パパの育児休業体験記 3-12

目次 | 前ページ | 次ページ 

パパの育児休業体験記

育休取得時に感じるプレッシャーと思い違い。大切なのは、妻のストレスを和らげること

執筆者と家族の写真
執筆者の横顔:
(1)団体職員(非営利団体含む)、(2)5,000人~、(3)30代後半、(4)30代後半、(5)本人・妻・子1人、(6)平成20年9月~21年3月(5ヵ月間)

お父さんもいっしょ

匿名

 育児休業をはじめたばかりの頃の一コマ。 「男性も休暇を取れるなんていい職場ですね」 「いや、どの職場でもとれるはずですよ」 「そういうもんですか?」 「保険からの育児休業給付金はあるけど、会社からの給料はもちろん無給ですけどね」 「給料でないんですか、そりゃそうですよね」。
 おおむね世の男性の育児休業に対する認識なんてこんなものだろう。「男が育児休業」というとまだまだ珍獣扱いされる時代である。人気があるテレビの子供番組もタイトルは「お母さんと・・・」だ。おとんはどこ行った?と言わずにはいられなくなるくらい、子育て=女性の仕事という認識が世間ではまかり通っている(と思う)。
 私のつとめる職場は女性も多く育児休業に対してはとても理解のある方だ。女性は子供を産むとほとんど育児休業を取り、後に復帰して働いている。もちろん男性である私が取ることに対してもあからさまな非難はない。ただ好奇の目にはさらされる(賞賛の眼差しを含め)。それだけならいいのだが、「奥さんが仕事をやっているから取るんですか?」という言葉もかけられる。「いや二人で育児に専念する」というとお節介にも収入の心配までしてくれる。「休まなくても育児をサポートする方法はいくらでもあるよ」とアドバイスもくれる。とてもありがたいことだと思う。しかし、女性が育児休業を取るときこのように言われるだろうか?ただ純粋に祝福し「仕事は大丈夫だから子育てに専念してください」と言ってくれるのではないか?
 実はこれが男性が育児休業できない一番の要因ではないかと思っているのだが、世の多くの男性には「育児はたかが家庭のことに過ぎない」という意識がどこかにあるのではないか?いくら制度としては整っていてもそこにいる人間の中に「育児は仕事より価値が低く、女性のやること」という意識があるかぎり男性の取得率は上がっていかないと思う。
 実際に休みに入ると「育児」はそんな甘いものではないことを思い知らされる。我が家では基本的に妻が育児、私が家事全般という分業体制なのだが、初めてづくしなので当然のことながらしばしばケンカが起きる。たとえば、妻が子供を寝かしつけるためにあの手この手でなだめすかす。私も手助けをしようと思い子供の相手をする。しかし妻にとっては私の行為がストレスになる。「せっかく寝かせつけたのにまた余計なことをして」という思いである。よかれと思ってやったこちらはたまったものではない。いきなり出鼻をくじかれ、お互いにストレスをためる結果となる。こういう状況が24時間続くのである。
 休職してみてわかったことだが、育児を一人でこなしているお母さんは24時間救急救命医のごとく子供の心配をしている。買い物に行っても授乳の心配、おむつの心配。よく泣く子供は時としてうっとうしい存在になる。もちろん家事もこなさなければならない。そして産後、体力を回復するには実は相当時間がかかる。乳腺炎などの病気にもかかる。相当なストレスがかかりいつも戦闘モード。せめて夫にはあうんの呼吸で自分の状況を理解し、行動してほしいと思っている。しかし私も含め世の男性のほとんどは、最初そのことがわからない(と思う)。妻が子育てする様子をつぶさに見て、失敗を重ねながら学習していくしかすべがないのだ。実際先ほど例に挙げたような状況が二、三度続くとさすがにどういうタイミングで手を出せばいいのかわかってくる。そういうことを一つ一つ繰り返し、最近ようやく子育ては妻のアシストをすればいいのだと思えるようになってきた。
 もちろん育児休業などしなくとも仕事と両立させているお父さんはたくさんいる。しかし自分はそんなに器用な方ではない。休職していなければ、妻が発しているシグナルとは全く見当違いな方向に自分の思いこみで突っ走り、衝突し、挙げ句の果てには子育ての責任をすべて妻に負わせているかもしれない(きっとそうだ)。夫として、父親としてどういう振る舞いをすればいいのか?育児休業はそれを考えるまたとない機会となっている。

目次 | 前ページ | 次ページ 

「仕事と生活の調和」推進サイト ワーク・ライフ・バランスの実現に向けて 〒100-8914 東京都千代田区永田町1-6-1
電話番号 03-5253-2111(大代表)
内閣府 男女共同参画局 仕事と生活の調和推進室
法人番号:2000012010019