仕事と生活の調和(ワーク・ライフ・バランス)の実現に向けて ひとつ「働き方」変えてみよう!

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平成22年8月31日

内閣府仕事と生活の調和推進室 発行
Office for Work-Life Balance, Cabinet Office, Government Of Japan


今回はワーク・ライフ・バランスに役立つタイムマネジメントの方法について、水口和彦氏お話をお伺いしました。

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●そもそもタイムマネジメントとは?

「最近、「タイムマネジメント」という言葉を耳にする機会が増えています。タイムマネジメントという言葉を日本語で言い換えると「時間管理」となります。ビジネス書のコーナーを見ても「時間」に関する本が増えていることに気付きます。これは最近の傾向で、「時間術」という言葉を含む書籍出版点数は10年前と比較すると5倍以上増えていることからも、それだけ時間の使い方についての関心が高まっていると言えます。」

●あなたは時間管理に自信がありますか?

「タイムマネジメントへの関心が高まっている一方で、まだまだ時間管理への苦手意識を持っている人多くいるようです。弊社が「タイムマネジメントがうまくできていると思いますか?」というアンケートを取ったところ、「できていると思う」と回答した人は3割弱でした。一般的な傾向として、女性の方が男性と比べると時間管理への意識は高い傾向が見られますが、タイムマネジメントの内容について誤解があるように見受けられます。タイムマネジメントというのは、時間を細かく分刻みにして、計画を立て、時間を一切無駄にしないというものではありません。」

●タイムマネジメントのメリット

「タイムマネジメントは仕事のつめこみではなく、仕事を整理することです。たとえば、今日やること、明日やることが明確になると、自分自身の頭も整理されます。これによって、より落ち着いて効率よく仕事を進められるようになります。併せて、オンとオフの切り替えもうまくなりますし、労働時間も短縮できます。実は、私自身がタイムマネジメントを研究してみようと思ったのは、残業時間が長かったからです。一時期は月100時間超の残業していることもありましたが、タイムマネジメントによって、残業時間は30時間にまで短縮することができました。しかし、それ以上に強く感じたことは仕事上感じるストレスが減ったことです。朝、会社に出社する時の気分も「あー、いやだなー。」と思うことはなくなり、ポジティブな気持で仕事にのぞめるようになりました。タイムマネジメントにはそんな効果もあるのです。」

●「仕事の流れ」と「仕事量」を可視化する

「仕事の整理が重要と先にも述べましたが、特に「仕事の流れ(時間)」と「仕事量」を可視化することがタイムマネジメントでは最も重要です。現在、多くの人が複数の仕事を並行して行っています。例えば、中長期的なプロジェクトもあれば、急な仕事が入ることもあります。会議や打合せもあれば、メールにも対応しなければいけません。このように、現在のビジネス環境では「こなさなければいけない仕事=タスク」が急増しており、慌ただしさが増しているのです。例えば、現在では一日に受信するメールが何十件という方は珍しくなく、百件という人もいることでしょう。しかし、電話やFAXによる連絡が主流だった頃に、そこまでのやり取りをしている人はほとんどいませんでした。メールの返信など、細かい仕事が多くなってきており、仕事の全体像がつかみにくくなっていることからも、仕事の整理が重要であると言えます。」

●タイムマネジメントの要素

「タイムマネジメントでは、3つの要素を管理していくことが大事です。まず、会議や打合せ等、時間が決まっている仕事であるアポイントメント、第二にデスクワーク等、時間が自由な仕事であるタスク、第三にこれら2つの仕事に使える時間を指すリソース(空き時間)の3つです。アポインメントの管理は、会議や打合せなどのスケジュール管理に当たりますのでビジネスマナーの領域に入ります。これはほとんどの方ができているはずです。一方、タスクの管理はビジネススキルの領域に入るものです。しかし、上司から、または研修でこのやり方を教わっている人はほとんどいないのが現状です。」

●アポイントメントの管理の方法

「アポイメントを管理するポイントの一つは、開始時刻と終了時刻を書き、仕事の全体の所要時間を明確にすることです。手帳に予定を書く際、開始時刻を書く方はいても、終了時刻や全体でかかる時間を書かれる方は少ないのではないでしょうか。全体でどのくらいの空き時間があるのかを可視化することが大事です。そうすることによってどれだけの時間が空いているかをつかむことが可能になります。」

●タスクの管理の方法

「「タスク」に関しては、実行日別にタスクを書いて管理することをおすすめします。「いつまでにやる」という納期ではなく、「いつやるか」と実行する日を決めましょう。すべての仕事に実行日を設定するのが基本です。実行日は期限よりも前に余裕を持たせることが重要です。期限ギリギリでは、あとで調整する余地がなくなってしまいます。他の仕事の入り方も考えて、実行日を決めることが重要です。突発の仕事やトラブルなどの対応に備えて、実行日を変更する柔軟さを持つようにしましょう。仕事量を極力平準化することが大切です。」

