遺棄化学兵器処理担当室Abandoned Chemical Weapons Office

ハルバ嶺の施設

遺棄化学兵器処理事業

内閣府遺棄化学兵器処理担当室について

廃棄処理設備

我が国は、「化学兵器の開発、生産、貯蔵及び使用の禁止並びに廃棄に関する条約(以下「化学兵器禁止条約」という。)」(平成9(1997)年4月29日発効)に基づき、中国における遺棄化学兵器を廃棄処理するため、政府全体として取組んでいる。

そのため、遺棄化学兵器処理問題に係る政府の施策の一体性確保のために必要な総合調整を行うため、同年8月26日の閣議了解「遺棄化学兵器問題に関する取組体制」を受けて、内閣官房内閣外政審議室に遺棄化学兵器処理対策室が設置された。

その後、遺棄化学兵器の廃棄処理事業を実施に移すに当たり、実施体制の強化のため平成11(1999)年4月1日に遺棄化学兵器処理担当室が総理府(現内閣府)に設置された。

また、内閣官房及び内閣府に機能及び業務がまたがる組織の見直しが近年検討された結果、平成27(2015)年4月から、内閣官房遺棄化学兵器処理対策室の業務は、内閣府遺棄化学兵器処理担当室に一元化された(閣議決定「遺棄化学兵器問題に関する基本方針について」(平成27年3月24日)参照)。

化学兵器の発掘・回収作業

内閣府本府組織令に基づき、内閣府遺棄化学兵器処理担当室は、「化学兵器禁止条約に基づく遺棄化学兵器(我が国が遺棄締約国として遺棄化学兵器を特に緊急に廃棄する必要があると認められる領域締約国の領域内に存在するものに限る。)の廃棄に関すること。」に従い、我が国が有する義務を適正に履行し、日中関係の増進にも資するため業務を実施している。

なお、中国側においても平成12(2000)年1月に外交部に「日本遺棄化学兵器問題処理弁公室」が設置され、本事業で日本側遺棄化学兵器処理担当室と協力を行っている。また、平成24(2012)年に国防部外事弁公室に日本遺棄化学兵器問題処理弁公室が設置された。

化学兵器禁止条約の要旨(遺棄化学兵器に関する部分)

  1. 定義
    • 「遺棄化学兵器」とは、1925年1月1日以降にいずれかの国が他の国の領域内に当該他の国の同意を得ることなく遺棄した化学兵器(老朽化した化学兵器を含む。)をいう。(第2条6)
  2. 廃棄の義務
    1. 締約国は、この条約に従い、他の締約国の領域内に遺棄したすべての化学兵器を廃棄することを約束する。(第1条3)
    2. 締約国は、この条約が自国について効力を生じた後30日以内に、機関に対して申告を行うものとし、当該申告において、遺棄化学兵器に関し、他の国の領域に化学兵器を遺棄したか否かを申告し、及び検証付属書第4部(B)10の 規定に従ってすべての必要な入手可能な情報を提供する。(第3条1)
    3. 遺棄締約国は、遺棄化学兵器の廃棄のため、すべての必要な資金、技術、専門家、施設その他の資源を提供する。領域締約国は、適切な協力を行う。(検証附属書第4部(B)15)
  3. 廃棄の定義及び方法
    1. 「化学兵器の廃棄」とは、化学物質を実質的に不可逆的に化学兵器の生産に適しないものに転換する過程並びに弾薬類及び他の装置を不可逆的に使用することができないようにする過程をいう。(検証附属書第4部(A)12)
    2. 締約国は、化学兵器の廃棄の方法を決定する。ただし、水中に投棄する方法、地中に埋める方法又は野外において焼却する方法を用いてはならない。締約国は、特別に指定され、適切に設計され及び設備が適切に整えられた施設においてのみ化学兵器を廃棄する。(検証附属書第4部(A)13)
    3. 締約国は、化学兵器の輸送、試料採取、貯蔵及び廃棄に当たっては、人の安全を確保し及び環境を保護することを最も優先させる。締約国は、安全及び排出に関する自国の基準に従って、化学兵器の輸送、試料採取、貯蔵及び廃棄を行う。(第4条10)
  4. 廃棄の期限
    1. 廃棄は、この条約が効力を生じた後10年以内に完了する。(第4条6)
    2. 廃棄の期限の延長は、必要最小限とし、締約国がすべての化学兵器の廃棄を完了する期限については、いかなる場合にも、この条約が効力を生じた後15年を超えて延期してはならない。(検証附属書第4部(A)26)
      なお、遺棄化学兵器については、その性質に鑑みて検証附属書第4部(B)17(注)が特別に設けられており、上記(2)が条約上の最終廃棄期限として適用される所謂ストックパイル化学兵器とは条約上の扱いが異なることから、2012年2月の執行理事会決定により、2012年4月29日以降は、日中が共同で執行理事会に提出した廃棄計画により廃棄を継続することが承認され、現在廃棄処理事業を継続中。
      (注)検証附属書第4部(B)17抜粋
      「執行理事会がこの条約の趣旨及び目的に危険をもたらさないと認めるときは、領域締約国の単独の要請又は遺棄締約国との共同の要請に基づき、廃棄に関する規定の適用を変更し又は例外的な状況において停止することができる。」

