仕事と生活の調和関係省庁連携推進会議合同会議(第13回)議事録

1 日時:平成22年4月16日(金)

2 場所:中央合同庁舎4号館4階共用第2特別会議室

3 出席者:

福島みずほ内閣府特命担当大臣(少子化対策、男女共同参画)

(ヒアリング)

藤森克彦 みずほ情報総研主席研究員

(部会構成員)

樋口美雄部会長、市川隆治委員、海老井悦子委員、大沢真知子委員、大日向雅美委員、川本裕康委員、長谷川ダイバーシティ推進室長(北浦委員代理)、小室淑恵委員、榊原智子委員、佐藤博樹委員、高橋和憲委員、南雲弘行委員、縄倉繁委員、八代尚宏委員(横山委員はご欠席)

(関係省)

総務省 : 白水課長補佐(関課長代理)
文部科学省 : 黄地課長補佐(岸本室長代理)
厚生労働省 : 酒光参事官、野口課長、定塚課長、大須賀課長補佐
経済産業省 : 松井室長

(内閣府)

福下内閣府審議官、松田室長、岡島室長代理、岡田次長、姉崎次長、武川次長、川又参事官、中垣参事官、本多参事官

4 議事概要

○樋口部会長

 それでは、定刻になりましたので、第13回「『仕事と生活の調和連携推進・評価部会』『仕事と生活の調和関係省庁連携推進会議』合同会議」を開催いたします。
 お忙しい中、また雨の中、お集まりいただきまして、誠にありがとうございます。
 まず、事務局から、本日の議題について御説明をお願いいたします。

○本多参事官(内閣府仕事と生活の調和推進室)

 本日は、前半1時間は、議事次第の2.にございますヒアリング、後半1時間は、議事次第の3.にございます「仕事と生活の調和推進のための新たな合意について」を御議論いただく予定です。
 ヒアリングでは、イギリスのワーク・ライフ・バランスに関しまして、みずほ情報総研主席研究員の藤森克彦様から御説明をいただきます。
 本日の御出欠ですが、日本生産性本部の北浦委員の代理で、ダイバーシティ推進室の長谷川室長が御出席でございます。
 また、横山委員が御欠席です。
 また、途中11時めどで福島大臣が出席いたします。
 以上です。

○樋口部会長

 それでは、本日は今、御説明がありましたように、英国のワーク・ライフ・バランスの現状について、みずほ情報総研の藤森さんからお話をいただきます。お忙しいところ、どうもありがとうございます。
 では、よろしくお願いいたします。

