パパの育児休業体験記 5-09

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パパの育児休業体験記

育休制度は、社会人として大きな能力を身につけるための静かな時空間を用意してくれた

執筆者と家族の写真
執筆者の横顔:
(1)大学教員・准教授、(2)300~999人、(3)40代前半、(4)30代後半、(5)本人・妻・子、(6)平成16年10月~12月(3か月間)

育休で得た、5つの仕事能力

富田 晃彦さん

 わたしたちは4年前、子を授かりました。3ヵ月だけですが、私が育休を取りました。子を持ったことで多くのことに気付き、学びました。ここではそのうち5つを記したいと思います。

 まず、自分の想像力の限界を知り、謙虚になることができたことです。妻が妊娠してから、街中にお腹の大きな女性がたくさんいることに私は初めて気がつきました。とたんに、恐ろしくなりました。私はこれまで多くのことに気がつかず、たくさんの人に失礼なことをしていたかもしれない。私は自分に妙な自信がありました。仕事もうまくいっていました。しかし社会全体が自分の先生、という謙虚で前向きな態度を忘れていました。育休の時間は、それを思い出させてくれました。

 次に、人生の先輩誰もを尊敬することができるようになったことです。子育てだけでなく、社会の中のいろいろな仕事、助け合いで、たくさんの人が働いていること、働いてこられたことを、心から尊敬できるようになりました。育休の時間は、そういう心を作り出してくれました。

 3つめに、人の話をよく聞くことができるようになったことです。これは仕事で大いに役に立ちました。仕事でトラブルはつきものです。トラブルの相手は大変感情的になっている場合があります。しかしじっくり話を聞くと、問題の核心がよく見えてきました。じっくり話を聞くと、お互いの信頼も生まれました。この仕事能力は、育休中に鍛えたものでした。

 そして、子をかわいらしく思うようになったことです。何だ、と思われるかもしれません。見た目が愛らしい、という単純なものではありません。言葉で表現するのは難しいですね。子育てを何ヵ月かこなしていくうちに、初めてかわいらしいという感情を持ちました。また、人の子もかわいらしく思うようになりました。変な表現ですが、私が指導する若手も、かわいらしく思うようになりました。子を授かる前は、子どもが嫌いということでは誰にも負けない自信があったくらいでした。育休の経験から、かわいらしく思うという感情を、実感をともなって持つことができました。若手育成への新たな意欲につながりました。

 最後に、制度整備で仕事をする方々への感謝の気持ちを持つことができるようになったことです。私たちは子を授かることを予想していませんでした。私も妻も仕事はどうなるのか、私は妻をどう支えたらいいのだろうか、何も用意していないのにどうすればいいのか。こんな私に貴重な時間を下さったのは、育休制度でした。育休制度を整えて下さったすべての方々に感謝したいと思います。

 子育ては、私を成人させてくれた、と思っています。おっさんと呼ばれる年齢になってからですが、社会人として大きな能力を身につけることができました。育休制度は、そのための、ある意味静かな時空間を用意してくれました。そこで得た力を、仕事上の粘り、若手の育成への意欲、いろいろな人との信頼関係構築という形で社会に還元することが、私の次の仕事だと考えています。

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