第3回「働き方を変える、日本を変える行動指針」(仮称)策定作業部会 議事録

1 日時:平成19年10月2日 18:00~19:31

2 場所:中央合同庁舎第4号館 共用第2特別会議室

3 出席者

(有識者)

内永 ゆか子 特定非営利活動法人J-Win理事長
大沢 真知子 日本女子大学人間社会学部教授
佐藤 博樹 東京大学社会科学研究所教授
樋口 美雄 慶應義塾大学商学部教授
八代 尚宏 国際基督教大学教養学部教授

(団体の代表者)

紀陸 孝 (社)日本経済団体連合会専務理事
田中 常雅 東京商工会議所人口問題委員会副委員長
(醍醐建設株式会社代表取締役社長)
坂田 甲一 (社)日本経済団体連合会労働法規委員会
労務管理問題検討部会長
古賀 伸明 日本労働組合総連合会事務局長
横山 陽子 日本サービス・流通労働組合連合中央執行役員
杉山 豊治 情報産業労働組合連合会政策局長

4 議事概要

○樋口座長 定刻を過ぎましたので、第3回の「『働き方を変える、日本を変える行動指針』(仮称)策定作業部会」を始めます。
 前回、ワーク・ライフ・バランス憲章のイメージに関する議論を行いましたが、今回は事務局から、その行動指針について、そのイメージについて御説明をいただき、意見を交換していきたいと思います。
 それでは、まず事務局から説明をお願いいたします。

○濱田参事官 それでは、私から御説明させていただきます。まず、お手元に「前回の論点について」というペーパーを配ってございますけれども、これにつきまして事前の御説明等では御説明できなかったんですが、座長からも前回の論点を整理して今回の議論につなげていくという方がつながりが明確になるというような御指摘もいただきまして、事務局でとりまとめたものでございます。事務局のたたき台という部分が今回の案につながっておる部分でございます。
 主な前回の論点を3点整理させていただいております。
 1点目は、緊要性の訴え方についてでございますが、希望と現実の乖離というものをどういうふうにとらえていくかという点でございます。
 個人の取組みの問題で、政府が踏み込むべきではないのではないかとか、わがままに対応することが必要なんだというような誤解を受けかねないのではないかという御指摘。一方で、そういうもののギャップが社会の持続可能性などの観点で放置できないところまで来たんだということではないかというような御指摘。また、今のままでは子育てできないというような、もっと切実なものをここでは言いたいのではないかというような御指摘も踏まえまして、今回、ここの部分については次回整理させていただく憲章の案等の中でまた書かせていただきますけれども、どのような訴え方が国民にわかりやすくてインパクトを持つのかというような観点から、更に吟味を続けさせていただいて、また御意見等を踏まえながら案を作成させていただきます。
 2つほど観点を書かせていただいておりますけれども、希望の中でももっと切実な、結婚とか、育児とか、介護といったようなものの現実と希望の乖離という観点から出発するのか、少子高齢化の下で社会経済の持続可能性を確保していくというような観点から説き起こしていくのか、こういうものも踏まえながら、また再検討させていただきたいと思っております。
 2番目と3番目は、今回の後ほど御説明する「指針に盛り込むべき事項」の中にもある程度盛り込ませていただいた内容でございます。
 1つは、ワーク・ライフ・バランスが実現した社会の姿といった面でございますが、やはり、まずはワーク・ライフ・バランスが実現した社会というものがどんな社会なのか、どういう要素を持っているのかを整理して、それに向けて各アクターが何をすべきかというような整理の仕方をしていくべきではないのかという御指摘を受けまして、たたき台の考え方としては、まず要素としては、1つは若者が結婚したり、家族形成を可能とするような就業による経済的自立という要素。2番目として、長時間労働の抑制や年次有給休暇の取得促進による労働者の健康確保や普通に日常を送れるような時間を確保したり、充実したりするという要素。3点目は、若年期から高齢期に至るまでのライフステージに応じた多様な働き方が選択可能であるというような要素に分けられるのではないかというところでございます。
 「3 憲章と行動指針の関係について」でございますが、そもそものそれぞれの位置づけはどうなるのか。数値目標というのはどういうところに位置づけていくのか。それから、指針のアクターというのは政府だけなのかという観点でございますが、一応、憲章の考え方としては、後ほど「盛り込むべき事項」の中で申し上げますけれども、ワーク・ライフ・バランスの緊要性でございますとか、実現した社会のイメージ、果たすべき役割等について大きな方向性を記述するもの。行動指針については、そのアクターである国民各層の取組みを推進するために政府の具体的な政策方針を書くものであって、数値目標については、個人や企業の取組みと政府の支援が相まって実現するワーク・ライフ・バランスというものの社会全体における達成度をはかるようなもので行動指針の中で記述していく。憲章と指針を併せてワーク・ライフ・バランス社会実現の取組みが読み取れるようにしていくべきではないかということが、基本的な前回からの議論の流れを受け、たたき台に盛り込んだ観点でございます。
 次の資料2でございますけれども、前回の議論を踏まえて、また事務局として議論のための考え方を、軸を定めるという意味でもたたき台として策定したものでございます。
 まず「1 指針の性格」ということで、先ほど御説明させていただきましたけれども、指針については憲章で示すような「ワーク・ライフ・バランスが実現した社会」を実現していくための個人、企業、地域などの取組みを支援する政府の施策の中期的な方針という位置づけでございます。
 憲章につきましては、ワーク・ライフ・バランスの考え方、実現した社会の姿、実現の緊要性、国民的な取組みの方向性、個人や企業経営者、地域等に求められる役割などについて盛り込んでいく。ここはもとより、先ほど御説明したとおり、前回、御議論のあったところでございまして、本日もこのあたりについて御議論いただければと考えてございます。 「2 就業率向上や労働時間短縮などの数値目標」ということでございます。個人、企業、地域の取組みと政府の支援施策が相まって実現するワーク・ライフ・バランス社会といったものの社会全体における一つの達成度をはかる目安となる数値の目標であるということでございまして、これについては、現在、雇用政策研究会の方で検討を続けていただいておりまして、予定では次回の作業部会の方に御報告できるのではないかと想定してございます。
 「3 ワーク・ライフ・バランスの実現に向けた課題」ということで、憲章で書いた社会の姿が実現するための課題というふうに位置づけてございます。
 一応、6点書かせていただいておりまして、(1)は国民の意識変革、(2)は若者の就労による経済的自立。(3)が働く意欲を持つ者の就労、(4)が働き方の選択肢の拡大、(5)が家族や地域で過ごす時間など仕事以外の時間の確保・充実、(6)が中小企業や地方の実情に対する配慮ということで、先ほど、前回の議論を踏まえた考え方で申しますと、(2)から(5)までが該当するものでございまして、(1)と(6)については、前回の憲章の議論を踏まえながら、この中に盛り込んだものでございますが、また引き続き御議論いただいた上で、整理させていただきたいと考えてございます。 また、御指摘の中には、(2)と(3)の関係についても、まず課題というものを設定した後で、それを解決したときの姿を示すものが数値目標ではないかというような御議論もございまして、今日の議論も踏まえまして、そのあたりも再度検討させていただければというふうに考えてございます。
 「4 ワーク・ライフ・バランスを実現していくための支援施策の具体的な方針」ということでございます。ワーク・ライフ・バランスの実現については、持続可能な社会を維持していくためにも不可欠であるということから個別労使のみならず、社会全体で取り組むことが必要である。このため、労使を始めとする取組みを支援することが政府の役割であるということでございまして、4点で整理させていただいております。
 「(1)ワーク・ライフ・バランスの実現に向けた枠組みづくり」ということで、やや横断的なものを幾つか書かせていただいております。
 4分類させていただいておりますが、国民の意識改革とか、国民運動的なものとしていろんなレベルでの合意形成の促進、それから、前々回の作業部会でも御指摘いただいたような、消費者の意識転換のための啓発。
 2番目に「○ 制度的枠組みの整備等」ということで、その中に多様な働き方を可能とする制度的枠組みの整備、税・社会保障制度等働き方に中立的な制度の構築。
 3番目として「○ 取組企業への支援・評価」ということで、ワーク・ライフ・バランスを実現した企業の情報を収集したり、提供したり、そういった企業を社会的に評価していくというような取組み。また、中小企業に対する支援というようなことを書いてございます。
 4番目として「○ ワーク・ライフ・バランスの進捗状況の把握」ということで、現在、実現度を把握する指標の在り方について、男女共同参画会議の専門調査会で検討を続けていただいておりますので、これも検討結果を踏まえまして、再度、御検討いただくということを予定してございます。
 「(2)若者の自立・就労促進」ということで、若者の職業人としての自立促進、フリーターといった不安定な雇用の方々を常用雇用化していく取組み、若者の働く意欲・能力の向上、それから、一番つまずきの多い、学生から社会人への円滑な移行の支援というような取組みでございます。
 「(3)働き方の選択肢の拡大等による働く意欲のある者の就労促進」ということで、短時間正社員、在宅労働、テレワーク等の普及促進、パートタイム労働者の均衡処遇、多様な働き方を支える地域の子育て対策・保育サービスの充実、高齢者という観点ではキャリア形成の支援、それから、全体としての自己啓発・能力開発に向けた支援ということでございます。
 「(4)家族や地域で過ごす時間など仕事以外の時間の確保・充実の支援等」ということで、労使による労働時間等の設定改善のための取組みの促進、労働時間管理の適正化、長時間労働の是正や年次有給休暇の取得促進、地域の関係で申し上げますと、地域社会へ参加しやすくなるための環境の整備。それから、ワーク・ライフ・バランスに関するコンプライアンスの徹底ということでございます。
 もう一つは、前回の議論でもございました地方自治体の役割というものも指針の中に盛り込んでいくべきではないかという御議論もございまして、ここに書いてございますが、「地方の実状に配慮した合意形成の促進」ということで、国と協力した地方レベルでの合意の促進ということでございます。
 あくまで例ということで事務局のたたき台でございますので、これを踏まえまして具体的に何に政府が取り組むべきか、足りないものは何か等について御議論いただければというふうに考えてございます。
 あと、参考資料として前回お配りした憲章のたたき台について配付してございますので、御参照いただければと思います。
 私からの御説明は以上でございます。