○藤森主席研究員

 みずほ情報総研の藤森でございます。本日はどうかよろしくお願いいたします。
 最初に、若干私の自己紹介をさせていただきたいと思います。
 私は弊社の駐在員といたしまして、1996~2000年までイギリスにおりました。2000年7月に戻ってきたのですが、その直前の3月にブレア政権でワーク・ライフ・バランス・キャンペーンが始まりました。イギリス政府がワーク・ライフ・バランス・キャンペーンを始めるのは、初めてのことでありましたし、後ほど申しますが、それまでイギリス政府はあまりこの分野に積極的ではなかったものですから、非常に興味深く思っておりました。
 そして2004年、帰国してからですが「英国の『仕事と生活の調和策』から学ぶこと」という研究レポートを発表しました。さらに今年の1月に、財団法人こども未来財団から依頼を受けまして、現地調査団の一員としてイギリスのワーク・ライフ・バランスの調査をしてきたところです。
 本日は、こども未来財団の現地調査の内容等も踏まえながら、お話していきたいと思っております。
 発表の構成ですが、最初に、イギリス労働党政権がワーク・ライフ・バランスを推進する背景、取り組みの内容、ワーク・ライフ・バランスの実態とその影響、最後に、近年の課題と改善に向けた動き、という順序で御報告してまいりたいと思っております。
 それでは、2ページ目をお開きください。
 最初に、労働党政権がワーク・ライフ・バランスを推進する背景ですが、まず定義として、イギリスでは旧貿易産業省で、「ワーク・ライフ・バランスは働き方を調整することによってすべての人が仕事と仕事以外の生活について充実感を持ち、与えられた責任を果たせるようなリズムを見つけること」といった定義がなされております。
 ポイントとしては「働き方の調整」です。柔軟な就業形態によってワーク・ライフ・バランスを果たしていくことが1つのポイントになっております。
 97年に樹立したブレア労働党政権になってから、ワーク・ライフ・バランスに取り組んでいるのですが、97年までのイギリス政府は、伝統的にワーク・ライフ・バランスに積極的ではありませんでした。
 なぜかというと、1つ目は伝統的に家庭での育児を重視することがありました。なるべく女性は家にいて、育児をすべきだという考え方があったということ。
 2つ目は、ワーク・ライフ・バランスというのは、労使間で決定すべき私的領域の事柄であって、政府が介入すべきことではないという考え方が根強く残っておりました。
 3つ目は、例えば保育所をつくって、その利益を受けるのはどこかというと、これは企業だろうと。そうであれば、受益者負担の考え方に基づいて、企業がそのコストを払うべきではないかという考え方がありました。その結果、イギリスでは民間の保育所が主体でありまして、公立の保育所というのは、障がいをお持ちなど特別な事情を持たれているお子さんが対象になっています。公立保育所の割合は非常に低いパーセンデージであります。
 そして、民間の保育所の保育料金は非常に高く、レジメにありますように時間当たり3.04~4.52ポンドといったところです。例えば週30時間子どもを保育所に預けると、月額料金で日本円にして6~9万円かかるという状況です。
 ちなみに、イギリスの最低賃金で週30時間働いた場合に、賃金として得られるのは月額約11万2千円となっています。ということは、賃金の5~8割が保育料金にいってしまう。これでは就労意欲がわかないという問題があります。これがイギリスの保育所をめぐるひとつの大きな問題になっております。
 以上の考え方の下で、イギリス政府はワーク・ライフ・バランス施策に積極的ではなかったのですが、97年にブレア労働党政権が樹立してから、積極的に取組むようになりました。これは一体なぜかといいますと、1点目は、家庭生活での子どもに対する教育等の責任を重視するということがあります。
 図表1は、ILOの統計から、全雇用者に占める週49時間以上の雇用者の割合を国際比較したものであります。これを見ますと、特にイギリスの男性の労働者は日本に次いで高い割合になっていて、33%が週49時間以上働いており、長い労働時間になっております。欧州の中でも、イギリスは労働時間の長い国として有名です。
 ただ、私が現地で生活した感覚から言うと、日本との比較においては、労働環境は日本の方が厳しいのではないかという認識を持っています。例えば年次有給休暇を見ましても、イギリスでは同休暇を取得するのは「当然の権利」という意識のもとで3~4週間取得しております。こういった部分は、違いとして大きいと考えております。
 2点目として、子どもの貧困の解決という点であります。97年当時、25%程度の子どもが平均的な可処分所得の50%以下の世帯に属しているという統計がありました。現在の労働党政権では、2020年までに子どもの貧困を撲滅することを目標に掲げております。貧困世帯の子どもは、親が失業していることが多いので、親が働くことが非常に重要になります。しかし一人親世帯を考えると、働く環境をきちんと整備しなかったら働けないので、ワーク・ライフ・バランスを重視しております。
 3点目として、「男女平等の理念」の重視ということであります。図表2は、主要先進国7か国の就業率とパートタイム比率を見たものです。<2>の「女性の就業率」が7か国の中で第3位になっておりまして、イギリスは女性の就業率が比較的高い国になっております。
 ところが、<6>の「女性労働者に占めるパートタイマーの割合」を見ますと37.7%です。これも3位になっておりまして、働く女性は多いのですが、他の国に比べて、パートタイマーの比率が高くなっているという状況です。 さらに、「男女の賃金格差」を見ますと、21%の格差があって、これも上から3番目ということで、この格差も比較的大きい国となっております。
 ちなみに日本は、7か国の中で「女性の就業率」は最も低く、「男女の賃金格差」は最も大きい国になっております。この辺は正規労働と非正規労働との格差問題などが反映しているのだろうと考えています。
 2ページに戻りまして、背景の4点目として、就労促進を重視することがあげられます。特にイギリス政府は、「福祉から就労へプログラム」に取り組み、貧困問題を解決するには働くことが何よりの生活防衛になっていくのだと考えております。そして、福祉手当受給者が労働者になれば、財政負担の問題も軽減できるとして、就労促進を重視しています。そのためには、やはり「柔軟な就業形態」が重要だろうと考えています。
 最後の5点目として、英国の労働生産性というのは、アメリカ、フランス、ドイツに比べて低い水準にあります。労働時間を短くして生産性を上げていくために、ワーク・ライフ・バランスは、1つの重要なかぎを握っていて、企業と従業員にとってWin‐Winの関係を構築していきたいということが政府の考え方であります。
 こうした点から、政府の方では2000年からワーク・ライフ・バランスに対する施策を積極的に進めていきます。 一方、イギリスのワーク・ライフ・バランスは、特に柔軟な就業形態の導入という点では、90年代の後半から、大企業を中心に進んでおりました。なぜかというと、イギリスの景気が90年代半ばからずっとよかったので、労働需給が逼迫していたからです。企業の方では労働力を確保する必要があったのです。その点で柔軟な就業形態を取り入れるニーズが企業の方でありました。
 それから、消費者ニーズが多様化していまして、従来の9時~5時の労働では対応できなくなったということも企業側のニーズとしてあります。
 他方で、労働者側では、共働きや一人親の増加によって、場所や時間に縛られない働き方を求めておりました。企業側と労働者側のニーズが合致していって、実態的には政府の施策よりも早くワーク・ライフ・バランスが大企業を中心に進んでいったという状況があります。
 なお、イギリスにヒアリングに行ってよく指摘されるのは、日本とは違って、イギリスでは少子化はワーク・ライフ・バランスの推進の要因になっていないということです。といいますのは、イギリスの06年の合計特殊出生率は1.84と相対的に高くなっておりまして、スウェーデンとほぼ同じレベルになっております。イギリスの合計特殊出生率は2002年まではずっと低下傾向にあったのですが、2002年を底にしてまた上がってきているという状況です。この背景の1つには、移民労働者等が増えているといった状況が指摘されています。
 図表3は、御参考までに、イギリスの年齢階層別に見た女性の労働力率の推移を示したものです。いわゆる「M字型カーブ」が2008年時点では解消してきているという状況です。
 以上、イギリスでワーク・ライフ・バランスを推進する背景を見てまいりました。それでは、労働党政権がワーク・ライフ・バランスの推進に向けて、具体的にどのような政策を取り入れたのかという点を4ページ以降で見てまいりたいと思います。
 まず、大きな取り組みとして、4点をあげることができます。その第1点が働く環境の整備、特に「労働規制」の導入・強化という点でございます。
 図表4に、ブレア政権で導入された労働規制を示しました。1つ目は、「労働時間規制」であり、週48時間労働時間規制等が導入されました。これはEUの指令を受けて、イギリスの方で国内法を整備したものであります。ただしイギリスには例外規定がありまして、労働者が個別に週48時間以上働くことを合意した場合には、個別オプト・アウトという形で適用除外が認められております。
 2つ目は、これもEUの指令の影響ですが、「パートタイム労働規制」が2000年以降導入されております。パートタイム労働者は、比較可能なフルタイム労働者(おおよそ類似の職務に従事し、同じ事業主の下で働き、資格や技能や経験が同等である者)よりも不利な扱いを受けない(「時間比例」という観点から均衡処遇)ことが規定されております。特に時間当たり賃金を同じにしなければいけないとなっております。 この規定が入れられた当時、労働組合の方では、比較可能なフルタイム労働者といっても、実際は6分の1程度しかないのではないかという議論がされておりました。実際、労働組合等にヒアリングに行きますと、今でも問題が指摘されていて、1つは、比較可能な労働者が限定されているということ。もう一つは、訴訟に持ち込んだ場合に、立証責任を労働者側が負っているということがあります。この2点において、まだ問題が残されております。
 一方で、現在ワーク・ライフ・バランスを担当している中央官庁は「ビジネス・イノベーション・技術省」(旧貿易産業省)になっております。ここにヒアリングに行ったときに、担当者は今までフルタイムで働いていた方々がパートタイムに変わったときは均衡処遇は可能だとおっしゃっておりました。というのは、これまでフルタイムで働いていた賃金を労働時間で割り返せば、1時間当たりの時給は出てくるはずです。それを基準にパートタイムの均衡処遇は維持できるということをその担当者の方は言っていました。つまり、フルタイムからパートタイムに変わる際には、同じ職場で同一の業務で働く場合には均衡処遇は可能だということです。
 3つ目は、イギリスの特徴なのですが、一定の被用者に「柔軟な働き方への申請権」が認められるようになりました。
 具体的には、「16歳以下の子ども」あるいは「18歳未満の障がい者」を持つ親、介護している方々には、柔軟な雇用形態で働くことを事業主に申請する権利が法制化されております。
 この「16歳以下の子ども」というのは2007年4月からで、それまでは「6歳以下」でしたが、それが拡大されております。ただし、事業主が申請を拒否できる理由がかなり幅広く容認されております。例えば追加的な費用負担になること、顧客対応力への悪影響、既存の従業員間で調整ができないこと、業績への悪影響がある場合には、申請を拒絶できます。
 これだけ多くの拒否理由を認めるのならば、ほとんど認められないのではないかということは、法律が制定された当時から議論になっていました。しかし実際には2007年のワーク・ライフ・バランス調査では、87%の被用者が満足しています。それから、英国産業連盟(The Confederation of British Industry:CBI)の調査では、申請の95%が事業主によって承認されているという結果が出ておりまして、実態としても利用されています。
 なお、この申請権というのは、フルタイムからパートタイムに変わる場合のみならず、1回パートタイムになった方がフルタイムに変わるときにも申請権が認められています。フルタイムとパートタイムの間で就業形態を変更する申請権が法律的に認められているのがイギリスの状況です。
 4つ目としまして、時系列では前後しますが、2000~2003年に「ワーク・ライフ・バランス・キャンペーン」を政府が行いました。これは従業員にも企業にもメリットのある両立支援策を広めることを目的にしたもので、特に重要なのは「チャレンジ基金プログラム」という施策です。
 図表5を見てください。「チャレンジ基金プログラム」は、両立支援策の導入を検討する事業主に対しまして、無料のコンサルティングの機会を政府の方で企業に与えていくというものです。専門のコンサルタントは、企業に実際に行って、従業員と企業のニーズを掘り下げて、実情に合った最適な両立支援策を検討していきます。
 目的は二つあって、ひとつは個別企業を支援していくことです。もう一つの目的は、そこから得た情報を使って報告書をつくり、他の企業に「こういうやり方をすれば、ワーク・ライフ・バランス施策はうまくいきますよ」という情報を提供するツールにも使っています。
 手続きとしましては、事業主は申請書を貿易産業省(当時)に提出しまして、同省の審査を受けます。審査基準としては、いろいろな業種でノウハウを使ってもらいたいということで多様性のある業務領域を選ぶこと、コンサルタントから便益を受ける方法がしっかりしていること、申請した企業からプロジェクトに充てられる人材や時間が出されていること、企業からきちんと協力が得られること、プロジェクトから得られる測定可能な効果が見込まれること、などがあげられています。できる限りデジタルで効果を測ろうとするところが1つの特徴かと思います。
 実際のコンサルティングに入りますと、1か月目で契約を結び、目標を設定していきます。それから、当該企業の中に社内チームを立ち上げて、そこにコンサルタントがアドバイスを送り、実践していけるようにします。そして、6か月目に中間レポートを上げて、12か月目に達成度の検証等の最終レポートを提出していくという形になっております。
 この施策の規模としましては、2000~2003年までに1,150万ポンド(約17億円)を入れまして、448の企業・団体が支援を受けて、120万人の従業員が影響を受けました。1社当たりにかかる費用を単純計算すると500~600万円程度になっております。こうした施策が2000年から政府の方で取り入れられました。
 では、イギリスのワーク・ライフ・バランスの実態はどうなっているのかということを6ページ以降で見ていきたいと思います。
 まず、イギリスの柔軟な就業形態について、一体どんなものがあるのかということを御紹介してまいりたいと思います。大雑把に区分すると、労働時間を短縮していく「時短型」と、働く時間帯や場所を従業員の裁量に任せていく「裁量型」に分けられると思います。特徴的なものを上げますと、上から2つ目の「学期期間労働」。これは子どもの学期中のみ働くというもので、いわゆる夏休みになったら親も一緒に休むという形態です。「期間限定時短制度」は、一定期間のみ労働時間を短縮して、その後、通常の労働時間に回復していく労働形態です。「ジョブシェア」は、1つの労働を複数人で分かち合うものです。
 「裁量型」の方にいきますと、「集中労働日制」があります。これは週当たりの総労働時間は減少させないのですが、1日当たりの労働時間を増やして、これまで週5日働いていたところを週4日にするなど、出勤日数を変えていくという形態であります。「年間労働時間契約制」は、年間の総労働時間をあらかじめ使用者と契約して、雇用者の好きな時間帯に働くことができるという就業形態になっております。
 このように多様な就業形態があるのですが、では、実際企業の方でどの程度こういった就業形態を提供しているのかを見たのが図表7であります。
 これは2007年時点の調査ですが、まず全体の平均値を見ていただきたいと思います。パートタイムは全事業所の92%が提供していますので、かなり高い水準ですが、一番下の在宅勤務を見ますと26%となっておりまして、非常に低い。私の印象からしても、これはかなり低いなと感じます。ただ、従業員規模別に見ますと、500名以上の企業になりますと、7~8割程度がそれぞれの就業形態を提供しております。在宅勤務も82%の事業所が提供しております。したがって、大企業中心に柔軟な就業形態の提供が進んでいるというのがイギリスの状況です。
 それから、時系列で見て、柔軟な就業形態を提供する企業は増えているのかということを見たものが図表8です。「パートタイム」は既に03年時点で8割程度の企業が提供しましたので、微増といったところですが、その他のものに関しては、03~07年にかけて提供する企業の割合が増えております。
 それでは、従業員の方ではこれを活用できているのかどうかという点を次に見てまいりたいと思います。7ページの図表9を見ていただきたいのですが、これは横軸に「各就業形態を提供する企業の割合」を示しまして、縦軸に「提供企業のうち過去1年間に利用者のいる企業の割合」を示したものです。
 非常に興味深いところは、例えば「在宅勤務」を見てみますと、これを提供する企業の割合はそれほど多くはない。しかし、提供されれば6割程度の企業では利用されているという形で高い水準になっております。
 一方で、「期間限定時短制度」は、提供はされているものの、利用率はそれほど高くない。また、右上の「パートタイム」は、提供する企業の割合も高ければ、利用率も高いといった状況になっています。このように、就業形態によって、提供する企業の割合、利用者のいる企業の割合が大きく異なっています。特に、右側にある丸を付けていない就業形態は「時短型」ですが、後ほど申し上げますが、時短型はやはり賃金が下がってしまうことが、利用が高まらない要因としてあげられると思います。
 では、こういった就業形態を活用している人々の属性はどうなのかという点について、8ページをご覧ください。これは2007年の統計がなく2003年の調査になりますが、「子どもがいる人/いない人」で見ますと、子どものいる人の方が利用率は高くなっています。ちなみに、網かけしてある部分は、全体の平均値よりも高いところです。
 職種別に見ますと、「管理職・専門職」は、裁量型を中心にして活用されています。一方で、「サービス/販売」「その他/未熟練労働」に関しますと、時短型を中心に活用されている状況が示されております。
 更に時系列で利用者の割合が増えているかどうかという点を見たのが、図表11であります。これは柔軟な就業形態を提供している企業において、過去1年間に利用者のあった企業の割合を見たものですが、パートタイムは若干増えている程度で変わっていない。それ以外の期間限定時短制度、ジョブシェア、フレックス、集中労働日制は、利用者が増加しています。特に2000~2003年にかけて上昇しているのがジョブシェアとフレックスタイムなのですが、この要因としては、先ほど申しあげました通り、2002年に「柔軟な働き方を申請する権利」が法制化されていますので、この影響だろうと指摘されています。
 一方で、在宅勤務が減少しております。これはなぜかという点がなかなか難しいんですが、この報告書によれば、1つの理由というのは、やはり自宅では行えない仕事が多いという事実が出ているのではないかということが1点。もう一つは、2000年以降、さまざまな柔軟な就業形態が提供されるようになってきたので、在宅勤務に対する需要自体が減ってきているのではないかと指摘されております。
 ちなみに、在宅勤務はセクターや業種によって随分利用状況が違っておりまして、例えば金融セクターでは03年に22%だったのが、12%に減っています。一方で、公共セクター、公務員の方は14%から33%に増えています。かなり業種によって違いがあります。
 以上のように、全体としてワーク・ライフ・バランスを提供する企業、利用者が広がっています。では、柔軟な就業形態は、一体どのような影響を従業員及び事業主にもたらしていったのかという点を次に見てまいりたいと思います。
 図表12は、従業員に対してのアンケート調査で、「どのような影響があったのか」を尋ねたものです。全従業員の69%が「より多くの時間を獲得できるようになった」と回答しておりますように、「よい影響があった」と答える従業員が多くなっております。また、全従業員の一番右端で、否定的な影響として「特に悪影響はない」と回答された方が同じく6割程度おります。したがって、全体的には「よい影響があった」と言えると思います。
 ただし、柔軟な就業形態の種類によって「否定的な影響」の各項目に増減があります。例えば時短型では、「経済的な損失があった」と答える方の比率が平均よりも高くなっております。裁量型では、これとは逆に「ワーク・ライフ・バランスが減退した」という回答が多くなっております。これは仕事の密度が高まったり、あるいは長時間労働という面で弊害を感じる方が平均よりも高くなっているということだと思います。したがって、全体的には良い影響が多いのですが、働き方によってそれぞれよい面、悪い面が異なっているように思います。
 一方で、事業主はどのようにワーク・ライフ・バランスを見ているのかという点を尋ねたのが10ページであります。図表13は、ワーク・ライフ・バランスに対する事業主の見方です。効果として「仕事と生活の調和がとれたときに、人々は最もよく働く」と考える事業主は、2003年が94%、2007年が92%です。2%減ってはおりますが、かなり高い比率で事業主の方はワーク・ライフ・バランスを評価しております。
 また、「経営者は、幼児や障がい児の親に対して、仕事と家庭の調和ができるように特別な努力をすべきである」という点に関しても、07年では9割近くの事業主がそのように回答しております。事業主の責任についても、多くの事業主が認識しています。
 ただし、ワーク・ライフ・バランスを導入する難しさも感じております。図表10の一番下にありますように「働き方の変更がビジネスを混乱させる場合には、従業員は働き方の変更を期待してはならない」と回答される事業主が、03年は62%だったのが、07年には73%と、11%増えております。ですので、ワーク・ライフ・バランスは労使双方にとって「Win‐Win」の関係でなくてはならないという認識が、事業主側で高まっています。
 柔軟な就業形態がもたらした影響につきましてもう少し細かく見てみますと、図表14は、各労使関係、就労意欲、採用、定着率、生産性、欠勤率それぞれについて、「よい影響をもたらしたのか」「悪い影響をもたらしたのか」ということを事業主に尋ねたものです。各項目とも07年を見ますと、4~6割の事業主が「よい影響」と答えておりまして、上から2番目の「悪い影響」は大体5~10%の水準ですので、「よい影響」と答える方が圧倒的に多いということが言えます。
 しかし、03年と比較しますと、「悪い影響」と答える方はそれほど増えていなくて一定なのですけれども、「よい影響」と答える方が減っております。これはなぜなのか。この報告書によれば、組織運営にとりまして、ワーク・ライフ・バランスが必須になってきており、導入当初よりも広がった。このために、導入当初ほどのドラスティックな変化が見えにくくなっているのではないか、その結果がここに現れているのではないかという指摘がございました。
 それから、10ページの上の項目の3つ目を見ていただきたいと思います。今回イギリスでのヒアリングを行った問題意識のひとつは、冒頭に申し上げましたように、イギリスでは労働需給が逼迫したためにワーク・ライフ・バランスが広がったという経緯がございます。ところが、今は不況期です。不況期においては、ワーク・ライフ・バランスは一体どうなっているのかということが大きな問題意識でした。 英国産業連盟(CBI)の調査では、不況下の09年においても50%の企業が柔軟な就業形態を促進し、30%の企業が柔軟な就業形態の促進を検討していることが示されておりました。CBIの方が指摘したのは、「柔軟な就業形態は、不況期においても逆に広がる傾向にあるのだ」ということです。これはなぜかというと、別の方から「今回、イギリスはこれまでの不況期と少し違ってきたのではないか」という指摘もあったのですが、訓練をして、コストをかけて育てた従業員を不況期だからといって手放すべきではない。いずれ景気はよくなるから、そのときに技能のある従業員を確保しておかなければいけない。こうした意識が事業主の間でも広がってきているから、柔軟な就業形態を活用して、労働時間を短くしても働き続けてもらおうという動きが、今回の不況期では見られるようになってきたという指摘がございました。ここは、これまでとは異なる傾向ではないかと思っております。
 では最後に、今イギリスが抱えている課題と、近年の改善に向けた動きを11ページで御報告させていただきたいと思います。
 イギリスでは、昨年の11月に雇用年金省の中に「The Family Friendly Working Hours Taskforce」が立ち上げられました。このタスクフォースで、新しい施策の提言がなされ、その報告書が今年になって発表されております。
 この報告書によれば、今イギリスが抱えている課題として、イギリスはパートタイマーが非常に多いが、パートタイム労働は低賃金の仕事に限定されてしまっていることがあげられます。それがゆえに男女の賃金格差やキャリア格差が引き続き残ってしまっていると指摘されております。
 図表15にありますように、パートタイム労働に従事する女性の24%がフルタイム労働を希望しています。75%はパートタイマーで満足しているということはあるんですが、ただ実際に、フルタイムを希望されている方々は24%いる。そして、単純労働に従事する女性の57%がパートタイムになっているのに対して、管理職・専門職に従事する女性では12%がパートタイム労働であって、高度なスキルが求められる職業でパートタイムの労働の提供がまだ乏しいことが指摘されております。
 それから、専門職・管理職だった女性がパートタイムに移った場合には、29%が降格を経験しています。パートタイマーとなって降格された女性の69%は、「潜在的な能力を発揮できていない」と回答しております。さらに、イギリスにおいて女性のスキルを活用できていないことの損失は、GDP比で見て1.3~2%に相当すると推計されております。
 では、パートタイムに高度なスキルを要する仕事が提供されない理由は何か。その理由としては、(2)にありますように、1つは「フルタイム労働者は、パートタイマーよりも仕事にコミットしている」という誤った見方がまだ残っているということあげられます。
 それから、事業主への支援が不足しているのではないかという指摘もあります。もっと柔軟な就業形態のメリットを事業主の方に伝えていかなくてはいけない。また、中小企業では、柔軟な就業形態の導入方法がまだわからないところもあるのではないかという指摘もなされております。
 そして、この報告書では、新しい施策が提言されておりまして、1つは、事業主に対しての支援をもっと積極的にしていこうということであります。ビジネス界や経営者団体から構成される小さな会議を開催して、そこで労働市場におけるカルチャーの変化に向けた話し合いをして、その結果を政府のホームページ「Businesslink.gov.uk」に掲載していく。そこには柔軟な就業形態のメリットについても指摘する。
 中小企業では、労務管理に関する部署を持たないところも多いですので、各企業に合ったやり方で実践的な助言ができるように、政府が「オンライン・フォーラム」といったものを立ち上げたらどうかという提言もなされております。
 提言の2点目ですが、公的部門においてもっと先進事例をつくったらどうなのか。中央官庁において、新たに管理職等を雇う際には、柔軟な就業形態で働くことを検討したらどうかということです。その際、採用募集広告では、柔軟な就業形態で働くことを希望する潜在的な応募者を制限しないような宣伝をすべきではないかということも提言されております。
 最後に、採用マーケットにおける潜在的ニーズの掘り起こしです。政府は人材派遣会社、また日本でいうハローワークに相当するジョブセンタープラスも含んでいるんですが、そこと一緒になって、高度なスキルを持ち、柔軟な就業形態で働く希望を持つ人々の採用マーケットをいかに拡大していくかを検討していったらどうなのかということも挙げられております。
 それから、ジョブセンタープラスでは、柔軟な就業形態を導入するメリットを事業主に伝授できるように、そのためのやや専門的な訓練を受けた特別チームというものを構成していったらどうなのかということも提言されているところであります。
 以上、イギリスにおいてのワーク・ライフ・バランスの背景、実態、近年の動きといったところを御報告してまいりました。ちょっと早口になってしまいましたけれども、以上で私の御報告を終わりにさせていただきます。

