第22号 平成23年7月29日 配信

内閣府仕事と生活の調和推進室
Office for Work-Life Balance, Cabinet Office, Government Of Japan


発行: 内閣府 仕事と生活の調和推進室

■□ カエル! ジャパン通信 Vol.22 □■

2011年7月29日 発行

  わが国において、人口減少、少子高齢化という課題が掲げられて久しいですが、今回は「少子化対策におけるワーク・ライフ・バランスへの期待」という題で、女性の就業課題にも絡めてお届けします。

≪目次≫


★≪有識者インタビュー≫
  • 川口 章氏(同志社大学政策学部政策学科 教授)
★≪統計・調査トピックス≫
  • 少子化社会に関する国際意識調査【内閣府】(2011年3月) 他
★≪最新情報≫
  • お知らせ
    • 【観光庁】「ポジティブ・オフ」運動を開始します! 他
  • 地方公共団体等の動き
    • 【千葉県】次世代のためのワーク・ライフ・バランスセミナーが開催されます 他
  • イベント
    • ワークライフバランスセミナー【21世紀職業財団(三重事務所)】 他

★≪有識者インタビュー≫

  • 川口 章氏(同志社大学政策学部政策学科 教授)
    今回は、同志社大学・川口教授に「ワーク・ライフ・バランス社会」の実現に向けて必要な視点、取り組み等を中心にお話を伺いました。川口教授は、ワーク・ライフ・バランスの取組の中でも特に、仕事と家庭の両立と企業業績の関係等について研究をされています。
    • 「ワーク・ライフ・バランス社会」は今後の日本に重要な視点
      多様な生き方、多様な働き方ができる社会となるための必要条件(十分条件ではない)だと思います。少子化社会を迎え、今後の日本は、女性、外国人、高齢者が重要な労働力となることは間違いないため、ワーク・ライフ・バランス(以下、WLB)を推進し、多様な人材の活躍を進めることは、非常に重要な視点と言えます。
    • 視点1:企業のコスト意識を変える
      現在の学生は、「共働き」志向が過半数でありWLBへの関心も持っていますが、就職すると仕事に比重を置いた生活を送る傾向があるようです。
      企業には、長時間労働をたたえる、また男性がWLBを利用しにくい職場風土が依然として根強くあり、WLBが進みにくい一つの原因となっています。これについては、例えば残業割増率を50%にするなど、企業におけるコスト意識を変えるための取り組みを行うことが、必要ではないでしょうか。
    • 視点2:WLBで女性の活躍を推進
      企業側への働きかけの一つとして、例えばWLB推進企業(子育てサポート企業等)であること等を入札必要条件にする等の情報公開、さらに、「実際の働きやすさ」が分かる情報提示も重要ではないかと思います。
      WLB施策を進めるだけでは企業に活力は生まれません。職場における平等な人事考課による、従業員間の適度な競争(昇進)意欲を促す環境(風土)いったことが併せて重要となってくると考えています。
      今後、国際競争において、企業価値の一つとして、女性管理職の割合など、「実際の働きやすさ」が分かる情報の提示を行っていくことも、重要ではないかと思います。
      また、女性施策については、企業が中途採用をもっと増やすことなどにより、一旦妊娠や出産で退職した女性が正社員として再就職したり、パートをはじめとする非正規労働者と正社員との賃金や社会保険の格差に対する取り組みが進むことが期待されます。
    • 視点3:国や地方公共団体の取組
      国や地方公共団体においては、「保育所の充実」に取り組むことが何より大切だと思います。
      企業側への働きかけの一つとして、例えばWLB推進企業(子育てサポート企業等)であること等を入札必要条件にする等、情報公開していくことも必要だと考えています。
      さらに、「実際の働きやすさ」が分かる情報提示も重要ではないかと思います。今後海外企業との競争が激しくなる中で、日本の企業も、女性の活躍なしにはこれ以上の発展は見込めません。女性管理職の割合が企業価値のひとつであることは、海外勤務経験がある経営層であれば分かりますし、外国人株主から経営改革を求められることもあるでしょう。
    • 最後に、男性の育児休業取得についても、育児休業取得率等、目標をつくりながら、水準をあげていくということが大事です。
      今後の日本の社会の発展のためには欠かせない女性の労働力の創出のためにも、WLB社会の実現が今、必要なのです。
      日本でも、合計特殊出生率が平成18年以降緩やかに上昇していますが、先進国では女性の就業率が高い国で出生率が高く、女性が働きやすくなると、出生率も上がる傾向にあります。
      女性はもとより、すべての労働者が働きやすい社会こそが、WLBの実現した社会なのです。