○樋口座長 ありがとうございました。今、事務局から説明がございましたが、前回の論点につきましても、皆さんがこれで合意したというわけではなく、あくまでも事務局の整理、責任においてやってもらったということでありますので、決して、これで合意しましたので従ってくださいということではありませんので、自由な御議論をいただきたいと思います。どなたからでも結構ですので、よろしくお願いいたします。
 どうぞ。

○杉山委員 前回の論点を整理していただいて、指針のたたき台も出されたのですが、前回の議論を踏まえて、ワーク・ライフ・バランスが実現した社会はどのようなものかというのは極めて重要な認識と思います。今回の論点整理で、事務局考えで1~3と出ています。行動指針の中に出てくる消費者の意識というものがありますが、これをワーク・ライフ・バランスが実現された社会の中では、例えばどういう意識を求めるのか。それは社会像の中で提起しておく必要があると思います。
 もう一点は、例えば、地域の中で介護、子育てというものも受け持っていくとありますが、このワーク・ライフ・バランスの中でだれが受け持っていくのか。それは働いている普通の労働者、今の長時間労働をしている者が時間をコントロールして、空いた時間で受け持つのか、そうでないのか、そこの部分はある程度、明らかにしておく必要があるのではないかと思います。
 以上です。

○樋口座長 ほかにいかがでしょうか。
 主にここでは厚労省関係のテーマが出ているわけですが、この間出た議論の中で、例えば経産省の時間当たり生産性の向上についてとか、あるいは文科省の関連でも御要望が出たと思いますが、これはあくまで労使の間の議論だけではなく、社会にとってこういったものがどう必要なのかということについて、企業側からも御指摘があったと思います。生産性の向上が不可欠だというようなお話があったと思いますが、そこは今回抜けているかなと思いましたので、是非よろしくお願いいたします。
 ほかにございますでしょうか。
 佐藤さん、どうぞ。

○佐藤委員 憲章と指針の関係をかなり整理していただいたので、ありがたいと思いますけれども、憲章で示したものを具体的に推進する中期的な取り組み内容を指針で書くということになると思います。そうすると、憲章の方がどうなるかということが問題になります。ワーク・ライフ・バランス社会の構成要素に関して、前回の議論を整理した資料1に一応、1、2、3と例示されています。この1、2、3が大きな柱だということで合意ができれば、指針の議論がしやすいと思います。まず1の経済的自立です。経済的自立を若者に限定することには疑問があります。経済的自立が大事で、その中で若者の経済的自立が重要となるといった書き方がよいと思います。
 もう一つは、過度な長時間労働でなく、家庭生活とか地域生活、あるいは健康維持などに時間を割けるような仕事の労働時間のあり方。
 もう一つは、いろんな人がライフステージに即して意欲や能力に応じて働けるという多様な働き方や就業機会があることです。この3つがワークライフバランス社会の柱としたときに、行動指針の方も、できればこの3つの柱に即して、それぞれの柱をブレークダウンして、この1をやるためには何をやるのかという書き方が望ましいと思います。
 例えば樋口座長が言われたような時間生産性というのは多分、2に関わるのかもわかりませんけれども、そういう憲章の大きな柱に即して指針を整理していただくのが良いと思います。しかし、この指針案を見ると、柱がが突然6個になっています。意識改革、若者についてはやっていいと思います。中小企業や地域に配慮が必要だろう。これは別枠で出てくるかもわかりませんが、コアが3つで合意ができれば、その3つの柱に即して行動指針を書くのがわかりやすいだろう。 もう一つは、行動指針の担い手が、案では政府だけなんですけれども、それでいいかどうか。一応、憲章では、政府だけではなくて、国民運動としてですから、企業も、さまざまな団体も、個人もアクターになると思います。行動指針の担い手も、政府、広い意味で地方自治体も含めてというだけでなくて、企業、経営者団体、組合、あるいは国民一人ひとり、効率的でなめり張りのついた働き方をするとか、積極的に子育て、家族、地域の活動に参加するというようなことも含めて、書かれた方がいいのではないか。ですから、政府だけでいいのかと思いました。
 もう一つは、中期的というのをどのくらいの期間を考えるのか。ある程度、10年ぐらいの長いものと、5年ぐらいの短いものの組み合わせを考えるのか。緊急な課題と言ったわけですから、私は少なくとも、例えば5年間でここまでやるというような目標がないとまずいと思います。つまり、ある程度の期間を設定する。当然、数値目標も定める。その数値も当面どこまで、あるいは中期ではどこまでというような設定の仕方をしていただくとありがたいと思います。

○樋口座長 事務局から何かありますか。まずは聞くという側に立ちますか。

○濱田参事官 指針の構成については、勿論、今日の御議論等も踏まえまして、3つの柱、コアの部分で合意いただければ、それに沿って再構成ということはやらせていただきたいと思います。
 それから、指針のアクターについても、前回も御議論がございましたけれども、この場で御議論いただいて、政府だけではないんだ、全体の取組みを書くべきだという御指摘をいただければ、それに沿って書き加えさせていただきたいと思っております。
 それから、一般的に中期といったときに、大体5年ぐらいを念頭に置いて私ども文章を書かせていただくもので、今のところ、事務局としては5年程度を念頭に置いた計画ではないかと考えております。

○樋口座長 ほかにいかがですか。
 前回、田中さんにすばらしいマトリクスをつくっていただいて、あれこそどういう社会になるのかということも書いてありましたし、その視点からどうでしょうか。

○田中委員 前回お話ししたのですが、今日いただいた資料を見ていても、やはりワーク・ライフ・バランスについて、私自身もイメージがふくらまないと感じます。私が思っているようなマトリクスに対して、皆さんどういうふうなイメージを持っているのかお聞きしたいと思います。幾つか指摘したことについて、取り上げていただいていないということは、私としては回答が得られていないと感じざるを得ないと思います。
 1つ、資料2の中で「3 ワーク・ライフ・バランスの実現に向けた課題」という中で「(1)国民の意識変革」とあるんですけれども、これはどういうことでしょうか。