●タイムマネジメントを長続きさせる方法

「アポイントメント管理はほとんどの方がされていますが、タスクの管理は長続きしないものになりがちです。よく、タスクの優先順位を決めて行動すべきだと言われますが、タスクのリストを作ったり、優先順位を決め、タスクをスケジュールに落とし込む作業は意外に大変で、これがなかなか続けられない原因になりがちです。タイムマネジメントを長続きさせる方法は、「タスクの実行日を即決めること」です。」

●タイムマネジメントの2つの視点

「タイムマネジメントには、数日から数週間の期間で仕事量を見る「横の視点」とその日の仕事を見る「縦の視点」の2つの視点があります。まず、「横の視点」ですが、これはタスクの段取りや先の見通しをつけ、「仕事の流れ」を作ることです。一方、「縦の視点」は、リソース管理など「仕事量」をコントロールすることを指しています。この2つの視点を両立させるのがタイムマネジメントです。多くの方は記憶を頼りにタスクを管理していますが、記憶に頼っていては、この縦横2つの視点を持つことはできません。したがって、タスクは書くことが大切なのです。手帳やパソコンのツール等を有効活用しましょう。また、タスクの実行時間の記録を取ることによって、振り返りながら時間の使い方を分析することができます。これは仕事を実行しながら記録を取ってみるようにすれば、意外に簡単です。どのタスクを実行したかを記録することにより、「思ったより雑用に時間をかけている」とか「メールなどの作業時間が多い」などいろいろな発見があります。」

●一日の中でも朝の時間を大切に

「一日の初めは、まず時間管理ツールである手帳やパソコン開いてみましょう。朝は集中力も高い貴重な時間です。メールをチェックしながら「何をやろうかな」と考えている人もいらっしゃるかもしれませんが、迷わず仕事をスタートさせましょう。あらかじめタスクが分かっていれば、すぐに取りかかることができますから、迷っている時間はもったいないです。また、仕事中に新しいアポイントメントやタスクが発生した時は、すぐに書きましょう。すぐに書く習慣が、タイムマネジメントを継続できるかできないかの境目になります。そのためにも、時間管理ツールをこまめに見ながら仕事をするのがおすすめです。仕事の終わりには、今日の仕事を確認し、予定がクリアできたか確認したり、明日の仕事を確認したりしてみてください。それを終えると、仕事上の心配を引きずらずに自信や安心感も得られます。これによって、オンとオフの切り替えが上手になります。」

●中長期的なスケジュールの管理方法

「自分が関わっている仕事」の長期的スケジュールを一週間単位で書き出してみましょう。複数の仕事の流れや、週ごとの仕事量が把握できるようになります。自分自身の仕事の繁閑の波も分かるようになりますし、仕事が重なり過ぎている場合、早い段階で調整することが可能になります。手帳やノート、パソコンのツール、手段は何でもいいですから、複数の仕事を一つにまとめる視点を持つことが大事です。」

●組織的なタイムマネジメント

「タイムマネジメントは個人の裁量にかかっていると思われがちですが、やはり組織全体のコミュニケーションも大事です。部下は自分自身の仕事量を把握し、こなしきれないなら上司に相談することも必要です。一方、上司も部下からの報告を待つだけでなく、自ら進捗を聞いてみることが重要です。こうしたチーム内の要素以外にも、組織の労働時間に影響する環境要素が大きく分けて2つあります。まず一つ目は、トップダウン的な要素です。トップの方針として、「残業をさせない」と明確にリーダーシップを取っている経営者の元では、確かに残業は少ないようです。二つ目は、社風や職場の慣習や雰囲気などのボトムアップ的な要素です。職場全体の時間意識が低い場合は、ムダな残業が多くなりがちです。ムダな残業には3つの種類があり、これが習慣化している場合も多いです。
1. 周りが帰らないから自分も帰りにくいという「つきあい残業」
2. 次に昼間は自分自身の仕事に集中できない「残業から本気」、
3. 最後が本人の仕事の進め方の問題である「なりゆき残業」
組織全体でムダな残業を減らしていくことが重要です。」

Q&A

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●リーダーを含め、チーム全体でタイムマネジメントを進める具体的な実践方法は何かありますか。また、タスクの完成度は個人の裁量に委ねるのでしょうか。

○(水口氏)
チームのタイムマネジメントにおいては、個々人のタイムマネジメントが最も大事ですが、進捗確認などのコミュニケーションも重要です。例えば、部下に納期に関して「どうだ、間に合うか?」と質問するのは意味のないことです。なぜなら、ほとんどの部下が「大丈夫です」と回答してしまうからです。しかし、部下の言う「大丈夫」が上司の思う「大丈夫」ほど余裕がある状況とは限りません。むしろ、「間に合うか?」と聞くのではなく、「スタートできている?」と聞く方が有効です。大事なのは「仕事のスタート」です。納期にばたばたする原因は「時間がない」ことではなく、本当の問題はスタートが遅いことにあるのではないでしょうか。ですから、上司は部下がどのように仕事を始めていくのか、あらかじめ聞いておくのがおすすめです。それによって、上司の側からその後の進捗を確認したり、必要ならサポートすることが可能となります。
次に、タスクの完成度についてですが、基本的に個人の判断に委ねられますが、あらかじめチームでルールを決めておくことが大事です。特に、必要以上に完成度を高めようとする、いわゆる「完璧主義」は時間を使いすぎてしまうことが多いので要注意です。