○樋口部会長

 ありがとうございました。
 それでは、ただいまの説明につきまして、御質問がございましたらお願いいたします。
 佐藤委員、どうぞ。

○佐藤委員

 非常に興味深い報告をどうもありがとうございました。
 1つ、もしわかればなんですけれども、10ページのところで、こういうフレキシブルな働き方を導入するのに、事業主が働き方の調整が非常に難しいということです。ただ、実際上かなり導入されていますね。なので、例えばジョブシェアリングとか、フルが短時間に移ったときとか、そのときの仕事の調整というケーススタディみたいなものがあるかどうかなんです。多分日本で知りたいのはそこなので、そういう研究があるかどうか。具体的な職場でジョブシェアとかを導入したり、例えばだれか学期期間雇用みたいなものがあったとき、仕事をどう調整したかというものがケースであるかどうか。それが1つです。
 あともう1つは、9ページで確認です。図表12で具体的な設問をくくってありますけれども、これはもともとのレポートでくくってあるんですか。ワーク・ライフ・バランスが減退といったときに、例えば仕事密度の高まりというのは、あくまでも客観的で、これはワーク・ライフ・バランスの減退と言えるかどうか難しい。これは藤森さんがくくられたのか、元のレポートでこのようにくくってあるんですか。これは確認だけです。

○藤森主席研究員

 まず後者の方からですが、これはレポートでこういうくくり方をしています。この枠組みは果たして適切なのかどうかというのは、私も疑問です。「ワーク・ライフ・バランスが改善する」ということと、「より多くの時間を獲得する」ということはどういう違いがあるのかわかりにくいので、多分回答する側は戸惑ったのではないかと思います。設問の設定としては、こういう形で示されておりました。
 それから、実際のジョブシェアリングに関しての調整の仕方ですね。ケーススタディがあるのかということですが、イギリスの方では、ケーススタディの報告はかなり多いです。ただ、具体的な非常に細かなディテールのところに対してどういう調整の仕方をしたのかというと、研究としては、少し深さが足りないような印象を受けています。ケーススタディとしては、かなりの量がある国だと考えております。

○樋口部会長

 返答はよろしいですか。

○佐藤委員

 はい。

○樋口部会長

 八代さん、どうぞ。

○八代委員

 ありがとうございました。
 3点ほどありまして、1つは13ページの図表20を見ますと、依然としてフルタイムとパートタイムでは大きな賃金格差があるわけですけれども、これは基本的には質の違いということで説明されているのかと思いますが、それだけでなく、同一労働・同一賃金の原則からかけ離れているという面もあるのではないでしょうか。この点を是正することについて、例えば労働組合などがどのように関わっているのかということです。これを労働者が、個々に証明するのは非常に難しいと思いますが、欧米であれば、当然、職種別労働組合がこの同一労働同一賃金に対して、かなりの役割を果たしていると思われます。
 それから、柔軟な働き方に対しては、先ほど人材派遣会社等が大きな役割を果たしているということですが、日本では医療分野など、職種別に派遣が禁止されていますが、イギリスはどういう形の人材派遣に対する規制をやっていて、それは日本とどこが一番違うのかということ。
 3番目に、やはり日本では図表21のように正社員の雇用保障は強いけれども、企業の労働者に対する拘束力も強い。非正社員はその逆であるというトレードオフがあるのですが、イギリスの場合は、正社員というか、雇用保障のある人たちに対する企業の拘束性みたいなものは、日本とどう違うのか、等について教えていただければと思います。

○藤森主席研究員

 まず、13ページの図表20の真ん中にあります時間当たりの賃金で、フルタイム、パートタイムで格差があるという点です。これは御指摘のとおり、労働の質の違いによるものだと考えております。同一労働・同一賃金は導入されておりますけれども、ここでは同一労働の下での比較はされておりませんので、やはり質の違いというものが大きいです。イギリスでも、特にパートタイム労働では高度なスキルの労働が少ないことが指摘されておりますので、その反映だと認識しております。
 2点目の同一労働同一賃金に関しまして、労働組合の関わり方なのですが、労働組合の方では、当初の問題意識、比較可能な労働が6分の1程度しかないので、比較可能なものを架空に設定して、それで同一労働・同一賃金を図ったらどうかということを提案していたと記憶しております。ただし、その後、それがどうなったのかというのは、申し訳ございません。私の方では確認できておりません。
 一方、同一労働・同一賃金を求める動きは、労働組合の方でも運動として進めてきております。個別に何がしかがあれば、そこのところを支援するということはやっていると思います。
 それから、人材派遣の規制は不勉強で、ここでは答えられません。
 3点目につきましては、14ページの図表21、正規労働者と非正規労働者の格差問題のところですが、この部分は、やはり日本とイギリスでは非常に大きな違いがあると考えております。日本は正規労働者、非正規労働者の格差が非常に大きいものですから、パートタイムとフルタイムを行ったり来たりということが行いにくい。イギリスは図にありますように、両者がもう少し真ん中に寄っているという状況かと思います。
 何が違うのかということを申しますと、例えば日本では、本人の承諾を得ずに辞令1つで転勤あるいは配置転換が行われています。企業の命令としてそれを行うことができます。それに対してイギリスでは、本人の承諾なしに配置転換や転勤を行うことは、かなりレアケースだということであります。今回ヒアリングに行って、例えば大手通信会社の人事担当者に聞きましたら、「雇用契約の中では一応配置転換や転勤はできるようにしてはあるけれども、実際に本人の承諾なしに転勤させたり、配置転換できるかといったら、それは極めてまれだ」というお話でした。
 ですので、パートであれ、フルタイムであれ、イギリスでは本人の承諾なしに配置転換や転勤はできません。勿論、それぞれの部署ごとに募集をかけて、本人が希望して異動することはありますが、命令だけで勤務地や配属先を変えることがイギリスでは一般的ではないです。その点は大きな違いだと思います。これに対して、日本はパートとフルタイムの格差が大きく、パートとフルタイムの間を行ったり来たりすることは難しいところがあります。 あともう一つは、これは既によく指摘されているように、イギリスは職務給になっております。職務をベースにして賃金が決められているので、イギリスの方が日本よりも同一労働・同一賃金を実現しやすい土壌があると思います。
 なかなか難しいのは、先ほど申し上げました配置転換や転勤が、日本の正規労働者の雇用保障の一つとして機能しているという点です。その点は日本とイギリスを比べる際には、考慮しなくてはいけない難しい点であると思っております。
 以上でございます。

○樋口部会長

 他にいかがでしょうか。
 高橋さん、どうぞ。

○高橋委員

 2点ほどお願いします。1点目が5ページのワーク・ライフ・バランスキャンペーンについてですが、これは2003年で終わってしまったのでしょうか。それから、キャンペーンの中心を占めると思われるチャレンジ基金ですが、基金には中央政府や地方政府が出資しているのでしょうか、また、民間はどうなのでしょうか。一番興味のあるのは水平展開ですが、これはどのように評価されているのでしょうか。他の企業の従業員120万人が影響を受けたということになっていますが、それ以外の好影響についてわかれば教えていただきたいと思います。
 2点目がワーク・ライフ・バランスに対する企業へのインセンティブについてです。11ページの近年の改善に向けた動きのタスクフォースによる提案の中にいくつかヒントになるような話があります。日本でもいろいろ考えられていますが、例えば自治体あるいは公共体からの入札に対してインセンティブを付けるといったアイディア、あるいはそういう事例がイギリスにはあるのか、また、それに近いようなインセンティブがあるのかどうかがわかれば教えていただきたいと思います。
 以上です。

○藤森主席研究員

 まず、第1点のチャレンジ基金プログラムに関してですが、このプログラムは2003年で終了しております。これは当初から3年間のプログラムという形になっておりました。その後は、民間の方の団体で引き継いでやるというような形にはなっていたようです。ただし、その後あまり活発な活動をされていないという認識を持っております。
 それからチャレンジ基金プログラムの財源ですが、これは中央政府のプログラムですので、税金を財源に、中央政府から資金を拠出しているということでございます。
 それから水平展開に関してですが、旧貿易産業省でこの施策の効果を発表しておりまして、私が先ほど92%が「チャレンジ基金プログラムはよかった」と評価したというのはその報告です。詳細な報告書で、事業者側の方ではどんな問題意識を持っていたのかということも分析されております。
 ただし、その後の水平展開で、ここに出されたのは一応報告書としてまとめられて、それを読める形にはなっているのですが、それを読んで他の企業がどれだけ使ったかというところまでの調査は、私が知る限りないように思います。その点で水平展開はよくわかりません。
 それから、ワーク・ライフ・バランス施策をイギリスの企業に導入させていくインセンティブの与え方という点です。例えばチャレンジ基金プログラムに先ほど500社近くが参加したということを申し上げましたけれども、イギリスではずっと景気がよかったものですから、企業はいかにして人材を集めるのかという問題意識を持っておりました。ですから、放っておいても、中小企業を中心にして、このプログラムに集まるという状況はあったように思います。
 ところが、今は不況です。新しいインセンティブを付けるやり方を考えていかないといけない段階ではないのかなと思います。
 具体的に入札に関してのインセンティブを付けるかどうかというは、申し訳ありませんが、把握しておりません。