○樋口座長 それでは、お願いします。

○濱田参事官 この場でもいろいろ御議論いただきましたけれども、国民にまだワーク・ライフ・バランスというものの考え方もなかなか浸透していない、また、考え方を持っていらっしゃる方の中でもイメージというものがばらばらになっているという状況にあるので、ある程度、国民的に、こういうものが緊要であるということを合意した上で、ワーク・ライフ・バランス社会の姿というのも、ある程度、一つのイメージを持って取り組んでいただきたいという意味で、重要性の認識、それから、ワーク・ライフ・バランス社会に対するイメージみたいなものを持っていただくためには、国民の意識的な変革からスタートしなければだめなのではないかということで「(1)国民の意識変革」というものを置かせていただいたんです。

○田中委員 国民の意識の変革というのがどういうことを言っているのかよくわからないのですが、クオリティー・オブ・ライフ、生活の質の議論というようなものが本来ベースにあるべきだと思うんです。その中で働くということとか、生活するということがどういうことなのかを御理解いただくことがまず第一だと思います。
 それに対して、今の国民たちがどういうふうな満足感を持っているのかということをつかまないで、国民の意識変革をするという議論をすること自身がおかしいと思います。それをもう少し単純化したのが、前回、私が出したマトリクスなのですが、そういうイメージがない限りは、国民は全くワーク・ライフ・バランスについては理解できないと思います。
 まず、私が一番感じていることはそういうことです。

○樋口座長 どうぞ。

○柴田政策統括官 前回は憲章で、今回は指針。それで、一応、憲章と指針はセットなものですから、とりあえず議論のための座標軸をとりあえず仮置きしてやっていますけれども、田中さんがこの前御指摘いただいた話は、我々も非常にわかりやすいということもあるものですから、次回、憲章なり指針の、ここで御議論いただいたものをまたもう一回見直して御相談するときに、この前いただいたお話をできればうまく入れてお示ししたいと思っております。

○田中委員 私がもう一つ感じていることは、量の話しか出てきていません。質の話が出てこないので何を議論しているのかがわからないということです。質の議論をしないうちに量としてのファクターとして就業率の向上とか労働時間短縮といった指標が出てくること自身がすごく短絡的だと思います。全体像としてどうつながるのかがよくわからないと思います。
 ですから、労使関係で就業率だとか労働時間をどうしようかという議論ならばいいのですが、国民的な話の中でワーク・ライフ・バランスという議論をするのであれば、ちゃんとしたベースがない限りは国民運動にもならないですし、何を言っているのかわからないと思うんです。
 少なくとも、私は一般の国民よりは多少そういうことについては勉強させていただいていると思うのですが、わからないです。ですから、やはりそういうことをもう一度わかりやすくしていくことが大事だと思います。数値目標とか何とかという以前の話として、そういうことをちゃんとしていただきたいと思います。

○樋口座長 どうぞ。

○八代委員 今、田中委員がおっしゃった点は大事だと思います。なぜわかりにくいかというのを私なりに考えると、現状に何が問題があって、それをどう変えるかというプロセスがないからではないか。これは別に現状はそんなに問題はありませんが、ワーク・ライフ・バランスをやった方がいいですねというイメージになっているのではないか。働き方の現状にこういう問題点があるから、ワーク・ライフ・バランスが必要だ。だから、問題点が明らかになれば、それを変えた後がワーク・ライフ・バランスなんだということです。
 それについては、私も前回申し上げたと思いますが、今だってワーク・ライフ・バランスは実現している。ただし、奥さんは家事・子育てに、夫は仕事に働きづめという家族単位で。これを個人単位のワーク・ライフ・バランスにするというのが一つのイメージです。これは共働きが普遍的になった社会では、従来の家族単位のワーク・ライフ・バランスは維持できないからだ。
 もう一つは、雇用の不安定な非正社員と、雇用は安定しているけれども、逆に頻繁な転勤とか、配置転換とか、長時間労働かという正社員とか、とにかく非常に極端であって、もっとバランスの取れた形にしていくというのも一つのワーク・ライフ・バランスでもある。それから、やはりここに書いてある「(4)働き方の選択肢の拡大」ということで、この辺りは意見が分かれるかもしれませんが、私はワークホリックなやり方も一つの選択肢であって、それを禁止することは本来のワーク・ライフ・バランスではないのではないか。
 ただ、それでない働き方もちゃんと認める。ただ、そんなことを認めたら、みんながそうするから、結果的にだめだという意見も当然あるわけで、その辺りはやはりちゃんと議論する必要がありますが、いろんな選択肢をどこまで考えるか。まず現状の問題点からスタートするので、これもやはりちゃんとそれを書かないと理解ができないのではないかと思います。

○樋口座長 どうぞ。

○古賀委員 今、八代先生がおっしゃったように、それと、佐藤先生がおっしゃったことと含めて、資料1の「2 ワーク・ライフ・バランス実現社会の姿について」というのが3つに分けてありますね。私は、この3つだけではなくて、例えば子育てとか介護を支える社会基盤がどうなっているかとか、そういうことも少し付け加えられるのかなと思っているんです。
したがって、これと、今、八代先生がおっしゃった現状がどうなのかというのは、どういう調査でもいろんなことであらわにできるでしょう。だから、そういうことをベースにこういう社会にもっていくためにというふうなことで、であれば、少し基礎的データも含めて、もう一度おさらいをする必要があるのではないかということが1つです。
 2つ目は、冒頭、佐藤先生がおっしゃったことと全く私も同感で、この指針については、前回も申し上げましたけれども、国の支援指針ということだけではなくて、国があり、地域で何をするかがあり、そして、個人でどうするかがあり、企業で何をするか、労使で何をするか、幾つか、やはり行動指針ということですから、そういうことの分け方が盛り込まれてしかるべきではないかと思います。
 それから、数値目標についても今からいろいろ出てくるんだと思います。どういう要素を数値目標にするかとか、あるいはその数値目標はどこが根拠なのかということが出てくるんだと思いますけれども、私はただ単に、その数値目標を示して、それについて進捗状況を把握して、更に次の段階の目標を示すということは否定するものではありませんけれども、これがマクロの指標ということになれば極めて抽象的になってしまう。マクロの指標だけでは、言い方を変えれば、具体的な取組みになかなか結び付いていかない。そういうことを考えると、先ほど言ったようなジャンルで、それぞれ目標を掲げて行動計画をつくっていくというふうな枠組みをつくることも非常に重要なことではないかと思います。 例えば、これはまさにフォア・イグザンプルで聞いてほしいんですけれども、現在ある次世代育成支援計画のようなスキームをつくって、その範囲をワーク・ライフ・バランス全体に広げていくという考え方についても一考を要するべきではないかということも申し上げておきたいと思います。
 以上です。

○樋口座長 どうぞ。

○横山委員 先ほど八代先生から、ワーク・ライフ・バランスを家族単位から個人単位というところの話があったかと思いますが、私もワークの部分が男性で、ライフの部分が女性という男女の固定的役割分業を見直し、多様なスタイルが選択できていくことが重要でありワーク・ライフ・バランスを個人単位で実現するという考え方に賛同します。
 もう一つは、アクターが政府ということだけではなく、それぞれということの方がいいという上での意見でございますけれども、例えばこちらにございます枠組みづくりの取組企業への支援とか評価、それから、進捗状況というところを次世代法のようなスキームが必要と思います。

○樋口座長 ありがとうございます。
 今日、午前中、上川大臣の関連の会議がございまして、その中で、やはりワーク・ライフ・バランスというものが、勿論、職場における重要な課題であることは間違いないわけですが、その一方、例えば地域活動が今まで女性にすべて任されてきた。そこのところの、地域のつながりというものが大分希薄化してきているという問題や、あるいは家族の絆という部分についても、今、何人かの先生方がおっしゃったような問題がある。職場の問題がやはりキーになることは間違いないわけですが、ただ、その影響というのがほかの日常生活とか、あるいは日々の暮らしの中に表れてきているということを考えると、そちらについてもやはり何かメッセージを出していかないと。これは職場の問題ですよということではないのではないか。日本の社会にとって何が起こっているかという視点から考えていく必要がありますし、それを指摘していくことが重要なことになるのではないかと、皆さんの御意見を聞きながら感じたところです。言うは易くというようなところもありますが、そのような方向でどうでしょうかということです。
 どうぞ。

