内閣府仕事と生活の調和推進室
Office for Work-Life Balance, Cabinet Office, Government Of Japan
■□ カエル! ジャパン通信 Vol.17 □■
今回のテーマは、『メンタルヘルス』です。
日々の生活を豊かに送るために、心身の健康、即ちメンタルヘルスに配慮することは大切なことです。一方で、過重労働や人間関係によるストレスなど、私たちの周りには、メンタルヘルスを脅かし得る要因がたくさん存在していますが、ワーク・ライフ・バランスの取組はメンタルヘルスの維持・向上にも寄与することが知られています。
そこで、今月はメンタルヘルスに関する予防的取組や、関連する統計・調査等を紹介します。
≪目次≫
「職場におけるメンタルヘルスに関する予防的取組」
身体の声を聞く
企業参加の子育て支援事業全国会議【内閣府】他
★≪取組・施策紹介 Vol.10≫ 「職場におけるメンタルヘルスに関する予防的取組」(厚生労働省)
従業員のワーク・ライフ・バランスが充実し、いきいきと働くことができる職場が理想ですが、慢性的に過剰な仕事量があるような職場では、従業員のメンタルヘルスに不調をきたす場合があります。
ワーク・ライフ・バランスの取組はメンタルヘルス対策とも重なる部分が多いことから、今回は、メンタルヘルスに関する予防的取組を紹介します。
●メンタルヘルスにおける予防の3段階
メンタルヘルスの予防と一口に言っても、その目的から3つの段階があることが知られています。職場における予防活動について、段階を追って以下にまとめました。ワーク・ライフ・バランスの視点は予防における全ての段階で重要なポイントであると言えます。
◇一次予防
メンタルヘルス疾患を未然に防ぎ、健康増進を図ることを目的とした予防活動。メンタルヘルスの文脈では、「積極的な健康の保持増進(ヘルス・プロモーション)」、「仕事における健康障害の防止(ヘルス・プロテクション)」などの言葉が使われることもあり、これらはいずれも一次予防に含まれる。
◇二次予防
メンタルヘルス不調の早期発見と対処。
◇三次予防
メンタルヘルス不調及び疾患の治療と職場復帰、再発防止。
●職場におけるメンタルヘルス対策
職場におけるメンタルヘルス対策については、昨年6月に閣議決定された「新成長戦略」において、2020年までの目標として「メンタルヘルスに関する措置を受けられる職場の割合100%」が掲げられるなど、対策の重要度が高まっています。
そのような中、職場においては、上述の一次予防から三次予防までを的確に実施するため、以下のような取組を行うことが求められています。
◇衛生委員会等での活動を充実させる
職場の衛生委員会等において、メンタルヘルスに関する状況(例えば、休職者の有無、人数、休業日数など)を把握したり、「労働者の心の健康の保持増進のための指針(以下、「指針」という)」に基づく「心の健康づくり計画」を策定したりすることなど。
◇事業場内の体制を整備する
産業医、衛生管理者、衛生推進者及び安全衛生推進者などの専門スタッフを確保することや、指針に基づき、メンタルヘルスケア推進の実務を担当する「事業場内メンタルヘルス推進担当者」を選任することなど。
◇教育や研修を実施する
一般従業員や管理監督者に対して、メンタルヘルスケアに関する教育や研修を実施することなど。特にメンタルヘルスの予防においては管理監督者の果たす役割が大きいと言われ、十分な教育・研修が求められる。
◇職場環境等を把握し改善する
職場のストレスの要因や程度をストレスに関する調査票などを用いて把握し、仕事の量や質、作業レイアウト、勤務形態等を改善することなど。具体的な進め方は指針に示されている。
◇メンタルヘルス不調者を早期に発見し適切な対応を行う
従業員が仕事に関するストレスやメンタルヘルスの不調を相談できる体制を整備することや、長時間労働者に対する面接指導を実施すること、メンタルヘルス不調者を把握した場合には産業医や専門機関につなぐことなど。
◇職場復帰の支援を行う
職場における標準的な手続きを定めた職場復帰プログラムを策定して労働者に周知し、これに基づく取組を行うこと。職場復帰支援に関する相談などを受け付けているメンタルヘルス対策支援センターなどを活用することができる。
●長時間労働者に対する指導
長時間労働により疲労が蓄積すると健康障害発症のリスクが高まります。まずは長時間労働そのものを削減することが求められますが、やむを得ず長時間労働が行われた場合には、適切な対処が必要になります。
このような考え方から、平成18年4月から、長時間労働者に対する医師による面接指導が義務付けられています(一部の事業所では、平成20年4月から)。この取組について、以下にまとめました。
◇対象者
月100時間超の時間外・休日労働を行い、事業者に対して面接指導の申出を行った労働者。
