計特殊出生率は2005年に1.26と過去最低を更新。死亡数が出生数を上回り、さらに国勢調査結果でも総人口が前年を下回って、日本の人口は減少局面に入りました。新人口推計(中位)によれば、2055年に産まれる子どもの数は現在の約4割(約45万人)、高齢化率は現在の2倍(40.5%)。生産年齢人口(15~64歳)も現在の2分の1近くに減少するといわれています。
そして、その要因を考える上で、結婚や出産・子育てをめぐる国民の希望と現実との乖離が生じていることに注意する必要があります。「9割以上が結婚希望」「夫婦の希望子ども数は2人以上」という実際の国民の希望と、少子化という日本の将来像がかけ離れてしまっている。この乖離を生み出している要因としては、不安定な雇用による脆弱な経済的基盤、仕事と生活の調和が確保できないこと、育児不安等が指摘されており、出産・子育てと働き方をめぐる問題に起因するところが大きいといえます。

●育児休業と就業継続

育児休業の取得者割合と規定整備率状況をご説明しましょう。2008年の調査では、女性の育児休業の取得率は90.6%まで上昇していますが、男性はわずか1.23%でした。育児休業制度の規定がある事業所の割合は平均で66.4%、大企業では100.0%近くが規定を整備していますが、残念ながら99人以下の事業所では規定率が低くなっています。また、別の調査では、出産前に仕事をしていた女性の約7割が出産を機に退職しており、育児休業制度の利用は増えているものの、出産前後で就業継続している女性の割合はこの20年間ほとんど変化がないことも分かっています。
子の年齢別に見た、子を持つ母親として望ましい働き方を調査したところ、1歳半までは育児休業又は自宅で子育てに専念したいという人が多いけれど、それ以降は短時間勤務や残業のない働き方の支持率が高くなります。ここからも、女性が必ずしも「子どもが小さいうちは働きたくない」と考えているわけではないことが読みとれます。
一方で、育児休業制度や短時間勤務制度を利用したいという男性は3割を超えました。しかしながら、男性は企業規模に関わらず、女性は規模が小さいほど育児休業制度を取得しにくい。勤労者世帯の過半数が共働き世帯となっている中、今こそ、女性だけでなく男性も子育てができる環境づくりが求められているのではないでしょうか。

●増え続ける介護人口

次に、介護についてですが、総務省の「就業構造基本調査」をご覧ください。5年間に、家族の介護・看護のために離・転職した雇用者の数を見ると、2002年は45万5,100人(男性6万7,200人、女性38万8,000人)だったのに対し、2007年は50万2,100人(男性8万7,400人、女性41万4,700人)でした。企業において重要な地位を占める40~50歳代が圧倒的多数を占め、特に、男性が増え方が大きいことがお分かりいただけると思います。
このような社会情勢を背景として、この度、育児・介護休業法が改正されることとなりました。それでは、改正のポイントをご説明します。

●子育て期間中の働き方の見直し

まず、子育て期間中の働き方を見直しました。具体的には、3歳までの子を養育する労働者が希望すれば利用できる短時間勤務制度(原則1日6時間)を設けることが事業主の義務となりました。また、3歳までの子を養育する労働者は、請求すれば所定外労働(残業)が免除されます。前者は事業主による措置義務です。そして、後者は育児休業と同じく法律上の権利として与えられるため、労働者が請求すれば民事的な効力が発生します。
そして、子の看護休暇の拡充として休暇の取得可能日数が変更になりました。小学校就学前の子が1人であれば年5日、2人以上であれば年10日となります。

●父親も子育てを

父親も子育てができる働き方の実現を目指し、父母ともに育児休業を取得する場合に休業可能期間を2か月延長し、子が1歳2か月に達するまでとしました。これを「パパ・ママ育休プラス」と呼び、母親の職場復帰直後の大変な時期に、両親が協力して子育てできるようになります。また、今回の法改正に伴い、育児休業給付金または育児休業手当金の支給期間も延長されます。
次に、出産後8週間以内に父親が育児休業を取得した場合は、特別な事情がなくても再度の取得が可能です。この期間は子育てが最も大変で、なおかつお母さんの体力もまだ回復していない時期ですので、この時期を別カウントとすることによりに父親が育児休業を取りやすくすることを目指しています。
さらに、労使協定を定めることにより、配偶者が専業主婦(夫)や育児休業中である場合等の労働者からの育児休業申出を拒める制度を廃止。専業主婦(夫)家庭の夫(妻)を含め、全ての労働者が育児休業を取得できるようになります。

●仕事と介護の両立支援

続いて、介護のための短期の休暇制度の創設です。労働者が申し出ることにより、要介護状態の対象家族が1人であれば年5日、2人以上であれば年10日を限度として休暇を取得できるようになります。介護が長期にわたるケースが増え、「毎年取れる休暇が欲しい」との要望が上がったことから新設されました。

●実効性の確保

この他、実効性の確保に関する制度も新設しています。育児休業の取得等に伴う労使間の紛争等について、都道府県労働局長による紛争解決の援助及び調停委員による調整制度を設けました。
また、法違反に対する勧告に従わない企業名の公表制度や、虚偽の報告等をした企業に対する過料の制度を創設しています。

●改正育児・介護休業法の施行日

改正法は、一部を除いて2010年6月30日から施行されます(常時100人以下の労働者を雇用する企業においては、「短時間勤務、所定外労働の免除の義務化」「介護休暇」につき、2012年6月30日施行を予定しています)。各企業は、施行日までに就業規則等を整備しておいてください。

  なお、妊娠・出産したこと、産前産後休業または育児休業などの申出をしたこと、または取得したこと等を理由として、解雇その他不利益な取扱いをすることは法律で禁止されています。詳しくは、こちらをご覧ください。
-http://www.mhlw.go.jp/houdou/2009/03/h0316-2.html

  育児休業の申出の方法は、法律で定められています。詳しくは、こちらをご覧ください。
-http://www.mhlw.go.jp/general/seido/koyou/ryouritu/index.html

  最後になりますが、今回の法改正を機に、父親のワーク・ライフ・バランスや育児休業の支援に関して、啓発面でも力を入れています。「父親のWLB(ワーク・ライフ・バランス)応援サイト」では、ハンドブックの改訂版がダウンロード可能ですので、ぜひご利用ください。
-http://www.papa-wlb.jp/

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  育児・介護休業は、ワーク・ライフ・バランスを考えるうえで、非常に重要なテーマだと思います。本日はありがとうございました。

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