○大沢委員 私、前回出席できませんでしたのでいなかったので、皆さんの議論から一歩遅れてしまっているかもしれないんですが、やはり、今、なぜワーク・ライフ・バランスなのかということを考えると、経済の構造が大きく変わってきたということがあるとおもいます。それに対して、今の働き方・生き方すべて含めて、その構造変化の方向にまだ対応しきれていないというところに問題があるようにおもいます。結果として生産性が低くなるとか、出生率が下がるとか、いろんな弊害が出ている。
 だから、働き方のみの変革ではなくて、社会構造全体を変えていくという中で考えていく必要がある。それでは、一体、構造変化とは何かという、具体的には例えばサービス経済化とか、経済のグローバル化ですとか、そういったものが、例えばサービス経済化ですと共働き社会の出現ということが必然的に出てくるわけですし、グローバル化の中では多様な人材活用の必要性とかが出てきます。、そういう変化に日本全体でこれから対応して社会のしくみを変化させて、よりダイナミックな社会をつくっていこうという、宣言をしているのではないかと思います。
 ですから、座長がおっしゃったように、最終的に社会の仕組みがうまく機能するようになれば経済の生産性が上がっていく。そしてつぎは、その富が国民全体に行き渡るような仕組みをつくっていくということになるのだと思いますので、やはり経済戦略としてワーク・ライフ・バランスというものを位置づけていくことが前提にあって、そのうえにこの憲章があると考えたらどうかと思いました。
 以上です。

○樋口座長 どうぞ。

○内永委員 今、大沢先生がおっしゃったことは、私、全く大賛成で、ワーク・ライフ・バランスというのが、今、なぜ、こんなに言われているかというと、これは前回も同じようなことを申し上げたんですけれども、やはり世の中の変化のスピードというのが、5年前、10年前と比べると圧倒的に違ってきている。にもかかわらず、長時間ということで何らかの成果を出そうということで、5年前、10年前と同じ働き方をしていたのでは、それでは、3倍働けるかというと、5年前、10年前でも長時間やっていますから、当然のことながら、3倍も働けないということで、これはどうにもならなく、非常に簡単にわかりやすい吟味で言うと、今までのやり方ではどうにもならないということで、それでも今と同じようなやり方でやろうとしたために、非常にメンタルな問題ですとか、ぎりぎりの状態まで来ていると私は思っているんです。
 ですから、やはり経済の仕組みということをきっちり押さえた中で、本当にどういうふうにバランスを取っていくのかということをしていかないといけないと思うんですが、私自身がいろんな働き方をいろんな人たちと見ていたときに、特に日本の場合に思いますのは、個人にとっての仕事のプライオリティーというものを余りにも大事にしていないというか、例えば先ほどどなたかがおっしゃいましたけれども、今、私は24時間働きたい。それも一つの選択肢だと思うんです。例えば24時間は極端ですけれども、15時間ぐらい、今は一生懸命、3週間か1か月か2か月働くけれども、その後、2週間は休みを取るとか、そういう働き方に自分の人生におけるプライオリティーに従ってめり張りがつけられる。そういったことがやれるような環境が出てこないと、今のようにグローバルな世界ですとか、スピード感が早い、特に画一的に時間短縮するとか、休暇をともかく取りなさいと言うだけでは、多分、うまく解決できないと思うんです。
 ですから、結果的にワーク・ライフ・バランスというのは実は生産性を上げることだ。逆に言うと、上げないとできないというスタンスに立つと、この憲章というものの考え方は少し変わってくるのではないかという気はしているんですが、そのスタンスが、多分、お考えだと思うんですが、言葉の中には出ていないので、やはり経済のロジックとして、生産性を上げない限り、ワーク・ライフ・バランスは私は無理だと思うんです。そこのバランスをどうとらえるのかということをもうちょっと盛り込んでみる必要があるのではないか。そんなふうに思います。

○樋口座長 ありがとうございました。
 どうぞ。

○大沢委員 それの関連で、結果としてそういった経済の仕組みにどういうところがうまくいっているのかというと、例えばOECDの中で、総労働時間を横軸に取って、縦軸に時間当たりのGDPを取った論文などをみると、両者に逆の相関があって、つまり、時間当たりのGDPが高い、生産性の高い国ほど総労働時間が短いということです。ラフな推計ですけれども、今、内永さんのおっしゃった、ワークライフバランスが戦略的に重要になってきていることの理論的な裏付けではないかとおもいます。そして、生産性が高い国では出生率も高い水準を維持している。そこら辺りがやはり、このワーク・ライフ・バランス憲章をつくるときの一つの根拠として掲げられていってもいいのではないかと思います。

○樋口座長 どうぞ。

○杉山委員 今、発言された中身はよくわかりますが、先ほども触れたことなのですが、1つ見方を変えた中で、資料の方にも、消費者の意識転換というものが書かれていて、この消費者の意識転換というものはどういうベクトルで見ているのかということが重要ではないかと。生産性の向上が必要だということについて否定はしませんが、やはりワーク・ライフ・バランスを、今、どこかに問題点があって実現しようとしたとき、そこには何かを我慢しなさいというニュアンスがどこかにあるのではないかと受け止めています。
 そういった意味では、生産性を上げるということはとても大切なことですし、現実に、長時間労働だとか、年休を取らない。そのことを直していくためには、なぜ長時間労働をするのかというところに踏み込んで、解明しておかないと、結局は有効な処方せんにならないのではないか。
 そういった意味で、当産別での調査をベースに、一例を御紹介しますと、成果型賃金ですとか、グローバル化ですとか、IT化ですとか、こういったものが経済の仕組みや道具が変わってくる中で、それに応じて、個々人が持っているプレッシャーというのは非常に増えてきていることが伺えます。隣の人に競争で勝たないとなかなか未来が持てないということが、意識として存在し、そのことが長時間労働ですとか、年休を取らないところへの大きな要素になっているのではないか。このような部分までよく見てあげないといけないのではないか、と思います。
 指標として立派なものができたとしても、そこの意識が変わらない限り、そこに対して何らかの手を打ってあげない限り、結果は変らないことになってしまうのではないかというように思います。したがいまして、生産性の向上というものを考えるときには、真の意味でそこの部分までフォローした中で生産性というものを考えていただければと思います。
 以上です。

○樋口座長 どうぞ。

○田中委員 経済戦略という話と、生産性の向上という話が先ほどから出ているんですが、生産性を向上しても、今のお話のとおり、少しも時間的には豊かにならないですね。その価値観を変えない限りは、ワーク・ライフ・バランスは保てないと思います。例えば、大量生産型の今の経済システムから高付加価値型に変えていかなければならないわけです。ですから、労働集約型ではない価値観を出していかなければならないと思うんです。
 ところが、ここでやっている議論は古い話の議論しかやっていなくて、次にどうするのかという指標を挙げていないように思うんです。そのためにはどうしたらいいのかということをもう少し、ここで言う働き方の選択肢も、今は会社の中の働き方の話しかしていません。自立型の社会をつくろうとすれば、NPOを推進したり、それから、創業も含めて推進していくというような、いろいろな価値観の選択肢があるのだと思うんです。生産性だけではないと思います。自立型社会にしていくイメージを持たなければ、今までの議論と同じで、生産性がすべてだという価値観の中でライフはバランスしないと思います。

○樋口座長 どうぞ。

○内永委員 全くそのとおりだと思います。私、生産性といったのはそういう意味もひっくるめての生産性というふうに申し上げたんです。
 ですから、短時間当たりの価値ということで言ったときに、例えばグローバルに競争をやったときにどんなに日本人が頑張っても、非常に単純労働でやるならば、中国とかインドに勝つことは絶対できないわけです。そうなってくると、どこにバリューを見出すのかといったときに、それは時間単位でやることではなくて、どれだけバリューを出していくかというところに戦略としては上がっていかなければいけない。それをやるために、それでは個人はどうしてバリューを付けていくのかとか、それをもっと促進するためにはどうするのかとか、そういったようなことも、実はこのワーク・ライフ・バランスというのは絡んでいるわけで、そこを全部すっ飛ばして短時間云々とか、フレキシブルな働き方だけを言ったのでは、多分、方法論だけを言っていて、本当の根っこのところを言わないことになってしまうと思うんです。
 ただ、これははっきり言うとパンドラの箱を開けたことになりますから、とても大変なことを言っているわけですけれども、それを言わない限りは、多分、本当のワーク・ライフ・バランスに対する適切な策というのはなかなか難しいだろうと思います。
 ですから、これは結構、大変なことを、ふたを開けているんです。例えば評価の問題にしても、いろんなことが絡んできますから、それを非常に上っ面でいこうとすると、ごめんなさい、ちょっと変な言い方をしましたけれども、簡単にいこうとするとこういう数値目標でとんとんとなるんですけれども、多分、これは余り実行できないと思うので、是非、その辺は掘り込んでやっていければと思っています。

