第23号 平成23年8月31日 配信

内閣府仕事と生活の調和推進室
Office for Work-Life Balance, Cabinet Office, Government Of Japan


発行: 内閣府 仕事と生活の調和推進室

■□ カエル! ジャパン通信 Vol.23 □■

2011年8月31日 発行

「ワーク・ライフ・バランスをとおしてみる、さまざまな働き方」

  今後の職業生活において、育児や介護との両立は女性だけでなく男性を含むすべての働く人にとって、外すことの出来ない課題です。今月は、ワーク・ライフ・バランスの考え方がもたらす、多様な働き方に関連して、お届けします。


≪目次≫


★≪コラム≫
「テレワークの普及とワーク・ライフ・バランス」
★≪取組・施策紹介≫
  • 女性就業支援全国展開事業の実施【女性就業支援センター】
★≪統計・調査トピックス≫
  • 「子育て後の女性の再就職に関する調査研究結果」【独立行政法人労働政策研究・研修機構】(2008年3月) 他
★≪最新情報≫
  • お知らせ
    • 【総務省、社団法人日本テレワーク協会】「節電・BCP(事業継続)対策に向けたテレワークの活用」リーフレットが公表されています(2011年6月) 他
  • 地方公共団体等の動き
    • 【大分県】雇用再生在宅就業サポート事業(IT講座)が募集されています 他

★≪コラム≫ 「テレワークの普及とワーク・ライフ・バランス」

  少子高齢化社会で、子育て世代だけでなく介護に直面する人たちの働き方の可能性のひとつとして挙げられるのが、テレワークによる在宅勤務です。

  「平成22年度テレワーク人口実態調査」(※1)によるテレワーカー(狭義テレワーカー)の定義は「ふだん収入を伴う仕事をしている人の中で、仕事でITを利用している人かつ、自分の所属する部署のある場所以外で、ITを利用できる環境において仕事を行う時間が1週間あたり8時間以上である人」とされています。この定義によるテレワーカーは就業者の16.5%で、うち、自宅(自宅兼事務所を除く)でテレワークを少しでも行っている(週1分以上)在宅でのテレワーカーは、日本にはおよそ320万人おり、これは就業者の4.9%にあたります。

  その一方で、海外での週に1日以上在宅勤務を行う就業者の割合は、米国24%、オランダ26%、フィンランド21%等となっており(※2)、日本は、まだ欧米諸国に比べ低い割合ですが、平成19年度から平成22年度まで「テレワーク環境整備税制」(※3)が導入されるなど、普及に向けた取組が進められてきました。

  ワーク・ライフ・バランスの観点から、テレワーク導入による企業側のメリットを挙げると、労働力人口が減っていく社会構造の中で、有能な社員を育児や介護などの事情で職場に出勤できないことを理由に辞めさせずに済むということがあります。また、社員側のメリットとしては、通勤の労力が少なくなるほか、家事や育児、介護との両立が容易になることがあります。そのほか、東日本大震災の時にも注目されたように、災害時に自宅勤務していることで、家族を守れるという、大きなメリットがあります。

  企業がテレワークを導入しない理由は、1.「テレワークに適した仕事がない、69.8%」、2.「情報漏洩が心配、25.5%」、3.「導入するメリットがわからない、20.3%」等となっています(※4)。

  2については、情報セキュリティ対策として、テレワークでは社外から社内サーバへアクセスするため問題となるのは当然ですが、多くの企業において情報セキュリティポリシーや情報セキュリティマネジメントシステムが確立・運用されるようになったことから、テレワークにおいて要求される情報セキュリティ水準と対策が明確になってきました。

  また、1、3についても、情報技術の進歩によって、これまでテレワークの導入に向かないと言われていた業務、例えば受発注やコールセンター業務、遠隔地との会議等も、在宅で行うことができるようになっています。

  テレワークの導入を検討する際に、社員の仕事をひとくくりに向き不向きを判断するのではなく、様々な業務への導入事例などを参考に(※5)業務内容を細かく分析することで、導入可能な業務が沢山含まれていることが見えてくるものと思われます。実際に、テレワーカーの多くが、予定外の打合せや訪問等がある会社業務と比べて在宅勤務の方が仕事の生産性や効率が上がると答えており(※6)、テレワークの導入は、企業の生産性の向上にもつながることが分かります。

  このように、テレワークの導入は、企業側の生産性向上とワーク・ライフ・バランスの両方が実現できる方策の一つであると言えます。政府の「2015年までに在宅型テレワーカーを700万人とする」という目標のもと(※7)、今後のさらなる普及が期待されます。