●職場でのタイムマネジメントだけではなく、家庭でのタスクもたくさんあります。家庭のタスクのタイムマネジメントをうまく実践する方法は何かありますか。

○(水口氏)
職場においても、家庭においても、「その日のうちにやるタスク」と「ついでの時にやるタスク」が存在します。「あれを買わなくちゃ」という買い物などのタスクはやれる時に忘れていては意味がありません。やはり、どんなタスクでも書き留めることが重要になります。「ちょっと時間があったらやること」は手帳の脇に書き留めると有効です。家庭でのタスクは、仕事の場合よりも「今すぐではないけど、時間のある時にやろう」というタスクが多くなりがちですので、これを上手に実行していくのがポイントです。たとえば、昼休みの時間も使って、うまくこなしている人もいます。


●企業ではワーク・ライフ・バランスを実践するために、様々なタイムマネジメント策や業務効率化、仕事の質をアップする対策を講じています。組織でそのような変革を行う場合、組織全体で取り組む知恵は何かありますか。

○(水口氏)
まず、第一に管理職から率先することが一番重要です。管理職や直属の上司が実践することで、部下も自ずと実践し、意識改革につながるようになります。また、全員参加で取り組む場合は、タスクを書くことが習慣になっているかどうか、お互いに少し気にしてみてください。書くことが習慣になると、タイムマネジメントは継続しやすくなりますし、逆にタスクを書くことがおろそかになると、タイムマネジメントに挫折しやすくなってしまいます。


●以前の職場では、100時間だった残業を30時間に削減されたとのことですが、その70時間の差は一体どのような時間だったのでしょうか。

○(水口氏)
この100時間の残業の要因は様々なものが挙げられますが、先程挙げた3つのムダな残業の中でも、私の場合、「残業から本気」が多かったように思います。昼間は電話や来客などが多く、自分自身の仕事になかなか集中することができませんでした。そこで、タスクの整理を行い、始業直後から集中して業務を行うようにすると、かなり効果がありました。ここで、30分のロスは減ります。また、メールも意外に気が散る原因になりがちです。一つのタスクに取り組む間は、メールを一切見ないようにすると、集中力が高まります。
加えて、二度手間にならないような仕組み作りも重要です。例えば、パソコンで作業をしていたとします。メールが来て、その都度確認すると、作業が中断され、効率が落ちます。そのうえ、メールを見て「返信は後にしよう」と思うことはありませんか?これは既に二度手間です。後でメールを返信する場合、再度メールを読む必要があるからです。この場合、多少時間を取っても返信した方が時間はムダにせず済みます。タスクを行う時間と、メールを扱う時間、このメリハリを付けて仕事に取り組むことが重要です。


●仕事のやり方は、個人によってさまざまであり、完成度や進め方も違います。残業のタイプも違うと思いますが、その見分け方や何か対処方法はありますか。

○(水口氏)
まず、チームの全員が慢性的に残業が多い場合、「つきあい残業」の疑いがあります。先に帰りにくいという雰囲気が職場にあるなら、上司が率先して変えていかなければなりません。また、特定の人の残業が多い場合は、「定時から本気」になっている可能性がありますので、定時までの時間内に、仕事に集中できる時間を増やすことが必要です。
また、いずれの場合も、仕事を終える時間を意識することは重要です。私の場合、以前の職場では、19時までに仕事を終わらせ、退社することを自分自身に課していました。それでも、たまに20時、21時になってしまう日もあります。そういう場合は、他の日に定時帰宅するようにしました。できるだけ残業時間に持ち越さず、その週のうちに労働時間の帳尻合わせをするのがポイントです。
「なりゆき残業」の場合、納期の直前など、特定の時期に長時間残業しがちです。一般的に、人が所要時間を予測する際には楽観的になりがちなものです。たとえば、カナダの大学の心理学実験で、学生に課題が完成する時間を見積らせたところ、予想された日にちの平均は33.3日でした。しかし、実際は完成までに要した期間は平均55.5日であり、6割長くかかったというデータがあります。一般的に人は仕事の所要時間を楽観的に見積りがちなものなので、それを修正するためにタイムマネジメントが必要なのです。


●タスクをどうしても忘れてしまうことがありますが、対象方法は何かあります。

○(水口氏)
私たちが短期記憶として覚えていられる数は、プリンストン大学のジョージ・A・ミラー教授が提唱した「マジカルナンバー7プラスマイナス2」とされています。短期的な記憶として覚えられる項目数は5個から9個程度と、実はとても少ないのです。メールなど細々としたタスクが多い現在の仕事環境において、「記憶」に頼るのは失敗やストレスの元となります。有効なタイムマネジメントを実践するためにも、「タスクが発生したら、その場ですぐに書く」ことがとても重要です。ぜひ実行してみてください!