★≪統計・調査トピックス≫

  今回のテーマに関連した調査についてご紹介します。


  • 少子化社会に関する国際意識調査報告書【内閣府】(2011年3月)

  平成17年の第1回調査から5年経過し、日本及び諸外国(韓、米、仏、スウェーデン)の国民の意識と変化を調査・分析し、子ども・子育て施策の推進に資するものです。各国とも1,000サンプル、調査員による個別面接方式で行いました。

  今回の主な調査結果は以下のとおりです。

  • ほしい子どもの人数は、各国とも平均2.2~2.4人。「3人」と答えた人は、日本が最も多く、「2人」と合わせて8割超
  • 日本、韓国、アメリカで希望する人数まで子どもを増やさない理由は「子育てや教育にお金がかかりすぎるから」が多い
  • 日本では、自国を子育てしやすい国だと思う人が、前回調査より4.9%増、5割超。スウェーデンは各国中最も高く、97.1%
  • 「仕事」「家庭生活」「個人の生活等」の優先度では、日本男性は「仕事と家庭生活をともに優先」が35.4%で最も高いが、現実は「仕事を優先」が45.1%で最も高く、希望と現実に格差がみられる

  - https://www8.cao.go.jp/shoushi/cyousa/cyousa22/kokusai/mokuji-pdf.html


  • 平成23年版子ども・子育て白書【内閣府】(2011年6月)

  子ども・子育て支援策の現状と課題のほか、結婚、出産、子育てをめぐる最近の状況を紹介。たとえば、

  • 希望する子ども数には各国(日本、韓国、アメリカ、フランス、スウェーデン)で大きな差はないが、今より子どもを増やさない、増やせないと考える人が日本では約半数。その理由には、養育費や教育費の負担感、特に女性は仕事と子育ての両立環境がないことが多い。
  • 20代、30代の男性で、非典型雇用として働く人の有配偶率は、正社員の約半分。年収300万円を境として既婚率に大きな差。

  など。

  また、「男性も女性も仕事と生活が調和する社会へ(ワーク・ライフ・バランスの実現)」に関連する施策をはじめ、平成22年度の子ども・子育て支援策の具体的実施状況について記載しています。さらに、コラムではワーク・ライフ・バランスに関する調査結果や、先進的取組事例を紹介しています。

  -https://www8.cao.go.jp/shoushi/whitepaper/w-2011/23pdfhonpen/23honpen.html


  • 「平成22年度雇用均等基本調査」結果概要【厚生労働省】(2011年7月)

  男女の雇用均等問題に係る雇用管理の実態を把握することを目的として実施した「平成22年度雇用均等基本調査」の結果が公表されました。

  企業調査では、

  • ポジティブ・アクションの取り組み企業割合は28.1%(平成21年度30.2%)
  • 女性の活躍を推進する上での問題点があるとした企業割合が69.4%に低下(平成21年度84.7%)

  事業所調査では、

  • 女性の育児休業取得率83.7%(平成21年度85.6%)、男性の育児休業取得率は1.38%(平成21年度1.72%)
  • 女性の育児休業の取得期間の長期化

等の結果が得られています。

  -http://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/2r9852000001ihm5.html

★≪最新情報≫ (原則として、発行月の前月以降に更新された内容を掲載しています。)

