日本国政府及び中華人民共和国政府による中国における日本の遺棄化学兵器の2012年4月29日の後の廃棄に関する覚書

日本国政府及び中華人民共和国政府は、1999年7月30日に署名された「日本国政府及び中華人民共和国政府による中国における日本の遺棄化学兵器の廃棄に関する覚書」を踏まえ、2012年4月29日以降も引き続き、「化学兵器の開発、生産、貯蔵及び使用の禁止並びに廃棄に関する条約」(以下「条約」という。)の関係規定に従い、中国における日本の遺棄化学兵器を廃棄するため、以下のとおり共通の認識に達した。

  1. 日本国政府は、中華人民共和国政府の協力の下、これまでに100回を超える現地調査及び発掘・回収作業を実施し、約4万8千発の日本の遺棄化学兵器を回収し、2010年10月に江蘇省南京市において廃棄作業を開始した。また、双方は、吉林省敦化市ハルバ嶺を含め、中国北部における日本の遺棄化学兵器につき、早ければ2012年に発掘・回収及び廃棄作業を開始できるよう準備を進捗させている。両国政府は、緊密に協力してこれらの作業を推進し、前向きな進展が得られたことを評価する。
  2. 中国における日本の遺棄化学兵器の廃棄作業の目下の進捗状況に鑑み、日本国政府は、中華人民共和国政府と協議して、2012年4月29日までに廃棄が完了しないことを認識した。中華人民共和国政府は、これに深い関心を表明する。両国政府は、2012年4月29日以降も廃棄作業を継続することを確認し、その後の廃棄計画作成の重要性を確認する。
  3. 両国政府は、本作業を円滑かつ効率的に進める必要性及び緊迫性を認識する。日本国政府は、引き続き、条約に従って遺棄締約国としての義務を誠実に履行する。中華人民共和国政府は、廃棄に対し適切な協力を行う。
  4. 両国政府は、人の安全を確保し及び環境を保護することを最も優先させることを前提に、可能な限り早期に中国における日本の遺棄化学兵器の廃棄を完了するため、日中間で共通認識に達し、化学兵器禁止機関執行理事会に報告した廃棄計画(別添)に従い、廃棄作業を推進することを確認する。
  5. 両国政府は、今後の廃棄作業に関連する事項について、引き続き日中共同作業グループ等の二国間協議、特に実施当局間の緊密な協議により確定することを確認する。

2012年4月12日於北京

(別添)2012年4月29日の後の中華人民共和国における日本の遺棄化学兵器の廃棄計画

1. 移動式廃棄処理設備による遺棄化学兵器の廃棄

日本国政府は、中華人民共和国の保管庫に保管され、2012年4月29日現在で既に化学兵器禁止機関(以下「OPCW」という。)に申告された遺棄化学兵器(以下「ACW」という。)(ハルバ嶺に埋設され又は保管されているものを除く。)について、できる限り2016年中の廃棄完了の目標を達成することを目指して最善の努力を払う。中華人民共和国政府は、廃棄に対し適切な協力を行う。

中国南部においては、移動式廃棄処理設備(以下「MDF」という。)1基が南京(江蘇省)に既に展開し、稼働している。南京のMDFは、武漢(湖北省)、広州(広東省)に順次移動し、廃棄作業を行う予定である。

中国北部においては、2012年中にMDF1基が石家荘(河北省)に展開した後、ハルビン(黒竜江省)及びその他の場所に順次移動し、廃棄作業を行う予定である。

MDFは、廃棄技術として制御爆破方式を採用している。

  • 1) 中国南部において2012年4月29日現在で既に回収され、OPCWに申告されたACWの廃棄
    1. 第1廃棄場所: 南京(江蘇省)
      • 南京における廃棄作業は、2010年10月に開始しており、2012年前半に完了する予定である。同地では、南京保管庫に保管され、既にOPCWに申告されたACWの他、杭州(浙江省)、並びに蚌埠、合肥及び安慶(安徽省)の各保管庫に保管され、既にOPCWに申告されたACWも廃棄される予定である。
    2. 第2廃棄場所: 武漢(湖北省)
      • 武漢における廃棄処理は、2012年中に開始し、同年中に完了する予定である。同地では、武漢保管庫に保管され、既にOPCWに申告されたACWの他、安慶(安徽省)、信陽、周口及び洛寧(河南省)並びに長沙(湖南省)の各保管庫に保管され、既にOPCWに申告されたACWも廃棄される予定である。
    3. 中国南部における第3廃棄場所
      • 第3のMDFの展開場所は広州(広東省)となる予定である。現在、日本国政府及び中華人民共和国政府は、廃棄作業の開始時期を含む詳細につき協議中である。
  • 2) 中国北部において2012年4月29日現在で既に回収され、OPCWに申告されたACWの廃棄
    1. 第1廃棄場所: 石家荘(河北省)
      • 石家荘における廃棄作業は、2012年中に開始し、同年中に完了する予定である。同地では、石家荘保管庫に保管され、既にOPCWに申告されたACWの他、天津市、唐山(河北省)及び太原(山西省)の各保管庫に保管され、既にOPCWに申告されたACWも廃棄される予定である。
    2. 第2廃棄場所: ハルビン(黒竜江省)
      • 現在、日本国政府及び中華人民共和国政府は、開始時期を含むハルビンにおける廃棄作業の詳細につき協議中である。
    3. 中国北部におけるその後の廃棄場所
      • 中国北部におけるその後の廃棄場所は、日本国政府と中華人民共和国政府との間で協議中である。

2. ハルバ嶺(吉林省)におけるACWの廃棄

ハルバ嶺における発掘・回収及び廃棄作業は、最も早くて2012年中に開始される予定である。

日本国政府は、中華人民共和国政府と協議しつつ、ハルバ嶺に埋設されているACWの実際の埋設数量等の不確定要素を考慮し、発掘・回収及び廃棄の作業の開始後できる限り3年以内に、ハルバ嶺に埋設されているACWの廃棄の計画を作成する。同計画は、特に、廃棄とその達成の目標時期及び廃棄処理設備の将来の全体像を含む。

それまでの間、日本国政府は、人員の安全確保及び環境保護を最も優先させるとの前提の下で、ハルバ嶺におけるACWの2022年中の廃棄完了を目指して最善の努力を払う。中華人民共和国政府は、廃棄に対し適切な協力を行う。

ハルバ嶺における廃棄処理設備は、廃棄技術として制御爆破方式と加熱爆破方式を採用する。

3. 既に確認され、今後OPCWに申告されるACW及び今後確認され得るACWの廃棄

日本国政府及び中華人民共和国政府は、共同調査の結果、佳木斯(黒竜江省)、琿春及び蓮花泡(吉林省)、広州(広東省)等の場所においてACWが存在していることを確認した。共同調査を通じて既に確認され、今後OPCWに申告されるACW及び今後共同調査を通じて確認され得るACWについて、日本国政府は、化学兵器禁止条約に従って、遺棄締約国としての義務を誠実に履行する。

4. 協議

日本国政府及び中華人民共和国政府は、人員の安全確保及び環境保護の重要性並びに技術的な要素を考慮し、廃棄作業の進捗状況に応じて、以上の廃棄完了の目標時期を含む関連事項について検討するための協議を行うことができる。