○樋口部会長

 他にございますか。3人いらっしゃいますので、時間の関係で、続けていただいて、お答えいただくということにしてよろしいでしょうか。
 では、お願いします。

○大日向委員

 御説明ありがとうございます。1点伺いたいんですが、ワーク・ライフ・バランスと子どもの年齢なんですけれども、最後の15ページの図表23を見ますと、保育所のところは、すべての3歳、4歳児を対象にしたサービスがあるようですが、3歳未満児に対してワーク・ライフ・バランスの関係はどうかということを知りたいと思いましたところ、8ページに図表10というのがございます。ここのところに子どもがあり、なしというところがありますけれども、これは、もう少し細かい子どもの年齢によって、時短とか裁量型の分布はあるんでしょうか。具体的には3歳未満児と、3歳、4歳以降の年齢別のデータがあるかどうか教えていただければと思います。

○樋口部会長

 大沢さん。

○大沢委員

 私も保育の関係で、図表23に非常にたくさんの政策が打たれたように見受けられますが、保育所の整備も含めて、前のお話では、女性があまり働かない社会になっていたというところから、これを見ますと、いろいろな貧困対策、チャイルドトラストファンドの導入ですとか、どういうフィロソフィーの下に、どういう政策展開が2000年以降にあったのか、教えていただければと思います。

○樋口部会長

 市川さん。

○市川委員

 ありがとうございます。最初の定義のところは貿易産業省から出されていると、それからチャレンジ基金、これも貿易産業省の所管ということでございますが、政府の中でかなり貿易産業省がリーダーシップを取っている、こういう印象を受けたんですけれども、そこ何か政治的な理由があるのかどうか、その辺をお伺いできればと思います。

○樋口部会長

 どうぞ。

○南雲委員

 ありがとうございます。南雲です。2ページのブレア労働政権ができて、WLBを推進した背景に<4>の就労促進を重視した、福祉から就労へのプログラム転換を行ったということがありますが、その中で特に働くことが何よりも生活防衛につながるということを打ち出してから、どういう意識改革をしたのか、国としてどういうことを行って、生活防衛になるという取組みが行われたのか、何か御存じであれば教えていただきたいと思います。

○樋口部会長

 盛りだくさんで恐縮ですが、お願いします。

○藤森主席研究員

 最初のワーク・ライフ・バランスと子どもの年齢につきまして、図表の10のところの子どものある、なしの子どもの年齢、これは確認が必要なんですが、この子どもというのは6歳だったというふうに記憶しております。3歳未満のデータは多分なかったと思います。
 それから、2点目の大沢先生からの御質問、図表の23のように、イギリスが経済的支援策、出産育児に関する休暇等々かなり整備しており、ここにどんな哲学があったのかという点でありますが、一つは、子どもの貧困に対する問題意識が、イギリスは非常に高いことがあると思います。イギリスは競争社会であるものの、スタートラインがそろっていない。特にサッチャー政権で格差が拡大されて、スタートラインに差ができてしまっているという問題意識が非常に大きかったと思います。
 ですので、例えば勤労税額控除や児童税額控除といった貧困者を対象にした施策が導入されました。勤労税額控除は、働く低所得者世帯、児童税額控除は子どもを持っている低所得者世帯を対象にしたものです。こういった低所得者世帯を中心にした給付つき税額控除が導入されております。
 また、「チャイルド・トラスト・ファンド」というものは、子どもが産まれたときに、政府が子ども名義の口座に250ポンド、これは1回限りですが、入れていくということをやりました。そして、18歳になるまで引き出せない。なぜこんなことをやったかというと、1つは子どもために貯金をするという文化がないですから口座をつくらせるということとです。もう一つは、低所得者でも18歳なったときに、そのお金を使ってビジネスを起こしたり、勉強したりということへの原資を用意しておく必要があるということから始められました。
 それから、なぜ貿易産業省がワーク・ライフ・バランスを中心に所管をしているかという点ですが、イギリス政府は、「Win-Winの関係」を作るためには、企業の視点を入れながら施策を考えていかないとうまく進めないのではないかという認識を持っていたのではないかと思います。そのため、ワーク・ライフ・バランスは、旧貿易産業省(現在のビジネス・イノベーション・技術省)が所管をし、他の省庁と連携をしながら進めているところではないかと考えております。
 最後の質問で、「福祉から就労へというプログラム」について、働くことは何よりも生活防衛になるという意識改革と具体的な取り組み内容は何か、という点です。
 これは、イギリス政府はかなり力を入れてやったところです。何をやったかというと、大きくて4つのことをやりまして、1点目は、ジョブセンター・プラス(ハローワーク)における就労支援と職業訓練ですね。これを強化していくこと。
 2点目として、職業訓練などこのプログラムに参加しないと、失業者向けの生活保護給付がありますが、それを止めてしまいますよという、「所得保障の条件化」ということをやりました。
 3点目として、低所得者世帯を中心に、働くことによって得られる賃金を魅力的にしなければいけないということで、勤労税額控除などの「給付つき税額控除」の導入と、それから「最低賃金の引き上げ」を行いました。
 最後に、ワーク・ライフ・バランスの推進に向けて、先ほど申しました労働規制の整備をやりました。
 こうした施策をセットで導入してきました。今日お話ししました、特に労働規制に関しては「福祉から就労へプログラム」は、1つの要素になっています。総合的に進めていくということをやってまいりました。
 単純労働が発展途上国の方に移っていたり、機械に代替される中で、やはり人々の仕事を守るには、エンプロイヤービリティーをいかに高めるかというのが一番重要なのだという意識をブレア政権はかなり強く持っておりました。そういう施策を出しながら人々の意識を変えていくという状況だったと認識しております。
 以上でございます。

○樋口部会長

 まだ、御議論、御質問があるかと思いますが、時間がまいっておりますので、藤森さんのお話はこれまでとしたいと思います。どうもありがとうございました。
 それでは、次の議題であります仕事と生活の調和推進のための新たな合意についてに移りたいと思います。
 まず、福島大臣からごあいさつをお願いします。

○福島内閣府特命担当大臣

 どうも皆さん、おはようございます。本会議がありまして冒頭から出席できなくて、本当に申し訳ありません。
 ワーク・ライフ・バランスを担当する内閣府特命担当大臣の福島みずほです。私も名前が一緒なのですが、みずほ情報総研の藤森様におかれましては、お忙しいところ御出席いただきまして、本当にありがとうございます。
 今、「イクメン」という言葉をはやらせようとか、男性の育児休業の取得率ももっと上げようということで、努力をしています。
 昨日、男女共同参画会議を官邸でやりまして、第3次基本計画の中間整理案を発表させていただいて、今後パブリックコメント、それから公聴会と、第3次基本計画をいいものにしていくために全力を挙げてまいります。
 私自身は、ワーク・ライフ・バランスと男女共同参画と子育て支援と、この3つの政策をうまく有効に、総合的にやることによってワーク・ライフ・バランスも全力で進めていきたいと考えています。
 第3次基本計画のキーワードは、昨日、総理も官房長官も私もそうだったんですが、実効性のあるものにしようということなんです。
 ワーク・ライフ・バランスも、皆様方に非常に議論していただいて政労使で合意された経緯がありますので、まさに実効性のあるワーク・ライフ・バランスということをぜひ留意していただいて、日本でイギリスの話を少しお聞きできましたけれども、ワーク・ライフ・バランスを実現するためには何をすれば本当にそれができるのかというところで、ぜひ、知恵を絞っていただきたいと考えております。
 以前も皆様方からいろいろお知恵をお借りして、まず、私の担当の内閣府のワーク・ライフ・バランス担当と男女共同参画のところから公共調達をする際の入札の加点方式で、女性の雇用率や労働時間に対する取組みをしているところを、地方公共団体においては実際にやっていらっしゃるんですが、政府で初めてそういうことを総合評価入札方式の加点理由とすると、企業の態度を何とか変えられないか、これはうまくいけば、他の役所に公共調達の考え方が広がって、また、公共事業までいけば、随分この日本の社会も変わるのではないかというふうに期待をしております。
 ワーク・ライフ・バランスの実現については、平成19年の政労使の合意による憲章・指針に基づき、官民一体となって取り組んでまいりました。ここにいらっしゃる皆さんたちが本当にエンジン役となって、政労使で取り組んでいただいたことに本当に心から感謝いたします。
 本年6月をめどに仕事と生活の調和推進官民トップ会議において、新たな合意を締結することができるよう、この部会におきまして御議論をお願いしたいと思っております。
 この内閣において、ワーク・ライフ・バランスは重要な政策課題の1つとして位置づけており、官民トップ会議には総理も新たに加わっていただくことといたしました。皆さんとともに強い決意で臨んでまいります。
 男性の育休取得の応援もありまして、また、保育園などにも行っているんですが、来週は文京区長、首長として初めて育休を取った彼のところにも行きまして、1つは、具体的な制度設計、それから、やはり啓発キャンペーンも必要だと思っておりますので、皆様方と一緒に頑張っていきたいと思っております。
 皆様の御理解とまた御尽力を心からお願いいたします。よろしくお願いいたします。

○樋口部会長

 ありがとうございました。それでは、事務局から説明をお願いいたします。

○本多参事官

 それでは、資料2に沿いまして、説明をさせていただきます。あと、参考1としてお配りしている資料もごらんください。
 また、他の資料の追加がございますので並行して配らせていただきます。
 今、大臣からも御発言がありましたように、憲章・行動指針の策定以降の動向を踏まえて、新たな合意をとりまとめる方向で提案をさせていただきます。
 新たな合意を行う趣旨でございますけれども、今の憲章は平成19年12月に策定されたものでございますが、その後、政権が交代し、また連合の会長が交代され、また、5月には経団連の会長の交代も予定をされていると聞いております。政労使のトップの交代を機に、仕事と生活の調和の実現に向けて一層積極的に取り組んでいく決意を表明するというのが目的でございます。
 また、これまで官民トップ会議の政府側のヘッドは官房長官だったんですけれども、今回、新たに総理にも加わっていただきまして、新政権としての姿勢を示したいと考えております。
 新たな合意の形式、内容については、ここで御議論いただく話ですけれども、一応方向性は、事務局として御提案をしたいと思っております。
 形式としては憲章・行動指針を改訂してはどうかというふうに考えておりまして、改訂の趣旨としては、今、政府で打ち出しております「新しい公共」や「ディーセント・ワーク」といった、現在の憲章・行動指針にはない新たな視点を盛り込んではどうかということが1つ。
 続いて資料2の<2>でございますが、憲章・行動指針の策定後、育児休業法が改正されたり、労働基準法も改正されておりまして、各種の施策が変化してきておりますので、そうしたものの進捗状況ですとか、あと、経済情勢を踏まえて行動指針に盛り込んではどうかというのが2点目。
 もう一つ<3>として、「新成長戦略」で決定される2020年数値目標を盛り込みたいというのがございまして、参考1の方をごらんいただけますでしょうか。お配りしておりますのが、昨年の12月30日に閣議決定された新成長戦略の中のワーク・ライフ・バランスに関連する部分の抜粋でございます。
 この中で、2020年までの目標をつくるということになっておりまして、具体的には雇用戦略対話という場で目標が検討されることになっておりますが、そこに掲げられております若者フリーター約半減ですとか、女性M字カーブ、高齢者就労、少しとんで、有給休暇取得促進、労働時間短縮、こういったものが、今、行動指針で設定しておりますワーク・ライフ・バランスの目標と重複をいたしております。ですので、そこの整合性を図っていく必要もあろうかと思っております。
 今後の進め方ですが、整合性を図る観点から、新成長戦略の議論が行われる雇用戦略対話の検討状況を踏まえながら進める必要があるわけでございますけれども、資料2の2枚目をごらんください。
 今回の部会で、もしこの議論を始めていいということになりましたら、まず、どういった項目を加えるべきかという御議論をしていただければと思っております。
 それを受けて、今後、できるだけ急いで事務局の方で憲章・指針の改訂案、修正案を策定いたしまして、次の部会までの間に、各委員にお示しをして意見を伺いたいと思っておりまして、次回の部会では、そういった委員の意見を基本的に反映させた案を提出したいと思っております。
 極力皆様に次回の部会で納得をいただけるところまで御議論いただきまして、6月には最終調整ということで部会を開催したいと思っております。
 ただ、6月の部会では、昨年つくりましたアニュアル・レポートの議論も、また今年のものも、ここでも始めたいと思っておりますので、そういう意味でも5月の部会で、憲章・行動指針改訂の実質的な議論をしたいと思っております。
 右側に新成長戦略と雇用戦略のスケジュールが入っておりますが、新成長戦略が6月に出されるということになっておりまして、それが出た後、トップ会議を開催して、新合意の策定をできればというふうに考えております。
 事務局からの提案としては、以上でございます。

