パパの育児休業体験記 4-05

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パパの育児休業体験記

世話をすればするほど子どもへの愛着が沸き、父親としての精一杯育てていく覚悟ができた

執筆者と家族の写真
執筆者の横顔:
(1)医師、(2)100~299人、(3)20代後半、(4)20代後半、(5)本人・妻・子1人、(6)平成20年9月~10月 (1ヵ月間)

育児休業に感謝!

大塚 亮平さん

 私は現在、家庭医(かかりつけ医、いわゆるホームドクター)の研修医として米国に留学中である。渡米時に妻は妊娠6ヵ月であったが、初めての出産ということもあり、妻は産後まで日本に滞在することとなった。
 「家庭医」は子供からお年寄りまで臓器に関らず包括的に診療し、妊婦検診や出産・分娩にも立ち会うため、日常の診療を通して日米の家族関係の相違や米国での父親の育児参加について垣間見る機会がある。例えば、妊婦検診や乳幼児健診はたいてい父親同伴であるし、出産には必ず夫が立ち会う。帝王切開の場合でももちろんである。また出産後は母児の部屋に泊まり赤ちゃんの世話を行う。
 私は元々子育てには関りたいと考えていたが、米国でこのような父親像を見るにつれ、我が子が生まれる時は是非立ち会って面倒を見たいと強く思うようになった。上司に相談したところ、快く一ヵ月間の休みをくれた。
 こうして出産前に帰国し、帝王切開の出産に立会わせてもらうことができた。生まれた時は、感動と共にまだ信じられないような複雑な気持ちであった。医師として子供と関わることはあっても、実際に我が子となると正直どのように関ったらよいかわからなかった。何はともあれ見様見真似で世話をした。沐浴指導や退院指導などに積極的に参加し、育児書の類も読んだ。世話をすればするほど、我が子への愛着が沸いてくるのを感じた。
 同時に父親にもできることが沢山あることに気づいた。おむつ交換、着替え、お風呂、洗い物、一緒に遊ぶことや寝かしつけなど 母乳の授乳以外は全てと言っていいほど可能であった。
 また母親は育児への責任感やプレッシャーを誰よりも強く感じており、家族形態などの環境変化も伴い精神的に不安定になりやすい時期である。父親は、母親の身体的負担を減らすことができるだけでなく、精神的な支えとしても最も身近で最大の理解者であることも自覚した。実際に妻からも「たくさん話を聞いてくれて、楽しく赤ちゃんと接する余裕が持てた」と言ってもらい、育児休業をとって本当に良かったと思った。
 一方で、父親が育児に参加しにくい環境があることも感じた。妊婦検診には父親は仕事を休みづらいため同伴が難しく、たとえ同伴しても診察室に同席しにくい雰囲気があるのも事実である。また産後の集団育児指導のほとんどは母親向けである。母乳を通しての繋がりも母親のみの恩恵であり、その上父親の仕事が多忙で赤ちゃんと過ごす時間が少ないと、育児の駆け出しの大部分は母親が担うことになる。そうしているうちに、いつの間にか「育児は母親、仕事は父親」のような性別分業ができあがるのかもしれないと思った。
 社会全体として父親が育児に参加しやすい環境を作って欲しいと切に願う。男性の育児休業を積極的に奨励し、妊婦検診の同伴や出産の立会い、出産後数日の育児休業などは誰もが取れるようになって欲しい。また医療者側も、妊娠中から父親の参加をもっと促し、「母親学級」から「両親学級」へと名実と共に変更し、産後は父親が長時間滞在しやすい母児同室の部屋などアメニティの工夫も検討していただきたい。
 今回の育児休業は貴重な経験であった。生まれたばかりの子と四六時中ともに過ごすことにより、この子が大きくなるまで父親として精一杯育てていくという覚悟ができたように思う。また子育てという経験を通して、世間の人が経験する喜びや苦労を知り、仕事だけではない社会に生きていく価値観を見出すことができた。
 父親が育児に参加することは少子化を抱える現代社会にとっても良い影響があると思う。育児休業を取った父親は、産休・育休をとる職員に理解を示しやすくなり、また女性職員は妊娠・出産で休業することに後ろめたさを感じにくくなるだろう。それが職場の中で男女共に育児に参加しやすい雰囲気づくりにつながると思われる。さらには、母親の負担が軽減し育児をより楽しむ余裕を持てるようになると、「二人目、三人目もいいなぁ」と考えられるようになるのではないだろうか。

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