○樋口座長 今、おっしゃったバリューというのが非常に重要なキーワードになってくるかとは思うんですが、そのバリューというのは必ずしも金銭的に上がることができるバリューだけではなくて、例えば自分の大切に考えているものは何であるか。社会にとっては、それはもしかしたら評価されないものかもしれない。そういったものを、自立して自分で大切にしていくことができる社会というようなところまで含めての話ですね。

○内永委員 ですから、個人のプライオリティーというものをどう大事にするか。このようには思います。

○樋口座長 どうぞ。

○坂田委員 ワーク・ライフ・バランスの主役ということを考えたときに、やはりこれは個人だろうと思うわけなんですけれども、そうなると、やはり個人の価値観ということと非常に密接な関係がある。もともとの議論の中に多様性というキーワードがありましたが、多様性を尊重したり、多様性に対する寛容という観点があったり、あるいは求められるということであれば、ワーク・ライフ・バランスが実現した社会というのを一つだけのモデルで描いてみせるのは非常に難しいのではないだろうか。どういうふうに展開しているか、特に10年先のことになってくると、10年間のうちに分かれ道が幾つもあっていくつものパターンがあるということになるのではと思うわけです。
 ただ、そうした中で、どのポイントを押さえていくべきかということを考えますと、やはり、選択肢の拡大という考え方を基本にしていくべきだろうと思います。未来は画一的にこうなるということではなくて、あれもあり、これもありということ、つまり、仕事が中心で仕事と生活が一体化しているようなケースもあり、ちょっと表現はよくないかもしれませんけれども、生活が中心で仕事はできるだけ責任の少ない仕事をしたいと思う場合もあり、ただ、これに関しては、前者についてはレフェリーストップなり、ドクターストップが必要なのかもしれないし、後者については教育が必要なのかもしれない。そういうことがありながら、それぞれの個人にとっての選択肢の拡大というところに注目していきたいと考えます。
 それから、個人といっても職業生活の期間が非常に長い、40年、50年をどう考えるかなんですけれども、非常に長いわけで、それぞれのライフステージにおいて、必要となるワーク・ライフ・バランスという言い方がいいのかどうかわかりませんけれども、ステージごとに違うだろうと思います。つまり、これから職業生活を始める人、結婚しようかと思っている人、子どもができた人、それから、いわゆる会社で言いますと役職定年を迎えてセカンドキャリアに向かう人というようなところ、それぞれ全く違うということを考えますと、そういう意味での長期的な視点でもワーク・ライフ・バランスをとらえる必要があるだろうと思います。
 グローバル化の問題に関しては、今日、いろいろ議論が出てまいりましたが、どうしても欧米の話がお手本ということになるのかもしれませんけれども、現実の競争は中韓との競争も避けて通れないということはきちんと、強調しないまでも根底に置く必要があるだろう。そういう意味からもめり張りのある働き方の実現を通じて、生産性を向上するなり、その結果、会社の競争力が維持・強化されるということはきちんと担保されなければいけないだろうと思います。
 そういうことを考えますと、憲章であるとか、行動指針を決めるに当たっては、これは「働き方を変える、日本を変える」と言っているわけなんですけれども、今の働き方をすべて否定して、がらがらぽんで新しいものをつくるというよりは、ワーク・ライフ・バランスは永久運動とまでは言いませんけれども、継続的に新たな働き方を生み出すチャレンジであるというふうに考える必要があるのではないかと思います。
 前回、ワーク・ライフ・バランスに関して十分議論してからというようなことを申し上げましたけれども、実は10月1日、今週の月曜日ですけれども、家を出てくるときに、私、埼玉県に住んでいるんですが、埼玉の広報紙に既にワーク・ライフ・バランスを推進しましょうということが大きく載っておりまして、そこではは少子化対策に関して大きくフューチャーされておりました。そういった意味からも言葉がどんどん独り歩きして、まさに今、旬を迎えているのではないか。このタイミングを外さずに、必要な施策の実施など、早期のアクションは是非とも必要だと思います。
 以上です。

○樋口座長 八代さん、どうぞ。

○八代委員 今、言われたことが実はかなり大事なんですが、仮に、今、やっている働き方を全面的に変えるというのではなく、今の働き方の中に実はワーク・ライフ・バランスを妨げている非常に大きな要因があるんだということを認めるか認めないかで随分方向性は違う。
 私は前から申し上げているように、今の働き方というのは高度成長期型の働き方で、企業が組織を拡大できる、経済が高い成長をする。それによってサラリーマンの所得が高い伸びを続けてきた。したがって、平均的なサラリーマンが先進国ではほとんどないような専業主婦をみんな持てる。そういうことを前提に企業が言わば2人分の賃金を払って、奥さんは家事・子育てに専念してください、その代わり、会社は夫を無条件にこき使いますという一種の暗黙の契約から成り立っていたるわけです。これを微調整して個人単位のワーク・ライフ・バランスを実現しようというのは私は無理だと思います。
 ですから、そういう働き方がいけないと言っているわけで、そういう働き方をする人がいてもいいけれども、そういう働き方をしなければ、少なくとも会社の基幹社員にはなれないという現状を見直す必要があるわけです。今の日本的雇用慣行がやはりかなり問題であるという認識についてきちっと議論する必要があるのではないかと思います。

○樋口座長 佐藤さん、どうぞ。

○佐藤委員 八代先生が言われたことはすごく大事で、田中さんが言われたこともそうなんですけれども、ワーク・ライフ・バランスというのはいろんなライフスタイル、働き方も生活の仕方も認める。それで、八代先生が言われたように、現状の企業や職場は、働くということからすると、特定の働き方しか受け入れられないし、評価されない。これはやはり変えなければいけない。
 ただ、そのことが今度はいろんな働き方を認めないのでは困るわけでありまして、ですから、従来、特定の働き方しか評価しない、認めないような働き方を変える。他方で、ワークホリックの人も出てくるのを否定するわけではない。ですから、ワーク・ライフ・バランスといいながら、画一的な働き方しか認めないのではだめだと思います このワーク・ライフ・バランスという言葉は難しく、いろんなことをバランスよくやらなければいけないみたいに受け取る人もいます。いろいろな活動をバランスよくしなければいけないというような形で理解されてしまうというのは、ワーク・ライフ・バランスではない。その辺のところをきちっと書くことが必要です。なぜワーク・ライフ・バランスかということもきちっと書いていく。
 八代先生が言われたことや、樋口さんが言われたように、現状のままでは、個々人がワーク・ライフ・コンフリクトに直面することだけではなくて、今のままでは企業ももたないし、地域や家族ももたない。つまり、日本社会がこのままでは持続しないということです。ですから、ワーク・ライフ・バランス社会を実現するということは、持続可能な日本社会をつくっていくことだというようなことをきちっと書いていただくことが大事だと思います。

○樋口座長 ほかにどうでしょうか。
 どうぞ。

○坂田委員 質問なんですけれども、夫婦、カップルで1つの単位と見て、それに対して会社は賃金を払っていたというのは、2人分払っていたというよりは、昔は2人で1人分を分けていたと考える方が実態に合っているのではないか。それで何とかしのいできて、今日の経済成長に至るということではないかと私は思うんですが。
 物事には基本があって、例外とまでは言わなくても、バリエーションがあるというふうに考えたときに、夫婦と子ども2人というような、これは標準世帯というのか、基本的な家族の在り方に関して、事務局としてはどういうふうにお考えなんでしょうか。こういうものは全く、最近のはやり言葉で言えば、ぶっ壊すというような、あるいはぶっ壊れているというような考え方に立った進め方をされるのかどうかというのをお聞きしたいと思います。