また、事業者の努力義務として、月80時間超の時間外・休日労働を行い事業者に対して面接指導の申出を行った労働者や事業場で定めた基準に該当する労働者を対象とすることが求められます。
- 労働者から事業者へ申し出を行う
- 事業者から労働者に対する面接指導実施の通知を行う
- 医師による面接指導を実施する
- 勤務状況や疲労の蓄積状況等の把握
- メンタルヘルス状況のチェック
- 把握結果に基づく必要な指導
- 事業者が面接指導の結果の記録を作成する(5年間保存)
- 事業者が医師からの意見聴取を行う
- 事業者による事後措置を実施する
- 就業場所の変更、作業の転換
- 労働時間の短縮、深夜業の回数の減少
- 衛生委員会等への報告 など
★≪統計・調査トピックス≫
今回のテーマである「メンタルヘルス」に関連した調査を紹介します。
◎「平成19年労働者健康状況調査」厚生労働省 2008年
自分の仕事や職業生活に関して強い不安、悩み、ストレスが「ある」とする労働者の割合は、58.0%でした。具体的なストレスの内容(3つ以内の複数回答)としては、「職場の人間関係の問題」(38.4%)が高く、次いで「仕事の質の問題」(34.8%)、「仕事の量の問題」(30.6%)の順となりました。就業形態別にみると、一般社員は「職場の人間関係の問題」(37.7%)、契約社員は「雇用の安定性の問題」(36.2%)、パートタイム労働者は「職場の人間関係の問題」(45.8%)が最も高くなりました。
心の健康対策(メンタルヘルスケア)に取り組んでいる事業所は全体の33.6%でした。取組内容のうち、最も多く挙げられたのは「労働者からの相談対応の体制整備」で、何らかの取り組みを行っている事業所のうち59.3%が取り組んでいました。次いで「労働者への教育研修・情報提供」(49.3%)、「管理監督者への教育研修・情報提供」(34.5%)という結果となりました。
心の健康対策に取り組んでいる事業所の67.0%が心の健康対策の効果を「あると思う」と回答していました。一方で「あると思わない」と回答した事業所は1.5%でした。メンタルヘルスケアのための専門スタッフがいる事業所に限ると、78.2%が効果が「あると思う」と回答していました。
心の健康対策に取り組んでいない事業所にその理由を聞いたところ、44.3%の事業所が「専門スタッフがいない」と回答しました。次いで「取り組み方が分からない」が多く、42.2%から挙げられました。一方で、「経費がかかる」と回答した事業所は少なく、12.1%に留まりました。
* 調査対象:(事業所調査)常用労働者を10人以上雇用する全国の民営事業所から抽出した約14,000事業所
(労働者調査)上記の事業所に雇用されている労働者から抽出した約18,000人
http://www.mhlw.go.jp/toukei/itiran/roudou/saigai/anzen/kenkou07/index.html
◎「第5回 『メンタルヘルスの取り組み』に関する企業アンケート調査結果」(公財)日本生産性本部 2010年
マザーズなどの新興市場を除く上場企業のうち、44.6%が最近3年間の「心の病」が「増加傾向」、45.4%が「横ばい」と回答しました。「増加傾向」と回答した割合は過去5年間の調査の中で最も少なく、また「増加傾向」が「横ばい」を下回ったのは今回が初めてです。
新興市場を除く上場企業において、48.6%が「効果が出ている(「十分効果が出ている」「まずまず効果が出ている」)」と回答しました。一方で「効果が出ていない(「全く効果が出ていない」「あまり効果が出ていない」)」と回答した企業は17.1%に留まりました。
新興市場を含む上場企業の70.0%がメンタルヘルスの施策として「管理職向けの教育」を実施していることが分かりました。次いで「長時間労働者への面接相談」(63.8%)が多く挙げられました。
新興市場を除く上場企業の58.2%が、「心の病」の最も多い年齢層を30代と回答しました。次いで40代(22.3%)、10~20代(13.9%)という結果となりました。この結果は、過去5年間の調査と同様の傾向を示しています。
*調査対象 :全国の上場企業3,452社(うちマザーズなどの新興市場1,209社)
調査方法 :郵送調査
有効回答数(率) :有効回答数 323社(うち新興市場72社)(9.4%)
http://www.js-mental.org/images/03/20100806.pdf [PDF形式:283KB]
★≪コラム≫
身体の声を聞く
あと1カ月で1年の締めくくりである年度末を迎えることとなります。多くの会社や官公庁等で働く方々にとっては、仕事のストレスが増大する場面もあることでしょう。
