ほんの少しの勇気があれば誰でも育児休業は取得可能。仕事にも大きなプラスに
- 執筆者の横顔:
- (1)会社員、(2)5,000人~、(3)40代前半、(4)40代前半、(5)本人・妻・子1人、(6)平成18年3月(2週間)
一生記憶に残る私の育児体験記
匿名
平成17年4月から、私の勤務する会社で「短期育児休業」なる制度が導入されました。子どもが満3歳未満であれば、有給で2週間育児休業できるのです。私はなかなか子宝に恵まれず、結婚して7年目にようやく授かった娘でもあることから、乳幼児の頃は極力一緒にいたいという強い想いがありました。よく先輩からは、「子どもは小学校高学年くらいになると親と口も聞かなくなる。特に女の子は父親離れが早い」とか言われ、親バカな私は、1分1秒でも長く、娘と一緒にいたいし、お風呂に一緒に入ってもらえる期間も一般の父親よりは少しでも長くしたいという考えから、勇気を出して上司に「取得したいです」と宣言しました。「そんな暇があったら仕事しろ!」と一蹴されるかと思いきや、あっさりとOKを出してくれたことは意外でした。妻には「仕事をそんなに休んで大丈夫?評価を悪くされない?」などと心配されましたが、もう私の考えは取得する方向で固まってました。妻は家事が減ることで嬉しい反面、やはり私の出世が遅れると経済的にも厳しくなるという現実的な考えを持っていました。さすが女性です。
私は「3食昼寝付きでしかも有給でラッキー」という不謹慎な、とても甘い考えで育児休業に突入しました。ところがいざスタートしてみると、自分の思い通りに物事が進まず、ストレスの連続でした。まだ2歳になったばかりの娘は、言葉が通じません。一体お腹が空いたのか、おしっこなのか、はたまた一緒に遊んで欲しいのか、私にはさっぱり理解できませんでした。育児休業取得前は土日しか娘と一緒にいませんでしたが、育児休業中はフルタイムで2週間ぶっ続けで一緒にいましたので、本当に疲れました。「会社に来ていたほうが楽だ!」というのが素直な感想です。でも徐々にコミュニケーションが取れ、「習うより慣れろ」とのことわざが実感できました。また一方で「妻は毎日こんな生活をしていたのか?」ということも理解できました。今まで専業主婦の妻に対し、「生活費を稼いでいるのは自分だ!」というような態度でいたことを恥ずかしく思いました。私は化粧品会社に勤務していることもあり、出産を経験した女性の気持ちがほんの少しだけでも理解できたのは大きな収穫でした。
育児休業終了後は、子育て中のママ社員の気持ちが分かりましたし、彼女たちも私にプライベートなことなど話してくれるようになりました。このことは仕事にも大きなプラスになりました。話を元の育児休業中のことに戻します。憧れの「公園デビュー」が果たせたことが何より嬉しかったです。平日の昼間に娘と一緒に公園にいると最初は「この人リストラされたのかしら?」という白い目で見られていましたが、何日かすると、近所のママさんたちとも仲良くなれました。やはり子ども同士が遊んだりすると「お互いさま」という雰囲気が出てきて、おもちゃを貸したり、砂場でシャベルを貸してもらったりするうちに、何でも話せるようになりました。またちょっと自分のタイプのママさんがいると、娘をだしにして、「お子さんととてもかわいいですね!」なんていうと、話が大いに盛り上がることも体験できました。妻にはもちろん内緒です(笑)。しかしながら、育児休業中の最もよかったことは、娘との距離が大きく縮まったことです。今までは「ママ、ママ」と言っていたところが「パパ、パパ」と呼ぶ回数が増えました。これは本当に嬉しかったです。
こんな素敵な体験を世の中の男性がしないことは勿体ないと思います。しかしその障壁となっているのが、職場の風土であることもよく理解できました。「私が休むとみんなが苦労する」とか「陰口をたたかれる」などというネガティブな考えは、もう古いと思います。ほんの少しの勇気があれば誰でも取得可能です。一人でも多くの男性がこの「一生記憶に残る育児休業」を体験してくれることを願ってやみませんし、私の育児体験は心のハードディスクに深く刻まれています。