遺棄化学兵器問題に関する基本方針について(平成27年3月24日閣議決定)

「内閣官房及び内閣府の業務の見直しについて」(平成27年1月27日閣議決定)を受け、内閣官房遺棄化学兵器処理対策室の業務を平成27年4月に内閣府に移管、一元化するに当たり、内閣法(昭和22年法律第5号)第12条第2項第2号に基づき、本基本方針を定める。

  1. 基本的な方針
    • 化学兵器の開発、生産、貯蔵及び使用の禁止並びに廃棄に関する条約に基づく遺棄化学兵器(我が国が遺棄締約国として遺棄化学兵器を特に緊急に廃棄する必要があると認められる領域締約国の領域内に存在するものに限る。)の問題については、我が国が有する義務を適正に履行するため、これまでも関係省庁の協力の下、政府全体として誠実に取り組んできたところである。平成12年からは黒竜江省北安市で遺棄化学兵器の発掘・回収作業が実施され、平成22年には江蘇省南京市において廃棄作業の開始、平成26年には吉林省敦化市ハルバ嶺でも試験廃棄処理が始まるなど、今後、本事業を推進していく上で、さらに専門性が増していくことから、平成27年4月以降においては、内閣府において当分の間、関係省庁間の必要な調整等を含め、本問題に取り組むこととする。
      また、処理事業の実施については、日中関係の増進にも資するため、関係省庁の緊密な連携、協力の下、政府が一体となった取組を進め、可能な限り早期に中国における日本の遺棄化学兵器の廃棄を完了させるものとする。
  2. 1.に基づき行う事務の内容と関係省庁
    • 政府が一体的かつ効率的に遺棄化学兵器の問題に適切に対応するため、関係省庁においては相互に緊密な連携を取りつつ、以下のとおり事務を分担して協力するものとする。
    1. 内閣府は、関係省庁間の必要な調整等を行うため、遺棄化学兵器処理対策連絡調整会議(以下「連絡調整会議」という。)を開催し、内閣府設置法(平成11年法律第89号)第4条第2項に基づき、遺棄化学兵器の問題に関して行政各部の施策の統一を図るために必要となる企画及び立案並びに総合調整を行うとともに、処理事業を実施することとする。
    2. 外務省は、中国との協議(廃棄計画に関する協議を含む。)、化学兵器禁止機関(OPCW)との連絡、調整等について対応することとする。
    3. 内閣府以外の連絡調整会議を構成する関係省庁は、処理事業の実施に際し、必要な職員の派遣、知見の提供等につき、十分な協力を行うこととする。
  3. 連絡調整会議
    • 連絡調整会議は、遺棄化学兵器処理に関する事務を担当する内閣府大臣政務官を議長として、内閣府において開催する。
    1. 連絡調整会議の構成は、次のとおりとする。ただし、議長は、必要があると認めるときは、構成員を追加することができる。
      議長 内閣府大臣政務官
      構成員 内閣官房副長官補(外政担当)
      内閣府大臣官房審議官
      外務省アジア大洋州局長
      財務省大臣官房審議官
      文部科学省科学技術・学術政策局長
      厚生労働省労働基準局安全衛生部長
      経済産業省大臣官房審議官
      環境省総合環境政策局環境保健部長
      防衛省防衛政策局長
    2. 連絡調整会議に幹事を置く。幹事は、関係省庁の課長等の職員で議長の指名した官職にある者とする。
    3. 連絡調整会議の庶務は、内閣府において処理する。
    4. 前各項に定めるもののほか、連絡調整会議の運営に関する事項は、議長が定める。
  4. 「遺棄化学兵器問題に対する取組について」(平成11年3月19日閣議決定)及び「遺棄化学兵器問題に関する取組体制について」(平成9年8月26日閣議了解)は、廃止する。