内閣府仕事と生活の調和推進室
Office for Work-Life Balance, Cabinet Office, Government Of Japan
■□ カエル! ジャパン通信 Vol.7 □■
今回のテーマは、『改正労働基準法』です。
仕事と生活の調和を促進するためには、労働者が健康を保持しながら労働以外の生活のための時間を確保して働くことができるよう労働環境を整備することが重要な課題となります。
このため、長時間労働を抑制することを目的として労働基準法が改正され4月1日より施行されました。
そこで、今月は長時間労働が常態化している背景を見ながら、その改正内容をご紹介します。
≪目次≫
改正労働基準法について
総務省 2007年 「就業構造基本調査」 他
睡眠とワーク・ライフ・バランス
★≪有識者インタビュー Vol.5≫
「長時間労働の実態と課題」
みなさんは、ちゃんと休暇を取れていますか。長時間労働が常態化することによって、休暇も取れず、ワーク・ライフ・バランスが取れていない働く人が増えています。
今回は、長時間労働が生じる理由と今後の課題についてお話を伺いました。
●日本人の労働時間はダントツに長く、休暇も取らない
「働き過ぎが良いことだと言う人はほとんどいないでしょう。しかし日本では残業がない会社というのはほとんどありません。長時間労働に対する考え方はそれぞれの企業、個人によって違うように、残業時間を減らすための万能薬はないと思います。ただ、日本ではこの残業によって雇用が維持されているという点も認めざるを得ないでしょう。」
「国際労働機関(ILO)の調査によると、「働き過ぎ」の目安である週50時間以上働いている雇用者が占める割合は、主要先進国の中で、2000年の時点で日本が最も多いことがわかりました。オランダでは週に50時間以上働く人は70人に1人なのに対し、日本では4人に1人を上回ります。これに加えて、サービス残業をしている労働者も非常に多いです。先進国間で差はありますが、それでも日本の労働時間はダントツに長いです。」
「フランスでは、フルタイム労働者の法定労働時間が35時間となっています。日本では、35時間では「パートタイマー」となることが多いです。」
「欧州の国では、「残業ゼロ」と「休暇取得100%」を前提に、要員を組んでいます。もちろん欧州ではかなり前からこの2つが制度化、習慣化されているということもありますが、制度や法律だけでなく優れた企業の人事労務施策があることも事実です。日本では長時間労働の問題として、休暇を取らないことも指摘されています。忙しければ仕事を休めないのは当然で、長時間労働をしている人ほど、休暇取得率が低いという相関関係があります。」
●労働時間を削減するために企業ができること
「制度や政策だけを作るのではなく、例えば、優先順位の低い仕事は、全力投球しないことから始めてはいかがでしょうか。小さなことを洗い出し、中長期的に企業や家庭から働き方を見直していく必要があると思います。」
「経済発展は必要ですが、発展の仕方を考え直す余地があると思います。働き方を変えないと今後、女性の社会進出がより難しくなり、少子化がより進み、そして過労死する人ももっと増えると思います。中長期的に長時間労働だけでなく、社会全体の在り方を見つめなおす必要もあるのではないでしょうか。」
★≪取組・施策紹介 Vol.2≫
今回の改正に伴い、就業規則の改正や労使協定の締結などが必要となります。
皆様の会社でも所要の整備がきちんとできているかご確認下さい。
以上から50%以上に引き上げられました(改正後の法第37条1項)。
(改正前)25%以上 → (改正後)50%以上
*1.深夜労働との関係
深夜(22:00~5:00)の時間帯に1か月60時間を超える時間外
労働を行わせた場合の割増賃金率
⇒深夜割増25%以上+時間外割増50%以上=75%以上
*2.法定休日労働との関係
時間外労働時間の算定には法定休日の労働時間は含まれません。
法定休日労働の割増賃金率は従前通りの35%以上です。
*3.中小企業については、当分の間、適用が猶予されます。(改正後の法第138条)
(改正後の法第37条3項、施行規則第19条の2)
*1.代替休暇制度の導入に当たっては、労使協定を結ぶことが必要です。
▽労使協定で定める事項
i.代替休暇の時間数の具体的な算定方法
ii.代替休暇の単位(一日又は半日単位)
iii.代替休暇を与えることができる期間(1か月60時間を超える時間外労働が発生した月の末日の翌日から2か月以内)
iv.代替休暇の取得日の決定方法、割増賃金の支払日
*2.代替休暇とすることができるのは割増賃金の引上げ分のみです。改正前の割増部分(25%以上)については休暇に代替することはできません。
*3.労使協定締結は、事業場において代替休暇制度を設けることを可能にするものであり、個々の労働者に対して代替休暇の取得を義務付けるものではありません。
● 限度時間を超える時間外労働の割増賃金率引上げについての努力義務規定等の新設
(1か月の時間外労働が60時間を超えた場合は50%)
・1年間の限度時間360時間を超えた場合の割増賃金率 35%
● 年次有給休暇の時間単位の付与に関する規定の新設
改正前は、年次有給休暇は日単位で取得することとされていました(法第39条1~3項)。