○八代委員 それは事務局ではなくて、むしろ私に聞いていただきたいことだと思うのですが、誤解がないように申し上げますと、別に夫婦と子ども2人の世帯をぶっ壊せと私は言っているわけではありません。それは、子どもが何人かは別にして、それが家族の基本である。ただ、それを共働きでもできるようにしたいということです。
 今の会社の働き方だと、それはほとんど無理であって、夫婦がともに正社員であれば、だれが子どもを育てるのかという問題がある。それは結局、非常にみんな苦労しているわけです。だから、専業主婦でなくても共働き夫婦が普通に子育てができるような働き方が必要だということです。
 専業主婦を否定する必要はないわけですが、専業主婦が最初から典型的な家族像と言うのが問題です。むしろ個人単位の働き方で、夫婦がおのおの1人分の賃金をもらい、それを集めて、従来型の安定した生活ができるというイメージです。おっしゃったように、モデル世帯は必要だと思いますが、今までは税金でも社会保障でも専業主婦世帯がモデル世帯ですが、これからの社会はやはり共働きをモデル世帯に変える必要があって、その中でひとつのバリエーションとして専業主婦世帯があっても少しも構わない。ただ、税制や社会保障制度は、今のように専業主婦世帯に肩入れしてはいけない。あくまで中立的であって、働くことが損になるような仕組みというのは絶対認めるべきではない。
 だから、お答えに対しては夫婦子供の4人世帯で結構ですが、ただし、それは共働きがベースだというのが一つの考え方です。

○樋口座長 税と社会保障については、例えば必ずしも夫婦で生活しているわけではない人もいるわけです。シングルマザーもいれば、シングルファザーもいる。それで、子どもがいるというようなことも多くなってきているわけですから、そういった意味での中立性とは何かというのをやはり視野には入れておく必要が私はあるのかなと思います。
 その上で、少し行動指針のところに目を転じて、既にずっと議論していただいているんですが、資料2がたたき台で、まさにたたかれているところなんですが、例えば「1 指針の性格」の前に、やはり、今、日本社会のどこに問題があるのか、あるいはそれが拡大しているのかとか、なぜワーク・ライフ・バランスというものが必要なのかというようなことをもっと織り込む。これは憲章の方で書くのがいいのか、指針で書く方がいいのかはわかりませんが、それが必要だというのが、皆さんの合意だったのではないかと思います。
 その上で、現在のところは、次に数値目標が来てしまうわけですが、その後に数値目標を達成するために具体的に政府が何をするべきなのか。それで、それぞれのアクターのプレーをサポートしますという書き方になっているわけです。これでいっていいというのか、これもやはり直した方がいいのか、どうなのか。 更には、具体的にこういった、例えば2ページに書いてある内容を推し進めるためにはどうしたらいいのかということです。古賀さんから御発言があったかと思いますが、具体的にこういう手段で、方法で進めていくというようなところまで、この指針に織り込んだ方がいいというような御指摘だったと思いますが、その点で御意見をいただけたらと思います。
 どうぞ。

○佐藤委員 もう皆さんが言われたこともあるんですが、1つはアクターは政府だけではなくて、やはり広げるべきだという御意見が、あったと思うのです。
 それと、どう推進するかという、古賀さんが言われたような、推進する仕組みづくりがないと動かないだろう。やはり政府が旗を振るだけではなくて、企業なりが、取り組みを推進するような仕組みというのを入れなければいけないだろう。
 もう一つは、モニタリングですね。どこまで進んだというのをモニターして、ここが遅れているとかというようなことをやっていく仕組みです。モニターするためには、幾つか数値目標が必要だろうと思います。一番理想的なのは、大きな柱ごとに達成したかどうかが数値でわかるのが一番いいと思います。施策が進んだということが評価できるようなものは数値としてあった方がいいかなと思います。
 それと、これは後でもいいのですけれども、特に政府の取組みを入れるとすると、2ページにもありますように、いろんな府省からいろんな施策はどんどん入れてくれというふうに並んでしまうんです。これはやめてほしい。そういうふうな整理の仕方は是非やめてほしいと思います。やはり必要性が高い、やるべきものをきちっと入れるというふうにしないと、今やっているものが並ぶというような形になるのだけは避けてほしいと思ってい ます。

○樋口座長 ほかにどうでしょうか。
 ここでは国の在り方ということで、例えば地方自治体の施策についてもすごく簡単に「合意形成の促進」という、これだけしか入っていないんですが、ここについて、それぞれの地域での仕組みづくりというようなことも入ってくるんですか。せっかく円卓会議をつくったんだから、ワーク・ライフ・バランス円卓会議もやってもらったらなどということもあるかもしれませんし、せっかくあるものをそのまま活用するということもあるでしょうしね。
 いかがでしょうか。
 もう、この問題にとらわれず、何でもよろしいかと思いますので、どうぞ。

○八代委員 国と協力した地方レベルでの合意形成の推進というのが今風ではないのではないか。地方が独自にいろんなことをやって、その結果、地域間競争を通じていいものを国が逆にピックアップするというような姿がひつようではないか。原文では依然として補助金行政みたいなイメージがあるので、やはりそこはもっと積極的な、地方分権という形で、それぞれの地域がいろんな形の合意形成をやってみる。
 もうちょっと、そういう考え方で地方の政策を見ていったらどうかと思うんですけれども、すでにいろいろ先進的な自治体もあれば、遅れた自治体もあるわけで、国がモデルを示して、それにならわせるという時代ではないのではないか。そういうお考えではないかと思いますが、表現をそういう形でふくらませていただければと思います。

○樋口座長 前に、子どもと家族を支援する戦略会議のときに菅大臣が、総務省もこれに是非自らやりたいんだというようなお話がありましたが、総務省はどうですか。今のような話が大分出てきておりますが。

○五味企画官 いろんな課題が非常にあるんだなというところから勉強させていただいているわけですが、総務省としてどうかというところになりますと、ある程度、こういったところで方向性が出たところで、実行段階でどのようにサポートできるのかというような形になるかなと思っておりまして、具体的な工夫といいますか、その辺りはまた各省さんとも御相談しながら役割をきちんと果たしていきたいと思っております。
 まずは、いろいろ御議論をお聞かせいただきながら勉強させていただきたいと思います。

○樋口座長 わかりました。ほかにどうでしょうか。
 どうぞ。

○紀陸委員 単発的で恐縮なんですけれども、資料2の1ページ目の「3 ワーク・ライフ・バランスの実現に向けた課題」ということで、特に若者だけ別立てにして、2ページ目の4の(2)でも「若者の自立・就労促進」といって、特に抜き出しているんですけれども、確かに(3)の中に女性あるいは高齢者が入っているから若者だけ別に(2)で抜き出しておりますけれども、こういう組み立ての必要性というのはあるんですか。
 意図していることは何となくわかりますけれども、こういう焦点の当て方ではなくて、もっと大きく、この中に組み込んで、まさに働き方の挑戦ということをすれば、その中に当然、おのずから若い人も、高齢者も、女性の方も、それこそ家庭の主婦も入ってくるというような組み立ての方がいいという感じがします。

○樋口座長 どうぞ。

○山田官房審議官 一応、この若年者の経済的な自立ということを特出しする立て方というのは、重点戦略の中でもそういう形を構成しておりまして、考え方としては、やはり少子化という問題を考えたときに、家族形成ができるような状態というものをどうやってつくれるかということを考えると、やはり若年者がそういう状況に立ち至れるということがかなり重要なことであるというような問題意識があったというふうに考えております。
 高齢者とか女性が働けるような状態というのは、どちらかというと多様な働き方ができるとか、ほかのことと両立させながら仕事ができるとか、そういった方向性の議論が少し中心の課題になってくるということで、若年者の経済的な自立の問題と性格が異なるのではないかということで若年者を特出ししたというふうに記憶しております。

○樋口座長 どうぞ。

○佐藤委員 このワーク・ライフ・バランスの議論が出てきたのは、たしか少子化も一つなんですけれども、少子化だけだったのかというのはやはり整理しておいた方がいいと思います。労働市場改革の専門調査会では、八代先生もおられますが、少子化という形で出てきたわけではなくて、やはり一つは働き方の担い手を増やす、働きたい人が働けるようにということがメインで、それが女性や高齢者の人たちですし、男女共同参画会議の方で、やはり女性の社会進出を進めるためには、男女を含めた働き方の見直しが必要となったわけです。。
 勿論、子育ての方でも働き方の見直しでワーク・ライフ・バランスが出てきたんですけれども、別にワーク・ライフ・バランスは少子化からだけ出てきたのではないので、そこは結構大事な点だと思うのです。これは少子化対策として取り組みというと、また大事な点を見落とす。ですから、そこはきちっと整理していただいた方がいいかなと思いました。

