事業の経緯
遺棄化学兵器処理事業の経緯
- 遺棄化学兵器処理事業の概要
- 中国遺棄化学兵器問題とは、旧日本軍が先の大戦終了時までに中国に遺棄した化学兵器の処理に関わる問題であり、平成2(1990)年に中国よりその解決を日本国政府に対して要請してきたことに端を発する。
- 我が国が平成7(1995)年9月15日に、また、中国が平成9(1997)年4月25日に、各々化学兵器禁止条約を批准し、同年4月29日に 同条約が発効したことから、我が国は、同条約に基づき遺棄締約国として中国における遺棄化学兵器の廃棄を行い、中国は領域締約国として廃棄に対し適切な協力を行うこととなった。
- 平成11(1999)年7月30日、日中両政府で「中国における日本の遺棄化学兵器の廃棄に関する覚書」に署名した。
- 平成12(2000)年9月黒竜江省北安市において、第1回発掘・回収事業を実施して以降、これまでに中国各地から約9.8万発(令和4(2022)年度末現在)の遺棄化学兵器を発掘・回収し、保管している。一方、多数の砲弾が埋設されていると推定される吉林省敦化市ハルバ嶺のほか、まだ各地に化学兵器が残っていると見られる。(注)遺棄化学兵器廃棄処理事業の処理対象は、旧日本軍の化学兵器のみ。(外国の兵器、旧軍の通常兵器は対象外。)
具体的には、中国政府の通報を受け、外務省が現地調査を実施。当該調査の結果、旧日本軍の遺棄化学兵器であることを確認した場合、当室において発掘・回収を実施する。なお、発掘・回収の過程で出てきた対象外のものは中国側に引き渡しを行っている。
- 平成22(2010)年10月、江蘇省南京市において、移動式処理設備による遺棄化学兵器の廃棄を開始した。平成24(2012)年6月、約3.6万発を廃棄し、南京市での事業を終了した。
- 平成24(2012)年11月、ハルバ嶺における発掘・回収を開始し、同年12月、河北省石家荘市において移動式処理設備による遺棄化学兵器の廃棄を開始した。平成29(2017)年1月、2,567発を廃棄し、石家荘市での事業を終了した。
- 平成26(2014)年12月、ハルバ嶺において廃棄処理を開始した。また、同年同月、湖北省武漢市において南京から移設した移動式処理設備により遺棄化学兵器の廃棄を開始し、平成27(2015)年7月、264発を廃棄し、武漢市での事業を終了した。
- 令和元(2019)年5月、黒竜江省ハルビン市において移動式処理設備による遺棄化学兵器の廃棄を開始した。
これまでに南京、石家荘、武漢、ハルバ嶺で廃棄したものを含め約6.6万発を廃棄済(令和4(2022)年度末までの累計)。
- 発掘・回収及び廃棄処理数
区分 |
令和4年度末までの累計 |
発掘・回収数 (外務省調査を含む) |
98,293 |
廃棄処理数 |
65,894 |
- 遺棄化学兵器処理事業の性質
- 半世紀以上前の古い砲弾等で腐食しているものが多く、中には変形していたり、一部漏洩が見られるものもある。有毒化学剤のみならず爆薬による爆発リスクもある。欧米でも長期間土中等に放置されていた古い化学兵器を短期間のうちに大量に処理した経験、技術実績は少ない。
- 今後のスケジュール
- 遺棄化学兵器の大部分が埋設されているとされる吉林省ハルバ嶺においては、発掘・回収及び廃棄処理を進めていく。
- 中国各地での発掘・回収事業により、発掘回収された遺棄化学兵器は、現在中国国内の一時保管庫等で保管中。また、移動式処理設備による廃棄作業も継続中。