パパの育児休業体験記 5-12

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パパの育児休業体験記

仕事から取り残される不安を乗り越えて取得した育休が、次の男性の育休取得者へつながった

執筆者と家族の写真
執筆者の横顔:
(1)公務員、(2)1,000~4,999人、(3)30代後半、(4)30代前半、(5)本人・妻・子6人、(6)平成16年4月~12月(8ヵ月間)

固定観念をぶち壊せ

松井 孝浩さん

 私が育児休業を考えたのは平成15年12月の第5子の誕生の際(妊娠中)でした。妻は「子供が4ヵ月になったら託児所に預けて職場に復帰したい」と言いました。妻は現在の職場で今までに3度、通算20ヵ月(短いと4ヵ月間)の育児休業を取得していました。妻は何度も休むことに抵抗を感じ、また妻自身一緒に働く人が長期休んでほしくないと思っていたのです。共働きのため普段の家事・育児も忙しい中で、妻の言葉に私は「子供が小さい時からの託児所の往復は親子ともに負担が大きい。何より子供がかわいそう。1歳までは自分が成長を見届けたい」と思いが沸き、育児休業を取る事を即決し、妻に伝えました。妻は考えもしなかった即答に驚き、「本当に取るの、取れるの」と半信半疑でした。

 実際、職場に自分自身が育児休業を取得することを公表したのはずっと後のことでした。なぜならば、男性の育児休業は前例がなく、制度はあっても取らないものと誰もが思っていると私は感じていたからです。まず手始めに職場の同僚に片っ端から相談し、反応を確かめたうえ、自分の希望を上司に伝えました。上司はまさかの様に捉えられましたが、私の真剣な思いが伝わると育児休業取得に動いてくれました。取得手続きには女性の場合と違い、初めてだらけのことだったので手続きが難航する度に「本当に取るのか」と上司に確認されました。

 育児休業は平成16年4月妻の産後休暇明けから子供が1歳になるまでの8ヵ月間取得しました。育児に対する不安は4人の子の育児経験(育児休業取得には普段からの育児及び家事参加は必要と取得経験からも再確認した)から、全く心配はありませんでした。しかし、その一方で常に心の奥に引っかかっていたのは「男性は仕事をするもの」という固定観念です。

 男性にとっては世間の輪(=職場)から外れることによる孤立感、異端者の印象を抱かれることで昇進に響く、所属している職場から離れることで皆に遅れを取ってしまい復帰が出来るか等の不安が沸きあがります。男性の育児休業取得が進まない1番の理由はそこであり、上司が最後まで取得に念押しされたのもそのとおりだと思います。自分も割り切ることが出来ない点でしたが、育児休業を取得してみると実際はただの思いすごしでした。育児休業中には父子で育児サークルにも積極的に参加しました。そこでも父親がサークル参加や育児休業取得することに対し驚きの反応が多くありましたが、父親に育児休業を取得して欲しいと願っている声もたくさん聞かれ、育児休業取得に前向きになれた体験でした。育児休業で何よりも良かったことは仕事に追われず、親として子供とゆっくり向き合える時間が取れたこと。子とともに自分も成長していると実感出来たことで満足しています。職場復帰後は育児休業取得前の状態に戻るには少々時間は必要でしたが、周りの理解や協力のおかげで乗り越えることが出来ました。とはいえ、育児休業中も職場に顔を出して進捗状況を確認していました。

 仕事を持つ女性(母親)は、育児経験等から色々な発想をし、仕事に役立てていると常々思っています。以前の私は周りの反応を見ながら発言していました。育児休業取得希望を表明後は自分の意思をはっきり伝える様になりました。それが職場内の意見交換の活性化に繋がり、良い仕事に発展しています。今回の経験は仕事において、また子育てにも役立っています。まだまだ男性の育児休業取得は、かなり勇気がいることです。私の育児休業取得で第二の取得者が出ました。取得したいと思う人が他にもいたということが分かりました。一番の良い波及効果でありました。男女に関係なく育児休業を取得するのは当たり前、特に男性が安心して取得出来る子育て支援制度の確立と、なにより多くの人の意識の変革を期待します。

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