内閣府仕事と生活の調和推進室
Office for Work-Life Balance, Cabinet Office, Government Of Japan
■□ カエル! ジャパン通信 Vol.14 □■
今回のテーマは、「介護」です。
世界一の長寿国(高齢化社会)の日本に暮らす私たちにとって、「介護」は避けて通れない社会全体の課題です。一方で、高齢化の本格到来によって、仕事と介護の両立に不安を抱く人が増えています。
そこで今月は、介護に関わる情報をご紹介します。
≪目次≫
「改正育児・介護休業法」「両立支援レベルアップ助成金」及び「介護の日」
内閣府 2010年 「平成22年版 高齢社会白書」他
「がんばらない」の5原則
男女間賃金格差解消に向けた労使の取組支援のためのガイドライン【厚生労働省】他
★≪取組・施策紹介 Vol.8≫ 「改正育児・介護休業法」「両立支援レベルアップ助成金」及び「介護の日」
改正育児・介護休業法が、平成22年6月30日に施行されました。改正前から、事業主に対して、「介護休業(対象家族1人に対して、93日まで)」と「勤務時間短縮等の措置(介護休業とあわせて93日まで)」が義務づけられていましたが、それに加えて改正後は、労働者の仕事と介護の両立支援を目的として、「介護休暇」の創設が求められています。
「介護休暇」は、更なる仕事と介護の両立支援を目的として、「要介護状態にある対象家族」が1人であれば年に5日まで、2人以上であれば年に10日までの1日単位の休暇が取得できるというものです。
負傷、疾病又は身体上若しくは精神上の障害により、2週間以上の期間にわたり常時介護を必要とする状態にある者(配偶者、父母、子、配偶者の父母、並びに祖父母、兄弟姉妹又は孫であって従業員が同居し、かつ扶養している者)を指します。
「育児・介護休業法の改正について」(厚生労働省)
http://www.mhlw.go.jp/topics/2009/07/tp0701-1.html
育児・介護に関する事業主への助成金として、「両立支援レベルアップ助成金」があります。この助成金は、「代替要員確保コース」「休業中能力アップコース」「子育て期の短時間勤務支援コース」及び「育児・介護費用等補助コース」に分類されます。そのうち、特に介護に関連するコースの名称及び概要は、以下の通りです。
なお、平成23年度概算要求において、制度の見直しを図っているところです。
育児休業者や介護休業者の職場復帰支援のための措置を実施した事業主を対象としたコースです。「在宅講習」「職場環境適応講習」「職場復帰直前講習」又は「職場復帰直後講習」のいずれか1つ以上を実施した事業主に対して支給します。実際の支給額は、プログラムの内容や実施期間に応じて算定します。
育児や介護に関するサービスを労働者に利用させた事業主を対象としたコースです。事業主がサービス費用(全部又は一部)を補助する内容を就業規則等に記載し、そのサービスを利用した労働者に対して事業主が費用を補助した場合、又は労働者に対する育児・介護サービスに関する制度を就業規則等に記載し、事業主がサービスの提供者と契約し、実際に労働者がそのサービスを利用した場合に事業主に対して支給します。実際の支給額は、企業規模等により上限を定めています。
両立支援レベルアップ助成金の詳細については、以下をご覧ください。
「事業主の方への給付金のご案内」(厚生労働省)
http://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kodomo/shokuba_kosodate/ryouritsu01/index.html
11月11日は、厚生労働省が制定した「介護の日」です。平成20年に「多くの方に介護への理解と認識を深めてもらい、地域社会での支え合いや交流を促進するため、重点的に啓発活動を行う日」として制定されました。
当日は「介護の日」フォーラムが都内で開催されました。
「介護の日・福祉人材確保重点実施期間」(厚生労働省)
http://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/hukushi_kaigo/seikatsuhogo/kaigo-day/index.html
★≪統計・調査トピックス≫
今回のテーマである「介護」に関連した調査を紹介します。
◎「平成22年版 高齢社会白書」 内閣府 2010年
我が国の総人口は、2009年10月1日現在、1億2,751万人で、減少傾向を示しています。しかし、65歳以上の高齢者の人口は増加中で、総人口に占める割合(高齢化率)は2055年には40.5%に達し、国民の2.5人に1人が65歳以上の高齢社会が到来するとされています。中でも75歳以上の高齢者は2055年には26.5%となり、4人に1人は75歳以上となると推計されています。