  • お知らせ
    • 【観光庁】「ポジティブ・オフ」運動を開始します!
      ポジティブ・オフ運動とは、休暇を取得して外出や旅行を楽しむことを積極的に促進し、休暇(オフ)を前向き(ポジティブ)にとらえて楽しもう、という運動です。現在、内閣府、厚生労働省及び経済産業省が共同提唱するかたちで、休暇を楽しむライフスタイルやワーク・ライフ・バランスの実現などの「ライフスタイル・イノベーション」を目指す取組が進められており、約50の企業・団体がこれに賛同しています。
      -http://www.mlit.go.jp/kankocho/positive-off/
    • 【厚生労働省】夏期の電力需給対策に伴う企業の就業時間等の変更に対応した休日保育特別事業等の実施について
      夏期の電力需給対策の実施に伴い、企業等では早朝・夜間及び休日に就業時間等を変更するなどの取組を実施しているため、休日保育などへのニーズが増加しています。このような状況に対応するため、厚生労働省から市町村に対して、利用者ニーズを踏まえた休日保育等を実施するよう要請され、その実施について新たに必要となる経費については、安心こども基金を活用して財政支援を行うこととされています。
  • 地方公共団体の動き
    • 【千葉県】次世代のためのワーク・ライフ・バランスセミナーが開催されます
      日程 2011年6月23日(木)~11月27日(日) ※延べ10回開催
      対象 千葉県に在住、通勤、通学する方
      5つの世代別(高校生/大学生/20代~30代のこれから結婚や子育てを迎える方/30代~40代の子育て中の方/40代~50代の子育てが一段落した方)に、自身のワーク・ライフ・バランスについて考える機会を提供
      参加費 無料
      -http://www.pref.chiba.lg.jp/koyou/worklifebalance/portalsite/jisedai-seminar.html
    • 【神奈川県】ワーク・ライフ・バランス企業担当者交流会(全2回)が開催されます
      日時 第1回2011年7月22日(金) 13:00~15:30
      第2回2011年8月25日(木) 13:00~15:30
      会場 第1回川崎市産業振興会館
      第2回かながわ県民センター
      テーマ第1回「業務改善の具体的な手法について~社内での取組を浸透させるには~」
      (主催:神奈川県・川崎市)
      第2回「不規則勤務職場におけるワーク・ライフ・バランス」(主催:神奈川県)
      講師 渥美由喜氏(内閣府男女共同参画会議 専門委員)
      内容 13:00~13:45講演、13:45~15:30交流会(グループ・ディスカッションなど)
      申込先 神奈川県商工労働局労働部労政福祉課
      -http://www.pref.kanagawa.jp/cnt/f4363/
    • 【福岡県】「働く女性のハンドブック」が発行されています
      http://www.pref.fukuoka.lg.jp/f13/hatarakujosei-handbook.html
    • 【佐賀県】連続休暇でゆとりの夏を過ごしましょう
    • 【大分県】おおいた子育て応援団(しごと子育てサポート企業)ステップアップ事業実施企業が募集されています
      募集期間:2011年5月12日(木)~9月30日(金)
      審査:対象企業の決定については、書類審査等を行い応募企業に対して速やかに事業実施可否の通知を行います。
      -http://www.pref.oita.jp/site/oitarodo/workkosodate-0203.html
    • 【宮崎県】「仕事と家庭の両立応援宣言」に取組む企業・事業所が紹介されています
      http://www.pref.miyazaki.lg.jp/contents/org/shoko/rodo/rosei_fukushi/sengenkigyotop_index.html
    • 【東京都足立区】ワーク・ライフ・バランス推進ハンドブックが配布されています
  • イベント
    • ワークライフバランスセミナー【21世紀職業財団(三重事務所)】
      日時 2011年8月3日(水) 14:00~16:00
      会場 三重県総合文化センター「中研修室」
      対象 人事労務担当者
      講演 「地域・企業を元気にするワーク・ライフ・バランス」
      高田短期大学准教授 杉浦礼子氏 他
      参加費 無料
    • 仕事と家庭の両立支援セミナー【21世紀職業財団(和歌山事務所)】
      日時 2011年8月1日(月)13:30~15:30
      会場 和歌山県勤労福祉会館 「プラザホープ」4階ホールB
      対象 人事労務担当者
      講演 「(仮称)ワーク・ライフ・バランスは企業の経営課題~社員の元気、企業の成長~」
      大阪市立大学大学院生活科学研究科 生活科学部准教授 服部良子氏 他
      参加費 無料
    • 両立支援セミナー【21世紀職業財団(鳥取事務所)】
      日時 2011年8月3日(水)13:30~
      会場 とりぎん文化会館 第4会議室
      対象 人事労務担当者
      講演 「ワーク・ライフ・バランスによる職場活性化で不況を突破する!!」
      内閣府男女共同参画会議専門委員 渥美由喜氏 他
      参加費 無料

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≪編集後記≫

  ワーク・ライフ・バランス(WLB)推進の仕事に携わっていながら、振り返ってみると、なかなか実践は難しい面があるなあと実感しています。

  私としては、仕事量が多ければ片付くまで仕事をし、少なければ早めに帰宅するということを心がけてはいますが、現実には場当たり的になってしまっているなあと反省しています。やはり、自分の仕事について、せめて1ヶ月単位くらいで見通しが立てられるようにしたいものです。そうすることで、周囲との共有もできるはずなのですよね。

  WLBは、制度の整備も重要ですが、それとともに働く私たちの自発的に仕事と生活のバランスを変えていこうとする意識も必要です。

  「仕事」と「生活」のバランスは、少子化にも影響を与えていると考えられていますが、各自の意識改革と制度の整備が相まってこそ、望ましい環境が実現されるのだろうと思います。(T)

発行
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TEL:03-3581-2327
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電話番号 03-5253-2111(大代表)
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