パパの育児休業体験記 4-15

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パパの育児休業体験記

育児を楽しむためには心のゆとりが大切。周りのお母さん達にたくさん支えられ、助けられた

執筆者と家族の写真
執筆者の横顔:
(1)公務員、(2)0~99人、(3)20代後半、(4)20代後半、(5)本人・妻・子2人(男児1人(4歳)・女児1人(1歳))、(6)平成20年4月~21年3月(1年間)

育児は助け合って

瀬戸 誠さん

 「奥さんの具合でも悪いの?」
 4月当初、私が1歳になる娘をベビーカーに乗せ、3歳の息子の手を引いて幼稚園に送っていく姿を見て、近所のお年寄りが気の毒そうに僕に話し掛けてきた。私は、
「いえ、僕が一年間の育児休業を取ったんですよ。」
と答えた。
「へえ、男の人が。今じゃあいい制度があるものだねえ。そういう権利は、どんどん行使していきなよ。」
 始めは、日中から幼い2人の子どもを連れて散歩をする自分の姿を想像すると、何か悪いことでもしているような気分にもなったが、地域の方と挨拶を交わし、会話を重ねるうちに、次第に「僕は子育てを楽しんでいます。」という気持ちで堂々と歩けるようになった。
 私は、小学校教員として6年間勤めてきたが、妻が2人目の子どもを妊娠したとき、育児休業を取得したいと考えるようになった。
 男性の育児休業制度は、女性の社会参加を助ける意味合いのことを言われたりするが、私の場合、自分のために得したという気持ちが強い。確かに、妻が「仕事に戻りたい。」と言ったこともあったが、私自身が、日々の忙しさを理由に、教員という子どもの成長を支援し、見守る立場でありながら、自分の子どもたちの成長もじっくりと見届けられていない現状に不満・矛盾を感じていた。息子が生まれたとき、毎日一緒に風呂に入ろう、夕食を食べよう、寝る前は絵本を読んでやろうと意気揚々としていたが、朝は7時の出勤、帰りは夜8時を回り、帰宅したときには子どもは眠っていたということはよくあった。
 それが父親というものだと言ってしまえばそれまでだが、私は、ゆとりある時間の中で子どもと密接に関わることをしたかった。それが結果的に、自分の子どもとの深い関係の構築につながり、教員としての質も高まるのではないかと思った。
 仕事を離れて自分の子どもたちと共に過ごす日々は、しばらく感じたことのなかった時間のゆとりをもって始まった。おむすびを握って花見に出掛けたり、庭に畑を作ったり、お菓子を作ったりと子ども達と楽しいことをたくさんしてきた。
 しかし、育児は楽しいだけでは終わらない。幼稚園に入園した息子は、父子分離ができず、私は、1歳の娘と一緒に一ヵ月間、いつまでも幼稚園に残り、頭を悩まされた。また、子どもたちはよく病気や怪我をする。幾度か病院の救急にも掛かり、不安な思いになった。1歳の娘がなぜ泣いているのか、なぜ怒っているのか分からないときは、誰かに助けてもらいたくなるが、自分が何とかしなければいけない。その上、慣れない家事にも追われる。
 その状況を分かってくれている妻は、仕事で疲れていても、家事を分担してくれるし、子どもの世話も最大限にしてくれる。そのおかげで、子育ての苦労も子どもの成長を見られるという充実感となった。
 私は育児休業中に親としていろいろな経験をしたいと思い、息子の幼稚園では、幾つかのPTAサークルにお母さん達に混ざって参加をしている。その中で感じているのは、お母さんたちは、一人で抱えてしまいがちな育児の悩みや不安を互いに相談し合い、互いに助け合っているということである。私自身も家事や育児の悩みについて話を聞いてもらい、幼稚園で出会うお母さん達に、たくさん支えられ、助けられている。 
 育児の楽しいところは、子ども達の発育・成長を最も身近なところで感じられるところである。しかし、それは、心のゆとりがなくては楽しみや喜びとして感じられないこともある。その心のゆとりは、周りの人たちとのつながりや助けによって得られるものだと感じている。
 また、子どもがいる家庭で、一人で仕事と家庭のどちらも手を抜かずにこなしていくのは、とても大変なことだと思う。しかし、夫婦が互いの立場を尊重し、育児や家事も助け合っていけば、家族を大切にした上で、互いの自己実現に向かっていくことも可能だと思っている。

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