○樋口部会長

 ありがとうございました。今、事務局から提案がありましたように、新合意に向けて議論を開始するということにつきまして、御質問、御意見がございましたらお願いいたします。
 その具体的な内容については、ここで議論していくということになるかと思いますが、そういうことを議論するということを開始していいかどうかということについて、本来、トップ会議で諮らなければいけないかと思いますが、開催が難しいということで、ここで合意いただければ、それでスタートしたいと思いますが、いかがでしょうか。
 どうぞ。

○川本委員

 仕事と生活の調和推進官民トップ会議において、新たな合意をしていこうというお話でございますけれども、ちょうど政労使のトップの交代があって、あるいは私どもの方も交代が予定されているものですから、非常にタイミング的にはよろしいんではないかと思っているところでございます。
 また、内容につきましては、今の資料の2のところにいくつかポイントが書いてございますけれども、この中で特に、新たな数値目標の見直しという項目もございます。ちょうどこの問題につきましては新成長戦略、また、それに伴った雇用戦略対話におきましても議論が行われているところでございますので、この数値目標については、整合性を十分お取りいただきたいと思っております。
 また、前回策定しました数値目標のときもそうであったように、個々人や企業に課されるものではなく、社会全体として達成することを目指す目標ということで、その点につきましては引き続きその考え方でやっていただきたいと思っているところでございます。
 以上でございます。

○樋口部会長

 他にどうでしょうか。どうぞ。

○南雲委員

 ありがとうございます。南雲です。今回の仕事と生活の調和推進のための新たな合意について賛成をいたします。
 その上で、ワーク・ライフ・バランス実現の中心課題は、働き方の改革に向けた、総実労働時間の短縮であると考えております。新合意が産業間、企業間の労使における総実労働時間の短縮の取組みを一層促すものとなるように要望いたします。連合もその一翼を担って運動の強化を図っていきたいと考えております。
 以上です。

○樋口部会長

 他にいかがでしょうか。よろしいでしょうか。新合意に向けて、議論を開始したいと思っておりますが、御了承をいただけますでしょうか。
 (「はい」と声あり)

○樋口部会長

 ありがとうございます。では、異議がないようですので、そのようにさせていただきたいと思います。
 では、続きまして事務局から説明をお願いいたします。

○本多参事官

 続きまして、まず、資料3にしたがいまして、新たに加える視点、事項の提案をさせていただきます。その後で、また数値目標の議論の方の資料に移りたいと思っております。
 資料3をごらんください。また、併せて現行の憲章・指針をごらんいただきながらの方がいいかと思いますので、青い表紙のパンフレットの後ろの方、17ページ以降に憲章と指針を載せておりますので、そちらもごらんください。
 今回、資料3としてお示ししておりますものは、関係省庁とは調整いたしまして、事務局からの案としてお示しするものでございます。
 これは今、箇条書きで提出しておりますが、これをこのまま憲章・行動指針に加えるというものではなく、また、今の内容とこれを置き換えるというものでもございません。これはあくまでも今日の御議論のたたき台として出しておりまして、今日議論していただいた内容を踏まえて、今後、憲章・指針の必要な部分を書き直す作業をしたいと思っております。そのための材料となるものでございます。
 まず、現在の憲章・行動指針でございますけれども、こちらを策定した際には、平成19年の8月~11月にかけて策定部会というものを8回、集中的に開催いたしました。そこで政労使で、ときにはかなり激しい議論も交わしながら、相当御苦労をいただいてやっと合意に至ったものだと、私は当時担当ではなかったんですが、そういった状況を聞いております。
 また、今、そうしてでき上がった憲章・行動指針の内容につきましては、担当の立場からいたしますと、関係者の皆様からは、一定程度の評価はいただいているものと感じている次第でございます。
 そういう性格の憲章・指針であるということを踏まえまして、今回の見直しでは、憲章・指針とも、現在の骨格や趣旨を基本的に維持した上で、必要な修正を加えるという方針で対応してはどうかと、あくまでも事務方の案としては考えておりまして、今回、事務局から提出している資料は、そのタイトルも憲章・行動指針に新たに加えることが考えられる視点や事項ということにいたしております。
 憲章については、憲章策定後に、いろいろな「新しい公共」等のコンセプトが出てきておりますので、それを視点として付け加えるという案を考えております。
 また、行動指針については、パンフレットの21ページをごらんいただきますと、行動趣旨の中に各主体の取組みというところがございまして、ここで労使、国の取組みが挙がっております。この部分を主として、政策の新たな方向性に合わせ、アップデートするということではどうかと考えております。
 以上のような前提で資料3をごらんいただければと思いますが、資料3につきましては、簡単に読み上げをさせていただきます。
 まず、憲章・行動指針に新たに加える視点ですけれども、まず、市民やNPOの活動ということで、「新しい公共」に関連するものでございます。「新しい公共」は最近いろいろと話題になっておりますが、参考1をごらんいただけますでしょうか。新成長戦略の中で「新しい公共」のコンセプトが打ち出されておりまして、1ページ目の下の方から国民参加と「新しい公共」の支援というパラグラフがございます。
 「新しい公共」について端的に説明するのは非常に難しいのですけれども、2ページの一番上に、官だけでなく、市民、NPO、企業などが積極的に公共的な財・サービスの提供主体となり、教育等々の分野で活躍できる「新しい公共」の実現に向けてというふうに書いておりまして、これが「新しい公共」のコンセプトではないかと考えております。
 こういった「新しい公共」のコンセプトを踏まえまして、憲章・行動指針に加えていきたいと考えておりますのは、仕事と生活の調和の推進により、国民の「新しい公共」の活動への参加の機会を拡大するということ。
 また、仕事と子育ての両立支援の分野で活動するNPO、例えば子育て支援のNPOなどたくさんございますけれども、そういったNPOなどにおいては、地域における両立支援の基盤として積極的に役割を果たすといったことを考えております
 また、次の「ディーセント・ワーク」ですが、これも参考1の2ページ目のところの真ん中に、「ディーセント・ワーク」の実現ということであります。
 「ディーセント・ワーク」は、多分ILOで提唱されたのが最初かと思うんですけれども、邦訳としては、「人間らしい働きがいのある仕事」というふうに言っておりますが、新成長戦略の中でも「ディーセント・ワーク」の実現に向けてということで、ワーク・ライフ・バランスの実現に取り組むというふうに書かれております。
 ここを受けて、憲章・行動指針でも「ディーセント・ワーク」の実現に取組み、雇用の質の向上につなげるといったことを盛り込んではいかがかと思います。
 また、併せて労働者の健康を確保し、安心して働くことのできる職場事環境を実現するために、メンタルヘルス対策に取り組むということ、これは数値目標でメンタルヘルスの観点は従前から入れていたんですけれども、そこも明文化して取り込んではどうかと思っております。
 3つ目としまして、大臣から、かねてから男女共同参画と子育て支援とワーク・ライフ・バランスを3つ一緒に進めていく必要があるという指示をいただいておりますけれども、ワーク・ライフ・バランス、仕事と生活の両立支援だけでなく、それが女性の職域の固定化につながることのないように、併せて男性の子育ての関わりの促進や、女性の能力発揮の促進にも取り組んでいく必要があるということも盛り込めるかと思っております。
 <2>は、専ら行動指針に加えることを念頭に置いた項目でございます。
 1つ目として、男性の子育てへの関わりの促進ということで、男性の育休の取得促進、また、地域のスポーツ活動や自然体験活動、文化活動等への親子での参加を促すことにより、男性が子育てに関わるきっかけを提供する。
 また、教育課程で、男女が協力して子育てに関わることについての学習の機会を提供する。
 続きまして、2枚目でございますが、長時間労働の抑制及び年休の取得促進ということで、改正労基法に基づく割増賃金率の引き上げへの対応を進めていく。
 また、先般、労働時間等見直ガイドラインが改正されました。今日も部会の最後で厚労省から紹介していただこうと思っておりますが、そういったものの周知をしていくということ。
 中小企業にも重点を置いて企業への支援や業務の効率化のノウハウ提供を行うということ。
 また、仕事と生活の調和に取り組む企業に対する評価をしていきたいということで、大臣の御発言にもありましたけれども、公共調達において、そういった企業の評価の取組みを推進するということ。
 また、雇用者以外の人のワーク・ライフ・バランスも重要ということで、農業者、自営業者についても啓発を行っていくということ。
 あと、職場や地域での活動に必要な能力の向上ということで、これは文科省からの御提案でございますけれども、社会人の学習目的に応じた教育プログラムの提供や学習成果が適切に評価されるような枠組みの構築により、社会人の大学等における学習を促進するといったことでございます。
 また、キャリア教育・職業教育についても、これも今の行動指針にも入っておりますけれども、記述をこちらのように充実させてはどうかと思っております。
 最後に、部会でもたびたび「公務部門で、まず、隗より始めよ」という御指摘をいただいております。それを受けて公務部門の率先垂範ということで、この3つの項目を挙げております。
 加える事項については、以上でございます。

○樋口部会長

 ただいま説明がありましたように、これまでの憲章・行動指針を生かしながら、それに新たに加えるというような視点で、今のような項目を取り上げてはどうかというような政府からの提案でございましたが、その点について皆様から御意見をいただきたいと思います。どなたからでも結構ですので、お願いいたします。
 どうぞ。

○川本委員

 御説明ありがとうございました。何点か意見を述べさせていただきたいと思います。
 まず、「新しい公共」ということでございますけれども、この言葉は、新しい言葉、発想だと思っておりまして、これは社会全体に浸透させていくには、だれもがわかりやすい、理解しやすい言葉で、ぜひ記述をしていただきたいと思っているところでございます。
 2つ目のところに「ディーセント・ワーク」がございます。これにつきましては、前提として、やはり経済成長とか、あるいは産業、企業の競争力の強化があると思いますので、ぜひその点について触れていただきたいと思っているところでございます。
 ワーク・ライフ・バランスを推進していくに当たりましては、やはり社会全体の生産性向上と同時にやっていく必要性があると思っておるわけでございまして、この辺を念頭に置いてと思っているところでございます。
 それから、資料3の2ページ目に、今回のキャリア教育・職業教育というものが入ってきております。これを体系的に充実させるということは若年者の就業率の向上にも寄与することにつながると思いますし、労働市場に参入する以前から職業観や就労意識の醸成に取り組む必要があると思っているところでございます。
 したがいまして、雇用政策と文教施策の連携をぜひ強化していただいて、取り組んでいただきたいと思っているところでございます。
 以上でございます。

○樋口部会長

 縄倉さん。

○縄倉委員

 情報労連の縄倉と申します、よろしくお願いいたします。
 新たな視点のところで3点ほど少し考えを述べさせていただきたいと思います。
 基本的には、賛成の立場なんですけれども、補強という点でお受けとめいただければと考えます。
 1点目が<1>、加える視点の中の3つ目の女性の能力発揮の促進のところなんですけれども、ここで現状認識として、やはりパートを始めとして、非正規労働者の多くは女性であるという今の現実、これを受けとめて、また、日本における就労全体を見れば、やはり女性に特有のM字カーブ、これの解消が全く図られていない、こういったところの現状を踏まえた具体的な書き方をお願いしたい。
 先ほどのヒアリングの中でありました、イギリスの中でも、M字カーブの解消が図られているというところ、これはやはり参考になるのではないのかと考えます。
 2つ目としまして、2ページ目になりますけれども、長時間労働の抑制、現行の指針の中でも、各種労働法令の遵守と有給休暇の取得促進にのみに特化されておりますけれども、それに加えて、今回は改正労基法も対応するということと、労働時間見直しガイドラインの周知を徹底していくということですけれども、やはり、長時間労働が一向になかなか日本で収束していないと、解消していないという問題は指摘しておきたいと思います。
 これは、厚生労働省さんの中で、東京労働局が平成20年に発表した東京都における過重労働による脳・心臓疾患及び精神疾患の発症を懸念する、従業員の健康管理に関するアンケート調査、都内に本社を置く300人規模以上の企業に対してアンケート調査を発送して、1,367社から回答を得たとなっておりますけれども、その中で、長時間労働に基づいて、過重労働に基づいて、脳・心臓疾患の懸念があるとした企業の割合が約50%ある。そのうち、3.8%の52社は既に発症があったと。精神疾患、メンタルヘルスに関しては、過重労働に関連したと想定されるものだけで53.3%。発症例に至っては13.6%、186社が既に発症があったと報告しているわけです。
 この実態は、やはり過重労働、長時間労働というものをやはり抑制していかなければならないと思いますので、そこら辺りの考え方をぜひ盛り込んでいただきたいと考えます。
 3つ目としまして、中小企業の仕事と生活の調和の推進並びにその次の公共調達におけるインセンティブの評価、インセンティブを与えるというところなんですけれども、これは先ほど大臣の方からも進めていくというお話がありましたけれども、こういったものを進めていくことがとりわけ重要であると考えます。
 その中の1つの考え方として、やはり中小企業の企業努力だけでワーク・ライフ・バランスの推進を図るというのはなかなか難しいと思います。公正な取引の環境を実現していくという観点からも、企業契約相互間における相手企業に対する思いやりというか、そういったところを意識するような文言を少し盛り込んでいただければというところと、中小企業であってもワーク・ライフ・バランスを推進していることによって、公共調達の入札に直接参加を促進できるような、そういう仕組みづくりの推進をお願いしたいというところであります。
 以上です。