人間の身体は、ストレスを受けると一旦は抵抗力が低下しますが、やがて適応する準備を整えます。皆さんも、仕事をしていて何となく忙しさに慣れてきたような気がすることがあることでしょう。
このとき、実は身体は常にストレスと闘っており、大変なエネルギーを使っています。それに気付かずストレスを放っておくと、身体のエネルギーは消耗していき、その状態がひどくなると、心身ともに疲弊した状態になってしまいます。
そして、そうした状態が続くと、ストレスに関連した心の病気や身体の病気にかかりやすくなったりするそうです。
このような身体のメカニズムを踏まえると、ストレスを乗り越えるヒントとして、忙しさに慣れているような気がしたときこそ要注意で、休息をとるなどして身体のエネルギーを貯める努力が必要だと言えます。
年度末は、仕事だけでなく、ご家庭やプライベートなどでも何かと忙しい時期でしょう。そのようなときは、無理をせず、予定に優先順位をつけてしっかりと休む時間を確保することが重要です。身体の声を聞いて無理をしないこと、こうした単純なことこそ、ストレスを軽減して仕事のモチベーションを高める近道かも知れません。
★≪最新情報≫
◇東京ワークライフバランス認定企業」【東京都】
従業員が仕事と生活を両立しながら、いきいきと働き続けられる職場の実現に向けた優れた取組を実施している企業を認定しています。
http://www.wlb-festa.metro.tokyo.jp/company/index.html
◇「町かどの機構」【(独)雇用・能力開発機構】
人材確保・人材育成の事業に積極的に取り組んでいる団体の記事が追加されました。
◇「IT導入の効果に関する日本企業の特異性と企業改革の有無-日米独韓4カ国企業の実証分析」【内閣府経済社会総合研究所】
「一人あたりの作業能率の向上」など、職場面での効果についても言及しています。
◇「平成22年度能力開発基本調査」【厚生労働省】
企業や事業所で行われている従業員への能力開発方針や取り組み状況についての調査です。
http://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/2r985200000135nu.html
◇「『団塊の世代』の就業と生活のビジョン」フォローアップ調査」【(独)労働政策研究・研修機構】
2006年に実施した「『団塊の世代』の就業・生活ビジョン調査」のフォローアップとして実施された調査結果が掲載されています。
◇企業参加の子育て支援事業全国会議【内閣府】
開催日時:2011年3月11日(金)14:30~16:50
開催場所:女性と仕事の未来館 4階ホール
https://www8.cao.go.jp/shoushi/11premium/zenkokukaigi/h22/index.html
◇平成23年度科学技術週間「労働安全衛生総合研究所一般公開」のお知らせ【(独)労働安全衛生総合研究所】
開催日時:2011年4月20日(水)13:30~16:30
開催場所:労働安全衛生総合研究所(清瀬研究施設)
取組のきっかけや実績、効果など、ひと工夫した事例、ユニークな事例を含めてお寄せください。
いただいた事例は、仕事と生活の調和推進室において内容を確認させていただき、今後、メールマガジン等でご紹介させていただきます。
この機会に、取組を全国に向けてアピールしてみませんか?
また、紹介時期のご指定についてはお受けできませんので、あらかじめご了承ください。
https://form.cao.go.jp/wlb/opinion-0001.html
※ご記入の際は、冒頭に必ず【取組事例応募】と明記してください。
https://form.cao.go.jp/wlb/opinion-0001.html
このままご返信いただけませんのでご了承ください。
https://wwwa.cao.go.jp/wlb/e-mailmagazine/tetsuzuki.html
内閣府仕事と生活の調和推進室ホームページはこちらから
https://wwwa.cao.go.jp/wlb/index.html
≪編集後記≫
今回御紹介した企業アンケートによると、「心の病」が最も多い世代は、私が属する30代。ついつい何でも「以前大丈夫だったから今も大丈夫なはずだ」と思いがちですが、冷静に考えると、体力的にも20代の頃のように連日深夜まで働いたり(それも問題!)できなくなったり、仕事の責任も少しは重くなったように思います。3歳の娘ほどではないにしても、我々成人も少しずつではありますが、(そして少しずつだからこそなかなか自分で気付きませんが)心も体も変化しているんですよね。まずは、「自分に限っては、心の病なんて関係ない!」と思わないことが、メンタルヘルス対応の第一歩なのかな、と思いました。(KM)
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