★ この度の改正により、労使協定を締結することで、年に5日を限度として時間単位で年次有給休暇を取得することができるようになりました(改正後の法第39条4項)。
*改正労働基準法のあらまし
- 改正に対応した就業規則や労使協定の規定例
- 労働基準法新旧対照表
- 労働基準法施行規則新旧対照表
- 労働基準法第36条第1項の協定で定める労働時間の延長の限度等に関する基準新旧対照表
- 労働基準法の一部を改正する法律の施行について(通達。今回の改正について逐条で解説しています。)
- 以上についても「あらまし」に掲載しています。参考にして下さい。
以上については、厚生労働省の「労働基準法が改正されます」で見ることができます。是非ご覧下さい。
http://www.mhlw.go.jp/topics/2008/12/tp1216-1.html
※厚生労働省労働基準局監督課長が4月1日に施行された改正労働基準法について解説をしています。
YouTube『厚生労働省動画チャンネル「労働基準法が改正されます(平成22年4月1日施行)」』をご覧ください。
http://www.youtube.com/watch?v=5wnz_VQQlCA
★≪統計・調査トピックス≫
今回のテーマである「労働時間」に関連した調査を紹介します。
●雇用者の約1割は週に60時間以上働いている
規則的に仕事をしている雇用者の11.8%は一週間に60時間以上働いています。男女別に見ると、男性では、週60時間以上働いている雇用者が16.8%を占める一方、女性では4.8%となっており、男女で大きな開きが見られます。
●30~44歳の男性雇用者では2割以上が週に60時間以上働く
雇用者の週間就業時間を年齢別に見ると、男性では、30~44歳で2割以上の人が週に60時間以上働いていることが分かります。一方、女性では、週に60時間以上働いている人の割合が最も高いのは20~24歳の7.5%で、30~59歳では3.4~4.5%となっています。
*調査対象:全国約45万世帯の15歳以上の世帯員 約100万人
調査方法:訪問留置法
●週に60時間以上働く有職者の約4割が仕事の時間を減らしたいと考えている
仕事の時間について、『減らしたい』(「減らしたい」+「どちらかといえば減らしたい」)とした有職者の割合は22.7%となっています。男女・年齢別に見ると、男性では30、40代で3割を超える有職者が「減らしたい」と答えています(30代 34.7%、40代 34.9%)。一方、女性では20代で最も割合が高く30.4%となっています。
また、週当たりの労働時間別に見ると、労働時間が長くなるほど、「減らしたい」の割合は高くなる傾向にあり、週60時間以上働いている有職者では、39.8%の人が「減らしたい」と答えています。
●家事・育児・介護を担う場合に所定外労働を免除すべきと考える人は85.4%
残業や休日出勤をしないですむよう企業が対応すべき場合について聞いたところ、『そう思う』(「そう思う」+「どちらかといえばそう思う」)とした人の割合は、「家事・育児・介護を担う場合」で85.4%と最も高く、「自己啓発のため学校へ通学する場合」(54.8%)、「ボランティアや町内会活動などの社会活動を行う場合」(49.7%)が5割前後で続いています。
*調査対象:20歳以上の男女 4,000人
調査方法:訪問面接法
有効回答回収率:57.9%(2,315人)
http://www.jil.go.jp/institute/research/2008/041.htm
●超過労働時間の平均は31.6時間(男性36.9時間、女性20.8時間)
超過勤務手当等が支給された時間の平均は14.1時間。所定労働時間を越えて働く理由は、「そもそも所定労働時間内では片づかない仕事量だから」(61.3%)が最も高く、「自分の仕事をきちんと仕上げたいから」(38.9%)、「最近の人員削減により、人手不足だから」(33.7%)が続いています。
●今のような調子では健康を害すると思う人は57.1%
「今のような調子で仕事や生活を続けたら、健康を害するのではないか」という質問に対し、「よくそう思う」(17.8%)、「ときどきそう思う」(39.3%)と回答した人の合計は全体の約6割という結果になりました。原因については、「仕事上または職場での心労から」(65.1%)が最も高く、次に「仕事による過労から」(52.1%)が続いており、仕事が健康に与える影響について、多くの人が問題意識を持っていることがわかりました。
*調査対象:20歳~59歳の「雇用者」 3,000人
調査方法:郵送質問紙法
有効回答回収率:85.2%(2,557人)
http://www.jil.go.jp/institute/reports/2005/documents/022.pdf [PDF形式:6000.64KB]
★≪コラム≫
睡眠とワーク・ライフ・バランス
長時間働くことによって、仕事以外の家事や育児、趣味等、プライベートにかける時間が少なくなりがちです。そうした時、睡眠時間を削って、時間を作り出していませんか。
日本人の睡眠時間は7.25時間(2006年総務省調べ)と世界の平均睡眠時間よりも短いとされています。日本人の睡眠時間が年々短くなっている背景には、社会の24時間化、夜勤を必要とする職種の増加、厳しい競争環境におけるストレスの増加や雇用不安の深刻さが挙げられます。男女ともに睡眠時間は減少傾向にありますが、特に家事や育児も行いながら働く女性の睡眠時間は著しく短くなっており、平均6時間とされています。