15歳から64歳の生産年齢人口(いわゆる現役世代)と65歳以上の高齢者人口の比率は、1960年には11.2対1であったのに対し、2009年には2.8対1となっています。今後、高齢化率は上昇し続け、2055年には1.3対1となると推定されます。高齢者すべてが要介護者になるとは限りませんが、介護にあたる人々への負担は今後益々大きくなるとみられます。
https://www8.cao.go.jp/kourei/whitepaper/w-2010/zenbun/22pdf_index.html
◎「介護保険事業状況報告(暫定)」(平成22年7月分) 厚生労働省 2010年
介護保険制度における要介護者又は要支援者と認定された人(以下「要介護者等」)の総数は、2010年7月末現在、約494万5千人となっています。このうち、65歳以上の数について見ると、2007年7月に約431万3千人であったのに対し、2010年7月末では約479万2千人と、3年間で約48万人増加しています。
75歳以上の要介護者等の認定者が多いのが特徴です。要介護者と認定された人数の中で、高齢者の割合について見てみますと、65歳以上75歳未満の高齢者は、約65万4千人であるのに対し、75歳以上の高齢者は約413万8千人となります。高齢になるほど、要介護の認定を受ける人の割合が大きく上昇することがわかります。
http://www.mhlw.go.jp/topics/kaigo/osirase/jigyo/m10/1007.html
◎「平成21年度厚生労働省委託事業 仕事と介護の両立に関する実態把握のための調査研究」 厚生労働省 2010年
本人又は配偶者の家族に、65歳以上の要介護者がいる全国の労働者(30歳~64歳の男女)に、要介護者の続柄と性別について聞いた結果、「あなた自身の父母」は、61.3%でもっとも多く、「あなたの配偶者の父母」が17.8%、「あなた自身の祖父母」が14.7%でした。また、性別では、男性が36.2%、女性が63.8%でした。要介護者は、自分自身の父母が6割以上、配偶者の父母も合わせると8割近くが「父母」で、女性の割合が男性より多い結果となりました。
介護が原因で転職又は離職した人の勤務先を辞めたきっかけについて調べた結果、転職のきっかけとして多かったのは、「当時の勤務先では労働時間が長かったため」が46.3%、「当時の勤務先では出社・退社時刻を自分の都合で変えられなかったため」が44.9%でした。また、離職したきっかけは、「自分の意思で介護に専念しようと思ったため」が40.3%ともっとも多く、次いで「当時の勤務先では介護休業を取得できなかった/取得しづらかったため」が27.5%となっています。勤務先を辞めたきっかけは、出社・退社時間や勤務時間などの労働条件、さらに介護に専念するための介護休業の取得の可否などが関係していると思われます。
1日の所定労働時間を短縮する「短時間勤務制度」の規定がある事業所は81.6%、「深夜業(午後10時~午前5時)の制限」は79.8%、「介護を目的とした所定外労働の免除・上限を設定している」は79.3%となっています。また、今後、正社員を対象とした介護休業制度を拡充する意向のある事業所は25.1%に上っています。
http://www.mhlw.go.jp/bunya/koyoukintou/shigoto_kaigo/index.html
★≪コラム≫
「がんばらない」の5原則
高齢化が進み、介護を必要とする人の数は年々増加しています。他方、核家族といった言葉に象徴されるように、同居する家族の人数は少なくなる傾向にあり、介護する側の負担が問題となっています。
特に働きながら介護を行う人にとっての負担は大きく、介護者自身が体を壊してしまったり、ストレスからうつ病に陥ってしまったりするケースも少なくありません。
そのような中で、近年、介護を行う人に、「がんばらない」ことが訴えられています。介護は必ずしも終わりの時期が決まっているものではありません。がんばりすぎないことが長く介護を続けていく秘訣となるのです。
高齢者医療に携わる医師などで組織される「がんばらない介護生活を考える会」では、「介護者にも被介護者にも過度の負担を強いずに、肩の力を抜いて、介護と上手につきあっていくための「新しい介護の価値観」」として「がんばらない介護」を提案しています。
具体的には、「がんばらない介護生活5原則」として下記の5つのポイントを挙げています。
1.1人で介護を背負い込まない
2.積極的にサービスを利用する
3.現状を認識し、受容する