○樋口座長 もともと、3つのところからの発想がこのワーク・ライフ・バランスというところで共通していたということで1つになったわけですが、かといって、少子化の問題というのも一つの重要なポイントになっているということも間違いないわけで、そこは議論して、どういうふうにしたらいいのか。少子化というか、若者というのを特出しするのかどうかということも含めて検討していきましょうということでどうでしょうか。
 どうぞ。

○大沢委員私も、この若者の問題というのはすごく重要な問題だと思っています。、先ほどからの議論をうかがっていると、専業主婦つきの男性の働き方の問題とワーク・ライフ・バランスの観点からの議論が非常に多かったわけですが、一方で、世帯主でありながら子どもを持って働く母子世帯の女性の場合は、世帯主としての経済的な責任を負いながら、かつ非正規として子どもを持って働かざるを得ない。つまり、今までのモデルというのはどちらかというと離婚とかそういうのは例外的なものとして考えて、大体、標準的に夫婦が2人で働いて、子どもは2人ぐらいでしょうというモデルだったと思うんです。
 でも、今は離婚率が非常に上がっていまして、よく話題になるんですが、若い人たちも結婚するときも、離婚もあり得ると考えて自分たちの人生を設計しています。つまり、もう一つの問題というのは、若者とか、1人の稼ぎ手で世帯が支えられいる母子世帯とか父子世帯とかがふえている。そういうところでは貧困問題というものも出てきている正規・非正規ということとか、専業主婦つきかどうかということは関係なく、個人として、どういう状況にあっても自立して、そして、子どもがある場合には子どもを育てていけるような社会を考えていくことが必要になっているとおもいます。、また仕事の評価に対しても、子どもがいるいないではなくて、やはりその人がどれだけの付加価値をもたらしたのかということが最終的に評価されるような社会が必要であって、やはり(標準的な)家族を基本にした社会設計というのはもう成り立たない時代が来ていると思います。
 いろいろな家族が、今、現実に出てきているわけで、そういう人たちが、セーフティーネットから外れてしまっているという問題がいま出てきていますから、ワーク・ライフ・バランスを考えるときには働き過ぎの人だけではなくて、働きたいのに働けない人たちの問題を同じコインの裏と表にある問題としてとられることが重要な視点になってきています。そういう点から、特に若者の中でのフリーター問題というのが出てきていますので、その問題を無視することはできないとおもいます。

○樋口座長 働き方も多様化しているのと同時に、家族の形態が多様化してきているというか、生き方が多様化してきているという問題ですね。
 どうぞ。

○田中委員 若者の話が出ていたんですが、私もワーク・ライフ・バランスの中で若者だけのこの項が出てくるのに違和感があるのは、若者にとってどういうふうにイメージをしているかなんです。若者が職業人として自立促進するという話が受け入れられるくらいなら苦労しないと思います。
 若者は若者なりにワーク・ライフ・バランスを保っているんです。ですから、余りワークの意味がないからライフの方のレベルを下げてバランスしているという現状だと思うのです。彼らはそれでワーク・ライフ・バランスが保てている。それから、結婚をする、子育てをする時期が遅れるのは、やはり自分のワーク・ライフ・バランス、自分の時間を持ちたいために子育てだとかの家庭の時間を後ろに下げているというような現実があるのだと思います。それをどうやって変えていくのかという議論がなければ、若者が悪いとか、何とかが悪いとかという話ではなくて、やはりそこを変えるためにどうしていったらいいのかという議論が必要なんだと思います。
 若者も、子どもをつくらない夫婦も、ワーク・ライフ・バランスを保とうと思ってやっているんだと思います。

○樋口座長 今日、いろんな御指摘もありまして、要は個々人のワーク・ライフ・バランスといったものがないと、逆に社会が立ち行かなくなっているという現状が出てきていることを、大きな御指摘として受け止めて、だから、憲章というのが必要なんだ、勝手に個人がワーク・ライフ・バランスをしていればいいという問題ではないんだというような流れも出てきたかと思います。
 まだ時間があるんですがね。

○佐藤委員 ワーク・ライフ・バランスを考えてね。

○樋口座長 どうしましょうか。
 どうぞ。

○杉山委員 時間があるということなので、先ほど大沢さんの話で、いろんな家族の在り方があると。私もそのとおりだと思います。最初の発言の際にも触れたことですが、「地域」という単語がたくさん出てくる中で、地域がどのような役割を果たしていくのかというのが、重要な視点になってくると思います。
 資料1に戻りますが、ワーク・ライフ・バランスが実現された社会の中では、やはり地域が果たす役割というのはとても大きいはずであって、そこがワーク・ライフ・バランス社会を描いたときに入っていないというのは、やはりどうかと思います。
 これまで、行政があり、市場があり、それで今まで回ってきたわけですけれども、多分、これまでの議論をふまえれば、社会構造的に限界が来ているという意見もあるわけです。そこの中で新しく足りない部分を補っていくのはどういうものかという中に地域というものが入ってくるんだろう。そこでは、どうワーク・ライフ・バランスのこの議論の中で位置づけるかというのはとても大事だろう。
 そして、資料2の2ページには「地域の子育て対策」という形で書かれています。勿論、これは言葉の関係だけですけれども、ここには「介護」という単語もやはり含めて考える必要があるでしょうし、これは意見というよりも皆さんの御意見をお伺いしたいと思いますが、例えば地域でそういう子育て・介護を受け持って、そこに携わっている人たちにとって、そのことはワークなのか、ライフなのかというのは、一体、どうとらえればいいのかというのも、やはり少し見ておかなければいけないだろう。実際に企業で働いている雇用労働者の人たちの部分だけをワークといって、それ以外のところをライフと呼ぶのか。しかも、地域の中でいろいろな役割を担う部分はどうとらえればいいのか。それも一つのワークではないのか。それでは、そこのワークと両立するライフとは一体何なのかというのも、この社会像の中でしっかりとわかる形で示していく必要があるのではないかと思います。
 以上です。

○樋口座長 ありがとうございます。
 どうぞ。

○内永委員 もう十分議論されていたことではあるんですが、資料2の1ページの「3 ワーク・ライフ・バランスの実現に向けた課題」という中に、やはり、これをやっていく上でどう生産性ないしは個人のバリューを上げていくのかというところがやはり1項目、きちっと書いておいていく必要があるのではないかと思いますので、是非、よろしくお願いします。

○樋口座長 どうぞ。

○八代委員 そうすると、やはりまた数が多くなるんですが、先ほどの「(1)国民の意識改革」というのはやはりかなり批判されていまして、こういう運動がうまくいけば結果として国民の意識が変わるわけで、最初から広告宣伝をするというやり方はやはりやめた方がいいのではないか。
 それから「(6)中小企業や地方の実状に対する配慮」というのが政策課題というのは疑問です。一定の配慮をするのは当たり前で、それは、少なくとも課題の中に入れるべきではないので、一種の配慮事項にすぎないのではないか。
 だから、今おっしゃられたバリューを高めるというのは非常に重要なことですが、それは当然入れなければいけませんが、もうちょっとほかを整理するとしたら、何を統合できるのかということです。働き方の選択肢は大事だと思いますが、家族や地域で過ごす時間の確保はワーク・ライフ・バランスの定義そのものであって、これが課題というのも変な話です。(5)というのはそれがワーク・ライフ・バランスではないかと思うので、もう少し整理しないと非常に薄まってしまうのではないか。
 それから、先ほど杉山さんが言われた介護や子育てはどちらかという話は、私は混乱を招くのであって、やはり私は、給料をもらう仕事がワークであって、それ以外の子育て、それから、余暇、介護、地域でのボランティアというのはまとめてライフの方であって、政策目標としては、働いて所得をかせぐ時間と、それ以外のいろんな自分の生き方を追求する時間をどうバランスを取るかというふうに整理しないと、昔のアンペイドワークみたいな議論になって、非常に混乱すると思います。

