パパの育児休業体験記 3-08

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パパの育児休業体験記

仕事中心主義だった自分。育休取得で、家族の未来に劇的な変化が。父親も、育てられるのだ

執筆者と家族の写真
執筆者の横顔:
(1)公務員(教員)、(2)0~99人、(3)30代前半、(4)20代後半、(5)本人・妻・子3人、(6)平成17年4月~19年2月 (1年11ヵ月間)

育休は「通過儀礼」!?

佐藤 新太郎さん

 「男らしく」育休を取得してほしい。「どこから乳がでるんか!?」と言われるかもしれないが、それは大丈夫。男は出産と授乳以外ならなんでもできる。強い男は弱っている人を助けるべき。ならば、苦悩する母親らに寄り添いたい。私が教職を休む前、家庭訪問で「先生、お子さんは?」と保護者によく聞かれた。その真意は「あなたに子を持つ親の気持ちはわかりますか?」ということだったに違いない。
 育休取得前の私は、一言でいうと「仕事中心主義」。「子は親の背中を見て育つ」とよくいうが、家中に私の背中はなかった。「俺、手伝うよ」というアシスタント的感覚で、家事・育児もそれなり。そんな父親だった。やがて第二子が産まれ、妻の育休も3年を経過しようとするある日のこと、「共働きを続けるつもりなら、育休を取って。」と妻は譲らなかった。かくして私は育児休業を取得して「あげる」ことにした。
 「あなたは仕事だけに専念しなさい。あとは俺にまかせとけ!」とまず妻に宣言。実は「ヤマトナデシコ」とはどういうものか手本をみせたかったのだ。
 すべてを私が背負うはめになってしまった・・・。調味料はどこだ?なべは焦げ付く、さっき片づけたばかりなのに・・・。その間も1歳の娘は足元で叫び続ける。「ママ~!!」。なんでこんなに手をわずらわせるのか。少しくらい自由な時間が欲しい。トイレぐらい一人でいきたい・・・。苦労して食事を作っても、「外で食べてきた」はないだろう。なにも知らない人から「育休は楽やろ?休みでいいなー。」と言われるたびに腹が立つ。
 いらだちが子どもへ向かう。「いい加減にしなさい!!」と、子どもについ感情的に当たってしまう。ハッ、と我に返り反省する。毎日この繰り返しでストレスがたまる。子どもの発育も私だけの責任として思い詰めてしまう。「子は親の鏡」とはよく言ったもので、すべて子どもはまねをする。長女が次女を叱る決め台詞の「もう、知らんっ!」は私の言葉。「お父さん、きれいな人がいるねー」とは、4歳児の言葉とは思えない。扇風機のスイッチを足の指先で消している。家に帰れば「あー疲れた、疲れた」を連発。おちおち不用意な言動はできない。それらにはすべてモデルがあるわけで、仕事に疲れ切った背中ばかりを子どもに見せることは、必ずしもよいことではない。ネオンの影に泣く母と子の姿が脳裏をよぎる。子どもは大人が作った社会でしか生きることができない。
 仕事を休んでまで、私は何をしているのだろう?心中に葛藤が生じた。満員電車で仕事へ向かう途中、見知らぬ無人駅にぽつんと1人降ろされてしまったようなさみしい気持ち。昨今の「育児ストレス」による痛ましい事件。それもわかってしまう。もう限界だった。
 私は爆発。俺にも人権はある!しかし、妻は「あなたの仕事でしょ!」と引かない。当然だ。今まで妻が「孤独な戦い」を強いられていたからだ。私は反省した。
 この苦労を共有できたことは大きい。これ以来、私の「ヤマトナデシコ」育成計画は終息。妻をはじめ女性に対しては羨望の眼差しを注ぐようになった。長い道のりではあったが、夫婦の絆はさらに強まった気がする。
 さらに人間としての幅も広がる。心強い味方、「ママ友」も自然と増えた。祖父母とのつながりも再確認できた。家事・育児の手ほどきを受け、生活力は向上した。育児もみんなでやるものだ。私は一人ではない。
 「命の育み」の実践は私を育てた。「お父さんがいい!」とくっついて来る子どもたちから父親にしてもらったようなものだ。目の前の子どもたちには私しかいない、という環境が私を「親」に変えた。すべては私しだい。それは負担であるが、喜びでもあることに気づいた。「父親」も「父親」をすることで「父親」になっていく。長い人生、こんな時間が男性にもあっていい。
 そして現在。「通過儀礼」を受けた私は、以前とは違う。そんな私を見て、妻は信頼を深めてくれた。そして3人目を決意。男の子が生まれた。わずか1年11ヵ月の男の育休。私と私の家族の未来を、実に劇的に変えてくれた。みんな、ありがとう。

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