睡眠を十分に取っていないと、疲れが取れず、生活リズムが崩れ、体調不良に陥る原因にもなります。ストレスを感じ続けることは、不眠になる一つの要因でもあります。不眠は、うつ病の兆候の一つとされており、厚生労働省の調査では一生のうち、うつ病に罹る人は15人に1人とも言われています。
うつ病などの重大な疾患には至らないまでも、勤労者の生産性に大きな影響を与えるものとして、近年「プレゼンティーイズム」という概念が注目されています。これは、「体調が優れないのに出勤し、頭や体が普段より働かず、生産性が低下してしまう現象」のことで、アメリカではこの「プレゼンティーイズム」により年間1,500億ドルの損失があると言われています。睡眠不足は個人の健康だけでなく、企業活動にも大きな影響を与えることがわかります。
睡眠には身体の疲労を回復し、脳や身体機能等、体内バランスを整えストレスを解消する働きがあります。人間の体は自律神経系、内分泌系、免疫系の3系統のバランスを保つことで健康を維持していると言われていますが、睡眠はこのバランス保持に重要な働きを担っています。
4月は就職や転勤、転居などに伴い、生活環境が大きく変わる時期でもあります。多忙だった4月の疲れを癒すためにも、ワーク・ライフ・バランスの実践に留意して、限られた時間を有効に使い、十分な睡眠を確保することが重要です。心身ともに自己管理をして、高いモチベーションと生産性を保ちましょう。
★≪最新情報≫
「仕事と生活の調和推進プロジェクト」【厚生労働省】
http://www.mhlw.go.jp/bunya/roudoukijun/sigoto-seikatu/pdf/20100331paper.pdf [PDF形式:2283.52KB]
平成21 年の働く女性の実態とその特徴を明らかにするとともに、平成19年秋以降の今回の景気後退下での女性労働者の状況を分析しています。
http://www.mhlw.go.jp/bunya/koyoukintou/josei-jitsujo/dl/09a.pdf
企業の短時間勤務制度に係る事例を収集し、業種による特徴に留意しつつ、詳細に分析し、短時間勤務制度に伴う課題の解決方法を提示しています。
株式会社INAX(平成20年度愛知県ファミリー・フレンドリー企業表彰)の事例を紹介。育児休業を取得した男性社員の経験談を掲載しています。
http://www.papa-wlb.jp/example/index.html
東京会場
開催日時:2010年5月8日(土)10:30~12:30(午前の部) 14:00~16:00(午後の部)
開催場所:女性と仕事の未来館
開催日時:2010年5月11日(火)14:00~16:00
開催場所:アクロス福岡
中小企業における労働時間等の設定の改善を通じた職場意識の改善を促進するため、職場意識改善に係る2カ年の計画を作成し、この計画に基づく措置を効果的に実施した中小企業の事業主に助成金を支給するものです。
申請期間:2010年4月1日~7月末日
http://www.mhlw.go.jp/general/seido/roudou/jikan/syokubaisiki.html
4月16日(金)に開催された「第13回仕事と生活の調和連携推進・評価部会、仕事と生活の調和関係省庁連携推進会議 合同会議」において、「仕事と生活の調和(ワーク・ライフ・バランス)憲章」及びその「行動指針」(平成19年12月)について、仕事と生活の調和推進官民トップ会議における新合意に向けた議論が開始されました。
※「仕事と生活の調和(ワーク・ライフ・バランス)憲章」「仕事と生活の調和推進のための行動指針」
https://wwwa.cao.go.jp/wlb/charter/charter.html
内閣府では、「『ワーク』と『ライフ』の相互作用に関する調査」の委託先の選定に当たり、一般競争入札総合評価落札方式により入札を行い、ワーク・ライフ・バランスに積極的に取り組む企業を評価する仕組みを導入しました。
具体的には以下の項目を加点事由として評価項目に盛り込んでいます。
・女性雇用率
・くるみんマークの取得や一般事業主行動計画の策定の有無
・ノー残業デーの設定など労働時間縮減に向けた取組の有無
≪編集後記≫
取組のきっかけや実績、効果など、ひと工夫した事例、ユニークな事例を含めてお寄せください。
いただいた事例は、仕事と生活の調和推進室において内容を確認させていただき、今後、メールマガジン等でご紹介させていただきます。
この機会に、取組を全国に向けてアピールしてみませんか?
また、紹介時期のご指定についてはお受けできませんので、あらかじめご了承ください。
https://form.cao.go.jp/wlb/opinion-0001.html
※ご記入の際は、冒頭に必ず【取組事例応募】と明記して、ご記入ください。
https://form.cao.go.jp/wlb/opinion-0001.html
このままご返信いただけませんのでご了承ください。
https://wwwa.cao.go.jp/wlb/e-mailmagazine/tetsuzuki.html
https://wwwa.cao.go.jp/wlb/index.html
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