○樋口座長 どうぞ。

○内永委員 今の質問の答えにはなっていなくて、ほかのことになって、同じ3番のことなんですけれども、ずっと今まで議論したことを踏まえて、これはもう一回見直した方がいいと思うんですけれども、例えばもう一つ、私は障害になるだろうと思っているのは、先ほどどなたかがおっしゃったと思うんですけれども、仕事の評価、要するに査定を今は長時間労働イコールいいというものがあると、幾らワーク・ライフ・バランスといっても、結局はそちらに流れざるを得ない。先ほど申し上げた生産性とかバリューとも表裏一体のところにあるんですが、評価をどういうふうに持っていくのかというところに、実は、このワーク・ライフ・バランスとすごく密接に結び付いていて、そうやって考えてくると、お願いしたように、やはりこれはもう一回見直した方がいいのではないかという感じはするんです。現象面だけが出ていて、実は本当の問題点というところに、ここに書いてある6つは行っていないのではないかという気がするものですから、もう一回見直した方がいいのではないかという気はします。

○樋口座長 これは、次回見直して、もう一度出していただくということでよろしいでしょうか。

○濱田参事官 それは今回の議論等を踏まえて、また出させていただきます。

○樋口座長 憲章と、とりあえず、今回、行動指針のところまで議論いただいて、もう一度、これで皆さんの意見が大分わかってきたというふうに期待します。
 どうぞ。

○柴田政策統括官 また、私どもがつくってから見ていただいて御議論いただいた方がいいかもしれませんけれども、もう一つは、前回から私も頭の中でどちらで整理しようかと思っているものがありまして、憲章自体、国民に対しての訴えかけですから、国民にとってわかるように、皆さんからも御指摘いただいていますから、そうしようと思います。
 ただ、そのときに、さっきも話にありましたけれども、少子化とか、男女共同参画とか、労働市場改革とか、そういう要素で、このワーク・ライフ・バランスというのは言ってきたわけですけれども、国民にどの辺から訴えかけるのかというところを1回、次回、またお示ししようと思っているんですけれども、そこはまだ若干、頭が混乱しているところかなというのが1つです。
 もう一つは、国民に訴えかけるというときに、ほとんど日本の場合にはサラリーマンが多いわけですから、まずサラリーマン、勿論、家族も入れれば相当の数になるわけですから、そこのところから話をしていって、勿論、自営の方とかそういう方もいらっしゃいますから、当然、そこも触れていくという、ある程度、何をターゲットにするかというところを少し絞ってから説明していかないと、なかなかわかりにくいのではないか。
 それから、例えば企業とかサラリーマンに訴えるにしても、再三、ここでもお話がありましたけれども、八代先生がおっしゃっている、こういう大体の傾向はこうではないかということをおっしゃっているわけですけれども、例えば経済界の方からすると、今どきそんなことを考えている人は余りいないというような話とか、非常に何が大きな傾向で、そういう中でも非常に一生懸命やっておられる方々もいる。やはり、この憲章というのは多分、一生懸命やっている方というよりは、もうちょっと頑張ってもらった方がいいのではないかという方をターゲットに整理をするというふうにしないと、なかなかわからないのではないかというような気もいたしまして、今日は悩みだけを申し上げますけれども、今度は悩んだ結果をまたお示ししますけれども、その辺は私は少しわかりやすくするためには、ターゲットをある程度絞って、勿論、そこだけではないというのを言わなければいけないんですけれども、そういう形でまとめてみようか。また、それは御議論いただきたいと思いますけれども、そんな形にしたいと思います。

○樋口座長 それはそうでしょうね。全部並列的に書くことはとてもできないわけですし、書かれると、今度はみんな並んでいますねという話になるのでね。

○柴田政策統括官 何が何だかわからなくなってしまうかなと思います。

○樋口座長 まさにメリハリというのは必要だろうと思います。
 どうぞ。

○坂田委員 今の数値目標なんですけれども、この文章には、ワーク・ライフ・バランスの社会全体における達成度をはかる目安の目標だと書いてあるわけで、ここを見ますと、どういうものかというようなことをいろいろ思いをめぐらすわけなんですが、さかのぼって表題を見ると、就業率向上と労働時間短縮と、極めて具体的に明示してあるわけです。私は、この作業部会から入っておりますので、これが組み込まれるということは既に決定済みのことなのかどうか承知しておりませんが、それでも感想を言わせていただきますと、先ほど3番の課題が現象面だけをとらえたように見えるという意見がございましたけれども、そう考えた上で、就業率向上と労働時間短縮ということに目を向けると、ここで言っているワーク・ライフ・バランスというのは、実は数年前に姿を消したワークシェアリングの言い換えではないかというような気がふといたします。どこが違うんだろうかと。前段では非常に理念高らかにいろいろうたい上げてはいますけれども、実質のところ、例えばこれは10年後なのか、5年後なのかわかりませんけれども、就業率向上と労働時間短縮がある程度のところまで達成できて、でき上がっているものはワークシェアだけなのではないかというような懸念、つまり理念、目指すものについての確認が不十分なまま進めると、それだけになるのではないか。ワークシェアリングが悪いとは言っていませんけれども、そういう心配を感想として持ちました。
 以上です。

○樋口座長 どうぞ。

○八代委員 今の御質問に対して、なぜ、この2つがあえて出しているかということを御説明しますと、逆に言えば、この2つだけやればいいという問題ではないわけで、ほかにもいっぱい、いろんなクオリティーの手法があると思いますし、それを加える必要があると思いますが、少なくとも、ここで考えているワークシェアリングが実現すれば、国際的に見て非常に低い日本の女性の就業率は当然上がるだろうし、高齢者についても、今の高い就業率が維持されるだろう。それから、日本の労働時間というのは極端に長いわけですから、当然ながら、別にワークシェアリングしなくても下がるだろう。勿論、ワークシェアリングをやってもいいわけですが、単にワークシェアリングすれば済むという問題ではないということはおっしゃるとおりだと思います。
 ですから、これさえあればいいというのではなくて、こういう働くことと生活をバランスすれば、少なくともこれができなければワーク・ライフ・バランスが実現しているとは言えないという最低限の目標を例示したものにすぎないわけで、おっしゃったように、見出しに書くというのはおかしいかもしれません。
 ですから、むしろ、例えばワーク・ライフ・バランスの実現を図るための数値目標とかという形で、中にほかにももっといい手法があればそれと並列でやるということは一つだろうと思いますが、趣旨というのはそういうことで、これは経済財政諮問会議の方からお願いした例示であります。

○樋口座長 この出し方についても、次回、議論をしていただきたいと思いますし、今日幾つか出てきた中にメンタルヘルス、職場における問題というのも出てきていますから、そういったものも含めるとか、まだいろんな議論をしていかなくてはいけないと思います。
 山田さん、何かありますか。

○山田官房審議官 いずれにしても、ここの課題のところは、先ほど統括官が申し上げたように、今日の議論を踏まえて再整理をさせていただきたいと思いますけれども、今日の議論もお聞きしていますと、資料1で、先ほど佐藤委員が言われましたけれども、ワーク・ライフ・バランスを実現した社会の構成要素というものをある程度きちんと設定して、それに対応した形で政策は何をやっていくのか、国民の各層は何をやっていくのかというような立て方で考えてみたいと思っています。
 いろいろ御指摘がございましたけれども、やはりできるだけこういう構成要素というのはめり張りのきいた形で、余りたくさんになるとまた散漫になってしまいますので、例えば内永委員が言われた生産性のアップという話は、恐らく、この長時間労働をいかにして抑制できるかということの方法論の中にしっかりと入っていくんだろうと思っているんですけれども、今日の議論を踏まえて、少し再整理をさせていただきたいと思います。

○樋口座長 それと、前回、田中さんがすばらしいものを出してくださいましたから、是非、あれを参考に考えていただくとよろしいかと思いますし、また、ほかのメンバーの方でいろいろ御意見がございましたら、早目に出していただけると助かるということだろうと思います。
 まだ時間があるんですが、我々もワーク・ライフ・バランスを考えなくてはいけないというようなことで、今日は生産性は非常に高かったのではないかと思います。
 意見交換はこれぐらいとして、事務局から次回についての連絡をお願いいたします。

○濱田参事官 それでは、次回の日程でございますけれども、次回の作業部会は既に御連絡しておると思いますが、10月18日木曜日18時から20時で、またお願いしたいと思っております。場所は今回と同じでございますので、よろしくお願いいたします。

○樋口座長 それでは、本日の作業部会は以上で終了いたします。どうもありがとうございました。

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