4.介護される側の気持ちを理解し、尊重する
5.出来るだけ楽な介護のやり方を考える
現在介護を行っている人も、また将来行う人も、介護休暇などの制度を上手に活用しながら仕事と介護を両立させ、健康で充実した生活が送れるといいですね。また、従業員を管理される立場にある方は、介護休業を取得しやすい風土づくりに加えて、介護休業からの復職支援や介護サービスの提供など、介護をする従業員が働き続けやすい労働環境の整備を心掛けましょう。
★≪最新情報≫
◇男女間賃金格差解消に向けた労使の取組支援のためのガイドライン【厚生労働省】
賃金や雇用管理の在り方を見直すための視点や、性別を問わず社員の活躍を促すための実態調査票といった支援ツールを盛り込んでいます。
◇「家族の日」・「家族の週間」にちなんだ各社の取り組み【(社)日本経済団体連合会】
各社の取り組みについて、経団連会長・副会長会社、評議員議長・副議長会社、少子化対策委員会委員会社等に対しアンケート調査を実施した結果が掲載されています。
http://www.keidanren.or.jp/japanese/policy/2010/104.pdf [PDF形式:2273.28KB]
◇第3回 働く女性エンパワメント支援セミナー「若い女性のキャリア意識を学ぶ」【女性と仕事の未来館】
開催日時:2011年1月21日(金)10:30~17:00
開催場所:女性と仕事の未来館 4階
対象:女性関連施設職員及び働く女性支援に携わる方
◇2010年度日本女子大学現代女性キャリア研究所 公開講演会・シンポジウム【現代女性キャリア研究所】
開催日時:2010年12月4日(土)13:00~16:00
開催場所:日本女子大学新泉山館(目白キャンパス)
◇短時間正社員制度 セミナー 第4クール【厚生労働省】
セミナーの種類:制度導入セミナー、運用改善セミナー
開催日時:2010年12月から2011年1月にかけそれぞれ3日間
開催場所:三菱UFJリサーチ&コンサルティング(株)品川本社
◇雇用システムと人事戦略に関する研究【(独)労働政策研究・研修機構】
「企業のコーポレートガバナンス・CSRと人事戦略に関する調査」(2005)と「雇用システムと人事戦略に関する調査」(2007)を接続し、2次分析を行っています。
http://www.jil.go.jp/institute/chosa/2010/10-077.htm
◇平成22年度 産業保健調査研究発表会【(独)労働者健康福祉機構】
ワーク・ライフ・バランスと過重労働についての発表内容が掲載されています。
◇第3回子育て応援フォーラムの動画をアップしました【にっぽん子育て応援団】
全国から集めた期待や課題を発表し、よりよいシステム作りに向けてディスカッションを行いました。
http://nippon-kosodate.jp/topics/topics.cgi?ID=00112
取組のきっかけや実績、効果など、ひと工夫した事例、ユニークな事例を含めてお寄せください。
いただいた事例は、仕事と生活の調和推進室において内容を確認させていただき、今後、メールマガジン等でご紹介させていただきます。
この機会に、取組を全国に向けてアピールしてみませんか?
また、紹介時期のご指定についてはお受けできませんので、あらかじめご了承ください。
https://form.cao.go.jp/wlb/opinion-0001.html
※ご記入の際は、冒頭に必ず【取組事例応募】と明記してください。
https://form.cao.go.jp/wlb/opinion-0001.html
このままご返信いただけませんのでご了承ください。
https://wwwa.cao.go.jp/wlb/e-mailmagazine/tetsuzuki.html
内閣府仕事と生活の調和推進室ホームページはこちらから
https://wwwa.cao.go.jp/wlb/index.html
≪編集後記≫
昨年の3月に国連で開催された婦人の地位委員会のテーマはケア・ワークでした。様々なディスカションやワークショップが開催されましたが、本格的な少子高齢社会を迎え、人口構造の激変を間近にする日本にとっては殊に重要な課題です。日本の民間団体が主催したワークショップでも熱心な討議がされました。思えば、人間は生まれてきてから、育てられ、時には病気になったり障害を負ったり、また、自分も大人になって生み育て、ケアをする立場になり、そして、老いて介護を受け、生涯を終えるわけです。常にケアが必要な生き物だという当然の事実に、私たち一人ひとりも社会も直面していることを、改めて感じます。(KT)
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