○樋口部会長

 他にいかがでしょうか。どうぞ。

○市川委員

 中小企業の代表といたしまして、今もお話がございましたが、中小企業に対する支援措置、これはぜひよろしくお願いしたいと思います。日本全体の雇用の約7割を中小企業が担っておりますので、中小企業がワーク・ライフ・バランスを進めるということが非常に重要だと思っております。 予算措置等々につきましては、先ほどもイギリスの例がございました。貿易産業省が非常にリーダーシップを取っているということでございました。日本におきましてもぜひ、経済産業省または中小企業庁に、こういった支援についてのリーダーシップを取っていただきたいと思っているところでございます。

○樋口部会長

 南雲さん。

○南雲委員

 ありがとうございます。新たな憲章・行動指針に盛り込む視点として提起されました「ディーセント・ワーク」の実現は、ワーク・ライフ・バランス社会にとって不可欠なものであり、新たに盛り込むことについて賛成でございますし、連合が目指すワーク・ライフ・バランス社会の基本的方向では「ディーセント・ワーク」、働きがいある人間らしい仕事の保障が重要であるとして、その実現に向けた運動にも取り組んでおります。
 また、先ほど藤森さんから御紹介のあった、ブレア政権におけるWLB推進の背景でふれられた、1~5で特に4番の就労支援を重視し、福祉から就労へのプログラム転換を行ったこと、働くことが何よりも生活防衛になるとして、そのことによる財政負担の軽減もめざすとした政策について参考とするなど、「ディーセント・ワーク」の視点を踏まえた施策の積極的な展開を求めたいと思います。

○樋口部会長

 他にいかがでしょうか。
 どうぞ。

○大沢委員

 「ディーセント・ワーク」のところですが、先ほどもお話があったように福祉依存から、就労を促進する方向で活力ある社会をということですが、現状としては、パート賃金が非常に低いことで、働くよりも生活保護に依存する方がいいというような現状もございます。ですから「ディーセント・ワーク」というところについては、やはり格差をなくして多様な人材が包摂できるような社会制度をつくっていくということを、この中でぜひ強調されて、すべての人にとってワーク・ライフ・バランスが実現できるような社会という視点を入れていただけたらと思います。
 以上です。

○樋口部会長

 海老井さん。

○海老井委員

 NPOのところですけれども、「新しい公共」ということで、NPOの活動参加の機会を拡大するというのは非常に賛成なんですけれども、今、NPOの中で、NPOがだんだん増えてきておりますけれども、その中で非常に活動が難しくなっているNPOも出てきているんです。非常に発展して力が大きくなって活動範囲も広がっているNPOもあるんですけれども、一方で、せっかく立ち上げたものの、人数が確保できないとか、高齢化しているとか、資金が難しいとか、いろんなことで活動が尻すぼみになっているところもあるんです。
 ですから、こういう意味では「新しい公共」というのは、これからぜひ必要だと思いますので、こういったもの、せっかく心あるNPOをもっと強化していくような、育成していく、支援していく、そういった手当も、こういうときにはその視点も必要ではないかと思っております。

○樋口部会長

 ありがとうございます。こちらから順番に行きます。榊原さんから、どうぞ。

○榊原委員

 新たに加えていただきたい視点ということなんですけれども、これまでのワーク・ライフ・バランスの取組みというのは、ともすると国民が受けるイメージというのは、よりよく生きるために、より豊かに生きるためにやれるところをやりましょうという国民運動、キャンペーンだった印象があると思うんですが、今の日本の状況、さまざまなところに課題を抱えている状況からいくと、社会の衰退をここで食い止めるための最後の取組みというぐらいの位置づけ方、取組み方に転換していくときではないかなと思っています。 成長戦略というのは大変必要ではあるんですけれども、更に成長させるというよりは、どちらかというと今も人口減少、労働力の減少、出生率の低下、地域の持続性が非常に危うくなっている。そういった中で失速や衰退をどう止めるか。その中でワーク・ライフ・バランスというものは必須の課題になっている。そうした位置づけを明確に出していくことが1つ必要だなと思っています。
 例えば働く人たちの間でもメンタルな問題を抱える人が急増している状況とか、異常な自殺の多さとか、最近は日々報道されていますけれども、児童虐待のあまりの多さ、こういった状況はワーク・ライフ・バランスが進んでいない結果での、負の1つのつけとして起きているという見方を位置づけていって、社会の持続可能性があらゆる面で危うくなっている。それを転換するためである。そういった打ち出し方をしたいなと思いました。
 その中で例えば具体的に出していくのは、私は先ほどの藤森さんの報告の中で面白いなと思ったのは、11ページの一番下のところにありました、女性のスキルを活用できていないことの損失がイギリスの場合、GDP比で1.3~2%に相当すると推計されたというところです。経済成長の視点がこういうところにきちんと入っている。イギリスの女性で1.3~2%と推計されるということは、日本では恐らくもっとです。わかりませんけれども、例えばGDPで2~3%の成長の潜在的な可能性が、女性の能力の活用をきちんとやることでできるという試算がもしできるとしたら、そういった視点からもまだまだ女性の能力の開発が日本では行われていない。 1つのハードルになっているところを突破していくためにも、働き方の改革、生活と労働とのバランスのとり方が大事である。女性を眠れる最後の資源と社会の中で位置づけた上で、こういったことをやっていこうという打ち出し方が1つできるのではないか。
 もう一つが、次世代育成をきちんとできるような社会にしていくためにも、これが必要であるということを具体的に入れていく。ブレア政権の取組みの中にも子育てや子どもの育て方ということが、大変いろいろなところで組み込まれていることが印象に残りましたけれども、日本こそこの面で顕著に失敗している国であって、そこのところでどうやって次世代育成を経済社会のシステムの中に、持続可能なシステムとして入れ込んでいくかということが問われている。それをきちんと入れる。だからディーセント・ワークが必要なんだと持って行く。大きな持って行き方としては、そういったところを明確に出したいなと思いました。

○樋口会長

 高橋委員、どうぞ。

○高橋委員

 基本的には新しく加える項目としてはこういう内容なのかと思いますけれども、ワーク・ライフ・バランスの認知度は、いろいろ今までも検証がされておりますが、まだまだ低いかなという感じを持っております。特に先ほどからいろいろお話がございましたけれども、中小企業への認知度アップやPRといったものが非常に重要かと思います。今回も項目として挙げていただいておりますが、その中でより具体的なインセンティブ等の問題や支援の形態を盛り込むことが1つ考えられるかと思います。
 企業側、産業側としては、生産性向上につながるということが伝われば、展開としては非常にはっきりしてくるのかと思います。特に中小企業に対する生産性向上に非常に役立つんだという表現が必要だと思います。
 数値目標等については、雇用戦略対話等での数値との整合性というお話もありますが、逆に言えばダブりという問題もあって、ワーク・ライフ・バランスオリジナルといいましょうか、憲章オリジナルの考え方がはっきり出るように考えていってはどうかと思います。労働問題だけではなくて、社会全体の問題だという認識を国民全体に訴えるべきだと思います。

○樋口部会長

 ありがとうございます。八代委員、どうぞ。

○八代委員

 先ほど榊原さんがおっしゃったことは重要で、やはり日本についても眠れる資源、女性、障がい者、高齢者を活用することで、どれくらい経済成長に貢献するのか潜在的な試算をぜひやっていただきたいと思います。
 ワーク・ライフ・バランスで一番大きな鍵になるのは、テレワーク、在宅労働だと思います。他の介護休業、短時間勤務等にそれぞれ法改革が関連しているんですが、テレワークについては実はほとんどそれに対応する法制改革がないわけです。今はセールスマンと同じような事業所外労働を適用しているようなことで、あくまでも例外的な働き方に労働基準法では位置づけられている。これはやはりぜひ基準法の中に1項目を設けて、在宅労働というものをきちんと法制上も認知する。それはオフィスとは違う形の、より自宅ということに限定して多様な働き方、それをちゃんと認知することによって、企業がそれをもっと活用できるようになるのではないか。この点をぜひ御検討いただきたいと思います。

○樋口部会長

 ありがとうございます。小室委員、どうぞ。

○小室委員

 すみません、簡潔に2点だけなんですが、1点、ぜひ入れていただきたいと思う視点は、現在は何の時間制約も持たない、今後も持たないだろうと思っている方にとっても、なぜワーク・ライフ・バランスは必要なのか。これはコンサルティングの現場で一番職場には実際比率が高くいる人であって、一番手ごわい方たちなんですけれども、この方たちにとってもこのままいったらなぜいけないのか、なぜワーク・ライフ・バランスが必要なのかということを入れていただければというのが1点。 もう一点はすごく簡単な点なんですが、この憲章の話を方々にして、必ず返ってくるのが「憲章って何ですか」と言われるんです。「憲章というのは何のことなんでしょうか」と毎回言われまして、普通の国民にとって憲章というのは何の意味がある文章で、誰のためのどういう位置づけのものなのかというのは、全く認識のないものだというのを日々実感しています。なので、憲章はこういうものですよというのを最初に入れるか、憲章という言葉は使わないか、何かそういうふうにしないとせっかくつくったものが、全く何の文章なのか理解されないことが現状起きているのではないかと思います。

○樋口部会長

 大日向委員、どうぞ。

○大日向委員

 先ほど榊原さんがおっしゃったことと関連しますが、女性の能力活用に関連して2点追加していただきたいと思います。
 この指針には職場環境のことを十分書いていただいていますが、やはり職場就労にたどり着くまでの女性の生涯学習という観点をぜひ入れていただきたい。 もう一点は保育サービス等、職場がどんなに改善されても地域、保育の充実がなければ女性は働き続けることができませんので、イギリスの先ほどの藤森さんのお話を伺っても、福祉から就労へプログラムを転換する課程で、保育サービスへの充実はかなりやっているということがわかりましたので、これはぜひ入れていただきたいと思います。 以上です。

○樋口部会長

 それでは、いただいた課題を私どもで整理して、次回提出したいと思います。
 それでは、これと関連しまして数値目標に関して事務局から説明をお願いいたします。

○本多参事官

 数値目標ですけれども、先ほども少し触れましたが、雇用戦略対話という場で現在、成長戦略に盛り込まれる雇用関係の数値目標についての議論が進められているところでございます。その雇用戦略対話の中には労使も入っていらっしゃいますし、樋口部会長も有識者として参加をしておられます。
 その雇用戦略対話の場でメンバーの1人としての樋口先生が、先ほど追加でお配りをしております資料ですけれども、持続可能な活力ある社会構築のための雇用戦略の提言というペーパーを出しておられまして、その中で雇用政策における中期目標として2020年の数値目標の試案をお出しになっておられます。
 一方で、行動指針で今、掲げております数値目標ですけれども、水色のパンフレットをごらんいただきたいんですが、24ページに数値目標とは何かということが書いてございます。何人かの委員からも言及がありましたけれども、ここではワーク・ライフ・バランスの実現に向けた企業等々の取組みを推進するための社会全体の目標として、政策によって一定の影響を及ぼすことができる項目について数値目標を設定する。この数値目標は社会全体として達成することを目指す目標であり、個人や企業に課されるものではないという性格であることを書いておりまして、基本的に今回新たに検討いただく数値目標についても、事務方としてはこういった性格のものになるのではないかと考えております。
 ここにも政策によって一定の影響を及ぼすことができる項目とございまして、いわば国なり自治体が取り組む目標になるわけでございますけれども、一方で成長戦略も国の目標として掲げられるものということで、両方の目標が整合的なものであることは、やはり必要なのではないかと考えているところでございます。
 こういう観点から、今日の部会で樋口先生から雇用戦略対話に提案をされたペーパーの御説明をいただきたいと思っております。なお、その中でワーク・ライフ・バランスの行動指針で掲げている目標がカバーされていない部分もございますので、カバーされていない部分についてどうするかということも、また後ほど議論をさせていただきたいと思っております。樋口先生、よろしくお願いいたします。

○樋口部会長

 時間の関係もありますので、手短に説明をさせていただきたいと思います。 今、事務局からお話がありましたように、雇用戦略対話というのは政労使によって雇用戦略を考えていこうというものでございます。その中で北海道大学の宮本先生と私がこれに関連するということで入っているものでありまして、これは雇用戦略でありますから厚生労働省あるいは労使それぞれが中心になることは間違いないわけでありますが、それだけではなく政府全体として、他の省庁も含めてこういった問題を考えていく必要があるのではないか。特に足元で起こっている問題、更には将来の少子高齢化といった問題を見つめた場合に、他の省庁の役割も非常に重要になる。
 例えば文教政策でありますとか、税制でありますとか、あるいは社会保障制度、これは厚生労働省の中ですが、そういったものもある。更には言うまでもなく、経済財政に今度は産業政策というものも絡んでくるわけでありまして、全体を取り込んだ形でどういった展開をしていく必要があるだろうか。これまでの取組みもあったわけですが、やはり雇用戦略という以上は個別の雇用対策ではだめだという認識から、それをパッケージとして出していくことが必要ではないかという認識がございます。
 また、提言をするだけではなく、そこではフォローアップが必要ではないか。もし問題があるとするならば、どこに問題があるのかということをよく詰めて、それを次年度に生かしていくという、PDCAサイクルを回していく発想が必要ではないかと提言をさせていただいております。勿論、その場合には予算にも反映させることも必要になってくるのではないかということであります。 タイトルに掲げましたように、持続可能な活力ある社会構築のための雇用戦略ということで、何人かの方から先ほど御指摘があったことと、意見を一にするところが多いかと思います。その中において特に足元の問題、そして2020年までの問題という、その後もあるわけでありますが、問題を考えたときに、どうも雇用の量の拡大とともに質の向上といったものが欠かすことができないでしょうし、それによって誰もが性、年齢、障害の有無、地域の違いにかかわらず、意欲と能力を発揮し、そして安心して雇用社会活動に参加できる、活力ある高質な労働市場という新しい概念ですが、これを構築していく必要があるのではないかということであります。
 これは企業への働きかけ、今日出てきましたNPOでありますとか、ソーシャルエンタープライズの働きかけによって、この雇用の量、質を向上させるという、言うならば労働需要サイドへのアプローチと同時に、一方において労働供給サイド、それぞれの個人あるいはそれぞれの世帯に対する意識の改革も含めた対応といったものが必要ではないだろうか。需要サイドと供給サイドが重要であると同時に、その間を橋渡しするような労働市場といったものが必要ではないだろうかということから、こういった例について書いているわけであります。
 具体的には1ページの1という項目で、まず就業意欲を実現できる持続可能な全員参加型社会をつくる必要があるだろう。これはいわゆるアクティベーションの問題という形で、そこでは今日も議論に出ておりました若者、女性、高齢者、障がい者に就業を促進できるような、もし社会保障制度であるとか、いろんな制度において就業促進を阻害しているような要因があるとするならば、そこを変えていくことが必要ではないかという趣旨でございます。
 4ページの2番目の項目として、成長力を支えるトランポリン型社会の構築ということで、ここでもセーフティネットの話、また後で出てきますが、いかに能力開発をし、そして意欲を持つことができるか。これは職業能力という厚生労働省の取組みと同時に、やはり文科省を含めた文教政策の中でも、こういったものを進めていくものも必要ではないかということで考えております。
 そういう意識改革あるいはアクティベーションができたとしても、やはり雇ってくれる側がなければどうにもならないわけでありまして、6ページでは雇用機会創造の推進ということで、雇用機会をいかに多くつくっていくか。そのために例えば科学技術の活用でありますとか、あるいは雇用を産業化に結び付けていくというものとか、生活の場における必要となるようなニーズといったものを満たす雇用というものを、これは地域の雇用問題と絡めても考えていく必要があるだろう。そこでNPOとか新しい公共といったものを重視していくことが、必要ではないかということであります。
 4番目の項目がディーセント・ワークとワーク・ライフ・バランスの推進ということで、直接ここでは関連してくるかとは思いますが、これを雇用面に限定して書いているのがここのところでございますので、今日の議論でもそれ以外のところも取り上げるべきだということで、これは恐らくここの会議でのテーマになってくるかと思います。
 同時にディーセント・ワークでありますから、幾つか指摘されたような所得格差の問題、賃金格差の問題といったものも均等・均衡待遇の推進というもの、更には最低賃金の課題についても検討していく必要があるのではないかということであります。
 最後のところでは、まさに戦略を実施に向けた課題を具体的に、やはり絵に描いた餅で終わってはしようがないわけでありまして、これをいかに実現させていくかということを取り混ぜ、国、地方自治体、労使で地域ということを強調して毎年検証、改善していく必要があるでしょうというものをまとめたものでございます。
 その後に数値目標がありまして、これは雇用に関連するものだけが私の方からは今回提案されておりまして、その後、来週からまた始まりますが、そこでは雇用以外のところも含めて提案がなされていくんだろうと思いますけれども、この数値目標について厚生労働省にもお手伝いいただいておりますので、御説明をいただけますでしょうか。

○酒光厚生労働省労働政策担当参事官

 厚生労働省の酒光と申します。数値目標を設定するに当たって少しお手伝いをさせていただきましたので、今御説明いただきました資料の10ページの表のところを簡単に御説明したいと思います。時間もないので簡単な御説明になるかと思います。
 ここにあげられています指標は、1つは先ほど少し御説明があったと思いますけれども、参考1で配られています新成長戦略でフォローすべきとされている目標と、できる限り前回のワーク・ライフ・バランスの数値目標で掲げた指標について載せる方向でやっているということであります。
 まず<1>ですけれども、今までは全体の就業率を設定しませんでしたが、全体の就業率を2種類設定しております。1つは20~64歳の就業率ということで、一番雇用のコアの層となるかと思います。今EUでも雇用戦略の改定をやっておりますけれども、従来就業率の目標を15~64歳だったものを、今後は20~64歳に変えるという方向で今、検討を進めている。そういう意味からも、世界的なトレンドにも合った就業率の目標を設定することで、20~64歳の就業率、これが今74.6%を80%、約5ポイント引き上げるという目標であります。
 併せて、15歳以上の就業率については56.9%、57%ということで横ばいですけれども、この間かなり高齢化が進みますので、年齢別の就業率が上がらないとすると、53.4%ぐらいになると見込んでいます。ですから、実質的には3.5ポイントぐらい引き上げるという目標だと理解をしております。
 若者の就業促進の観点からは20~34歳、これは男女合わせての就業率ということで73.6%現状のものを77%に引き上げる。これはその次のフリーター数の約半減等を合わせた形になっています。フリーター数の約半減というのがもともと新成長戦略にございますので、現在の178万人を124万人程度にするということであります。
 ニートにつきまして直接目標は設定しておりませんけれども、若者サポートステーションというニート対策を行っているところがございますので、そこの就職等の進路実績を10年間で10万人行うという目標値が設定をされております。
 女性の就業促進については、育児期の女性の就業率ということで25~44歳までの女性の就業率を66%から73%、約7ポイント引き上げるということであります。
 第1子出産前後の女性の継続就業率ですが、これも現状38%を55%、今は大体両立が難しいので辞めてしまうという方が継続就業すると、このぐらいの率になるという数値でございます。
 男性の育児休業取得率が、まだ現状1.23%でございますけれども、これを13%、毎年1ポイントぐらいずつ引き上げるという目標設定をしております。この辺の目標は全体のワーク・ライフ・バランスの数値目標、2017年ですが、それを延長したものとだいたい同じような感じになっているかと思います。
 高齢者の就業率ですが、60~64歳の就業率を57%から63%に引き上げる。
 障害者の実雇用率、これはワーク・ライフ・バランスには従来なかったと思いますけれども、現状1.63%ですが、今の法定雇用率である1.8%にまで引き上げるということであります。
 成長力を支えるトランポリン型社会の構築ですけれども、公共職業訓練の就職率ですが、施設内訓練というのは公共職業訓練施設で直接行っている訓練ですけれども、この就職率を今は75%ですが、これを80%に引き上げる。民間の専門学校等に委託して行っている訓練ですけれども、これを65%の就職率を目指すというものであります。
 自己啓発を行っている労働者の割合につきましては、現在正社員で42%、非正社員で20%ですけれども、これをそれぞれ70%、50%ということで、自己のキャリアを伸ばしたいと言っている労働者の方が自己啓発をするとなると、このぐらいになるということで目標として設定しているものです。
 ジョブ・カードは職業訓練の実績ですとか、今までの職業キャリアなどを証明するカードですけれども、それを今、進めておりますが、現状21万人ほどがとっておりますけれども、2020年度までに累計値で300万人の方が取得できるようにするということであります。
 年次有給休暇の取得率ですが、現状47.4%となかなか取得が進んでおりませんけれども、中期目標2020年度で70%。前回、完全取得ということで労働者が望んで取らない人は除いてという、留保条件付きで完全取得ということであったと思いますけれども、今回は統計的にきちんと取れる数字として70%という目標設定になっています。
 週60時間以上の雇用者の割合につきましては、現状10%のものを5割減らす。約5%にしていくということであります。
 労働災害の発生件数は今、約12万件ございますけれども、これを3割減らしていく。
 メンタルヘルスに関する措置が受けられる職場、メンタルヘルスのケアが必要な労働者の方が、すべてメンタルヘルスを受けられるようにするというのが<16>の目標です。
 受動喫煙につきましても、受動喫煙対策が講じられている職場が現在46%ですけれども、これがすべての職場で受動喫煙対策がとられるような方向で進めていきたいということであります。
 具体的な指標のとり方、データの出所については11、12ページに記載しております。
 以上でございます。

○樋口部会長

 今、御説明いただいた数値も、今後、雇用戦略対話で議論していくことになるかと思いまして、あくまでもこれはまだ試案ということで提出させていただいたものでありまして、事務局から少しそれについて説明をお願いします。

○本多参事官

 事務局から資料5として数値目標設定指標の動向という資料を出しております。これは新しい数値目標を御議論いただくに当たって、現行の数値目標が今どこまできているかというものをまとめておりまして、それに今の樋口先生の試案を参考につくっております。 時間もありませんので簡単に申し上げますと、赤で書いている一番左の行動指針が策定されたときの数値でございまして、その後の新しい数値を右に書いてあります。赤で書いてあるものは策定時に比べて改善をしている指標。青が悪化をしている指標でございまして、25~34歳の男性と生産性、2枚目の自己啓発を行っている労働者の割合が悪化をしている。他は小幅なものもありますけれども、一応改善をしているという動向でございます。
 樋口先生のペーパーとの対応関係なんですが、右側を見ていただきますと、まず就業率なんですけれども、25~44歳の女性と60~64歳のところは同じくくりの目標設定になっておりますが、他のところは必ずしも一致していないということで、ここの扱いをどうするか、皆様の御議論をいただきながら検討をしてきたいと思います。
 時間当たりの生産性については試案の中にございませんので、これについてもこれから検討していきたいと思っております。
 食い違っているところが<4>労使が話し合いの機会を設けている割合です。これも御議論いただければと思うのですが、2017年時点ですべての企業で実施ということを目標に掲げておりまして、今、既にマックスの目標が設定されているところでございます。
 裏側のテレワーカー比率でございますが、もともと国交省でつくっている目標を今も使っておりまして、聞くところによりますとIT関係の計画が策定されているところでございますので、そちらでテレワーカーについても目標設定がされるのではないかと考えております。国交省と調整していきたいと思っております。
 短時間勤務を選択できる事業所の割合でございますが、こちらも目標が試案ではないところなのですけれども、ただ、これについてはこのデータを確実にとれる統計調査というのは現行のものではないものですから、まずデータを取ることを含めて検討をしたいと思っています。
 保育等の子育てサービスですが、試案にはないんですけれども、今年の初めに少子化対策大綱が子ども・子育てビジョンということで新しく策定されました。その中で保育サービスと放課後児童クラブについては目標が設定されております。ただ、こちらは2014年度が目標年次になるんですが、基本的にはそちらに合わせるのかなと思っております。
 育児休業取得率は男性の方はあるんですが、女性について今回目標はない。現状は実はワーク・ライフ・バランスの目標の80%を、かなり大幅に上回る90.6%にまで達しているということで、この90%を維持するという方向にするのか、あるいは目標にも入れないのか。そのあたりも今後、御相談させていただきたいと思います。
 男性の育児家事関連時間については試案にないのですが、現行の2時間30分というのは現在の水準から比べると、かなり高い水準ではあると思っております。
 今の目標が2012年、2017年なのですけれども、今度成長戦略が2020年ということで、まずそこをどうするかというのがあるんですが、事務方で今、考えておりますのは2020年の目標が策定されるのであれば、その目標に置き換えて、今の12年、17年のものは場合によっては参考にするということが考えられるかなと思っております。これについては今回御議論をいただいて、次回の部会までに皆様に御相談をさせていただきたいと思っております。

○樋口部会長

 それでは、質疑に移りたいと思います。どなたか御意見ございましたらお願いいたします。佐藤委員、どうぞ。

○佐藤委員

 2つあって、1つは行動指針の目標、資料5なんですけれども、やはりこの目標のつくり方の趣旨は前回を踏襲するのがいいと思うんですが、やはり目標というのは政策で何に取り組んだらいいかとか、それはちゃんと効果があったかというのがわかるものが大事なので、例えば女性の就業率でM字型の底を上げるという形で、それは男女別にとれているんですけれども、高齢者のところが60歳から男女込みで、男性だけとると既に目標を達成してしまっているんです。
 つまり男女の就業率の差が相当大きいので、これは男女別に内数でもつくらないと目標にならないのではないか。育児休業取得率が男女別になっているのは男女で差が大きいから分けているんです。高齢期の男女の就業率もかなり差があるので、合計したものは動かさなくても、それを達成するまで男性はどのぐらい上がるのか、女性はどのぐらい上がるのかやらないとまずいかなというのが1つです。
 続いて、これは行動指針に入れるかどうかなんですけれども、雇用戦略の方なのかもわかりませんが、ディーセント・ワークが今度入るとすれば、ディーセント・ワークというのは人間らしい働き方といったときに、労働時間とか災害はこういうものだけで測定できるかというのがあって、例えば仕事にやりがいを持てるとか、労働時間も長さだけではなくて、この労働時間が自分に合っているのか、つまり今の労働時間を変えたいかを聞いています。今の労働時間でいいのか、長くしたいのか短くしたいのか。とれるデータがあるので、もう少し質に関わるデータを入れる工夫をされてもいいかなというのがお願いです。

○樋口部会長

 大沢委員、どうぞ。

○大沢委員

 その関連で言うと、やはり男女間賃金格差は必要ではないかと思います。先ほどイギリスの話がありましたけれども、日本が一番女性の就業率が低くて、かつ、賃金格差も大きい。ぜひこれは非正社員も含めたもので男女間賃金格差をとっていただきたいと思います。ここが大きいということは、要するに男女の役割分担が非常に歴然と顕著であることを示していると思います。

○樋口部会長

 ただし、賃金格差を縮小するといったときに、下の方を上げるのではなく、上の方を下げればいいのではないかという議論になってしまうと困るんです。

○大沢委員

 男性の賃金が下がっているので、格差が縮小していると思います。

○樋口部会長

 でありますので、そこはちょっと議論をさせていただいた方がいいと思います。榊原委員、どうぞ。

○榊原委員

 雇用戦略や今の数値目標の話からちょっと離れるんですけれども、今こうして議論をずっとさせていただいていて、せっかくたいへんお忙しい中で大臣が議論に参加していただいていて、非常にこの問題に対する大臣の誠実さというのを前回から引き続いて感じているという立場から、ひとつせっかくなので御意見、御提案を申し上げたいのが、今回こうやって憲章や行動指針をまとめていく中で、数値目標とかいろいろな具体の施策が入ったものがまとまっていくと思うんですけれども、ブレア政権の取組みを見てもわかるのは、政権が実行力を持って打ち出すかどうか、それで国の雰囲気、国民の雰囲気が変わっていく。そこが大きい。
 どれだけ有識者が集まってこれがいいね、あれがいいねと知恵を出し切ったものをまとめても、先ほど憲章がどういう意味かわからないというのは、つまり実行可能性がどれぐらいあるものかわからないということが国民に見えてしまっている。せっかくこれがまとまったタイミングの後に参院選挙、国政選挙があります。ですから、今度のこうしたまとめた政策の中で具体な施策が入ったものについては、できたらコミットされた政権与党はマニフェストに盛り込む。マニフェストは国民にわかるようになっていますから、マニフェストがどれぐらいの意味を持つものかということがようやく国民も学習できるようになってきている。そこに連動したものとしてきちんと打ち出したものを実行していく。
 例えば労働規制の具体的な規制の法律であるとか、チャレンジ基金のようなものを入れていく。それを政権としてやるよと打ち出していただく。そういった連携のある、緊張感のある憲章や行動指針にしていくために、ぜひ大臣には一肌抜いでいただきたいと思いました。

○樋口部会長

 ありがとうございました。縄倉委員、どうぞ。

○縄倉委員

 情報労連の縄倉ですけれども、数値目標の<13>男女の育児休業取得率で、女性が既に最新値で90.6%になっていて9割を超えているのに、わざわざ目標を8割に抑える必要もないのではないか。これは男女でどちらがとっているかという比率ではなくて、子どもに対してどちらがとるか、今回育介法の改正があってパパ・ママ育休プラスというのもできていますから、当然ですが、既に達成しているなら90%に引き上げてもいいと思いますし、男性も樋口先生の新しい数字で13%ですけれども、これももっと高めていってもいいのかなという気はいたします。
 以上です。

○樋口部会長

 ありがとうございます。育休取得率をどう扱ったらよいのか、議論がまだ要るのかなというのが事務局からもあるかと思うんです。要は子どもを産んだときに働いている人が分母になっていて、その前に辞めた人は入ってこないということになっていますので、そこは検討させていただきたいと思います。
 もしよろしければ大臣は退席されますので、ごあいさつをお願いいたします。

○福島内閣府特命担当大臣

 どうも皆さん、精力的な議論を本当にありがとうございます。お話を聞きながら、本当にそのとおりだと思って聞いておりました。私も男女共同参画と子育て支援とワーク・ライフ・バランスの3つを本当に有機的に結び付けてやりたいという思いは、今日ここで話していただいた皆さんたちと一緒だと思いますし、新たないろんな御提言も本当にありがとうございます。
 ワーク・ライフ・バランスをよりよく生きるという点も勿論そうなんですが、今日出ております社会の持続可能性のためにどうしていくかという視点から、キーワードとして大きく躍り出ることができるのではないかと思っております。
 私は男女共同参画を広める会というので4人、香山リカさん、デザイナーの佐藤可士和さん、樋口恵子さん、資生堂の社長の前田さんにアドバイスをいただいているんですが、その議論をしているときに香山リカさんが、男女共同参画と男女平等はあまり成功しなかったかもしれないけれども、ワーク・ライフ・バランスはすごく成功した例として挙げていただいて、そうかと思ったんです。でも今日のお話で持続可能性のある社会をどうつくるのか、社会の疲弊をくい止めて、自殺に追いやられたり、メンタルヘルスを抱えたり、メンタルヘルスが悪いわけではありませんが、労働のためにそうならないですむ社会を本当につくるためのキーワードとして、ワーク・ライフ・バランス社会の実現に向けて、今日もたいへん貴重な御意見をいただいたと思っています。
 そして、やはり何と言っても最後に榊原さんがおっしゃったように、実効性のある、紙切れは食べることができませんので、絵に描いた餅ではなくという意味だと思いますが、これを本当に政権の中で気合を入れてやれるように、いろんな仕組みをちゃんとつくっていきたいと思っています。例えばキャリア教育ですと子ども・若者ビジョンにしっかり盛り込みたいと思っているんです。ですから、これは内閣府、厚労省や各省庁も皆さん来ていただいていますが、横断的にそれぞれの役所の中で精力的に取り組んでいくことと、それを横串に刺してダイナミックに雇用も含めてどう変えていくのかということでやっていきたいと思っています。
 新しい公共、新成長戦略の中にも盛り込んでいますし、関係がありますので、ダイナミックな超バージョンアップしたワーク・ライフ・バランスの提言、憲章ができるように、ぜひよろしくお願いします。
 どうもありがとうございます。

○樋口部会長

 どうもありがとうございました。どうぞよろしくお願いいたします。
 それでは、大臣はここで退室されます。
 (福島内閣府特命担当大臣
 (退室)

○樋口部会長

 最後にいくつか報告事項がございますので、まず生産性本部の長谷川室長からお願いいたします。

○長谷川ダイバーシティ推進室長

 お手元の参考2の資料で配付していただいておりますけれども、樋口部会長をはじめ産業界労使学識者11名の委員からなりますワーク・ライフ・バランス推進会議では、今年3月にワーク・ライフ・バランスの一層の推進で新しい成長を促そうというアピールを発表いたしました。この会議では昨年3月に福岡においてもワーク・ライフ・バランスの取組みが滞ることのないようにということで、緊急アピール「ワーク・ライフ・バランスで次の飛躍のための基礎固め」を発表いたしまして、それからちょうど1年が経った今、再び逆に残業時間が急増するなどの現象がこれから見られるようなことを懸念しまして、ワーク・ライフ・バランスの重要性を改めて認識しまして、新成長戦略の一環として推進すべくアピールを発表した次第でございます。
 主な点につきましては表にございます四角の中の3点でございまして、ワーク・ライフ・バランスの推進によって持続的な成長に向けた活力を生み出せ、人口減少対応のためにも、ワーク・ライフ・バランス施策の充実を図ろう、我が国の人材力向上に向けて、一段の働き方改革を推進。この3点でございます。
 次のページに全文がございますので、こちらはごらんいただければと思います。
 以上でございます。

○樋口部会長

 ありがとうございました。
 続いて事務局から報告事項がございましたら、お願いします。

○本多参事官

 事務局から、予定では参考に配付しております参考3~参考6と、追加で横長の男女基本計画の答申を配付しておりまして、これを御説明しようと思っていたんですが、時間も押しておりますので、どういう性格の資料かだけを説明して、あとは御要望があれば次回ということでよろしいでしょうか。
 まず参考3と参考4は前回からの宿題でございます。参考3は予算の中で21年度は予算があったけれども、22年度はゼロになった、廃止されたものも含めた資料ということでしたので、それを入れ込んだものをお出ししております。
 参考4については放課後子どもプランについて、もう少し連携の関係の説明をということでしたので、その資料を御用意しております。
 参考5は労働時間ガイドラインが改正された、その関係の資料でございます。
 参考6は大臣も言っておられました、公共調達で内閣府がまず第1号ということで調査研究の発注に当たって総合評価方式を取り入れて、そこで項目を入れましたので、その資料です。最後の点数のところに女性の雇用率ですとか、労働時間への取組みということで配点をしているのがおわかりいただけるかと思います。
 以上でございます。

○樋口部会長

 何か厚労省の方でありますか。

○野口企画課長

 一言だけ。ガイドラインを見直させていただきまして、とにかく有給休暇をとっていただく。その際のガイドラインのポイントは数字、まさに取得率を各事業所、会社の方で労使の話し合いの下で決めていただいて、それをフォローアップいただくことを今回ガイドラインに盛り込ませていただいておりまして、200を超える事業主団体などにお願いを申し上げ、直接御説明に伺ったりして御協力をお願いしておりますので、ぜひこの有給の取得ということで頑張らせていただきたいと思っております。
 直後にGWが来ますので、4月24日から5月9日までのカレンダーが入っております。祝日と土日が赤でございまして、平日が黒でございます。黒のところを有休という切り札によって、赤に変えていただくようにお願いをしておりまして、ぜひ御協力いただければと思います。ありがとうございました。

○樋口部会長

 ありがとうございました。こういう改善すべきところというのもなかなか法律や予算だけではうまくいかないわけでありまして、政府だけでなく労使も一緒に取り組んで、初めて実効性あるものになるかと思いますので、どうぞよろしくお願いいたします。
 それでは、本日の会合は盛りだくさんで時間をオーバーしてしまいまして、申し訳ございませんでした。
 以上で終了させていただきます。

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