(※1)国土交通省「平成22年度テレワーク人口実態調査」調査結果の概要
http://www.mlit.go.jp/crd/daisei/telework/22telework_jinko_jittai_gaiyo.pdf  [PDF形式:2488.32KB] 

(※2)社団法人日本テレワーク協会「テレワークの推進のための調査研究」
http://www.soumu.go.jp/main_content/000035643.pdf  [PDF形式:2334.72KB] 

(※3)総務省「テレワーク環境整備税制のご案内」
http://www.soumu.go.jp/main_sosiki/joho_tsusin/telework/pdf/leaf.pdf  

(※4)総務省「平成22年通信利用動向調査」(企業編)の概要
http://www.soumu.go.jp/johotsusintokei/statistics/pdf/HR201000_002.pdf  [PDF形式:1116.16KB] 

(※5)総務省「平成 21 年度 テレワークモデルシステムの実証実験」概要
http://www.soumu.go.jp/main_content/000071920.pdf  [PDF形式:2672.64KB] 

(※6)総務省「平成21年度テレワーク普及促進のための調査研究」概要
http://www.soumu.go.jp/main_content/000071922.pdf  [PDF形式:3010.56KB] 

(※7)内閣府「仕事と生活の調和推進のための行動指針」(数値目標)
https://wwwa.cao.go.jp/wlb/government/20barrier_html/20html/pdf/besshi01.pdf   (PDF形式:247.2KB)別ウインドウで開きます

★≪取組・施策紹介≫

  • 女性就業支援全国展開事業の実施【女性就業支援センター】

  平成23年度に厚生労働省から委託を受け、同センターでは、女性の様々な働き方を支える事業の一環として、全国の女性関連施設等における女性就業促進支援事業が効果的・効率的に実施され全国的な女性の就業促進と健康保持増進のための支援施策の充実が図られるよう、相談対応や講師派遣など女性関連施設等に対する支援事業を実施しています。

  -http://www.joseishugyo.go.jp/

★≪統計・調査トピックス≫

  今回のテーマに関連した調査についてご紹介します。


  • 「子育て後の女性の再就職に関する調査研究結果」【独立行政法人労働政策研究・研修機構】(2008年3月)

  全国の常用労働者5人以上を雇用する10,000事業所で働く女性を対象にしたアンケート調査結果です。職業に従事していた女性が、結婚・出産・育児期に退職し、子育て後に再び就職した時の行動について、「子育て後の再就職に2つのタイミング(3年未満、7年以上が多数。末子の年齢に連動)」があることや、「最初の再就職時は労働時間や通勤時間を短く」する等の傾向がみられることから、「地域の中小企業や大企業の各事業所で子育て後の女性の良質な雇用の場が創出・確保されることが望まれる」とまとめられています。

  -http://www.jil.go.jp/press/documents/20080318.pdf  


  • 「第8回21世紀成年者縦断調査(国民の生活に関する継続調査)結果の概況」【厚生労働省】(2011年3月)

  調査対象となった男女の結婚、出産、就業等の実態及び意識の経年変化の状況を、継続的に観察しています。この中で、第8回調査(2011年3月16日公表)において、次のような結果について報告されています。

  • 第1回調査時(2002年11月20日)の独身者のうち、この7年間に結婚し結婚前に仕事をしていた女性について、結婚後の就業継続の有無をみると、仕事が正規の場合64.3%、非正規の場合44.5%が結婚後も同一就業を継続している
  • 正規の仕事をしている妻で第1子を出産し、育児休業制度を利用しやすい雰囲気がある場合、87.9%が出産後も同一就業を継続している
  • 第2回調査時(2003年11月5日)の独身者のうち、この6年間に結婚、出生を経験した女性の「職業観」については、(仕事をする理由として)「家計に余裕をもつため」が最も高い

  -http://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/judan/seinen11/index.html


  • 「平成23年版労働経済の分析」について【厚生労働省】(2011年7月)

  平成23年度のテーマは「世代ごとにみた働き方と雇用管理の動向」です。 「企業の雇用管理において、改めて、長期的・計画的な視野をもって人材育成機能を強化することが求められている」などの主な分析のポイントが提示されているほか、世代ごとにみた働き方としては、同時出生集団ごとに労働力率をみた場合、男性は世代ごとにみても大きな変化はなく、女性は有配偶者の労働力率の上昇などが労働力率の上昇をもたらしていると考えられることや、同時出生集団ごとに非正規雇用割合をみた場合、男女とも20歳台前半の非正規雇用割合が継続的に上昇しており、特に1970年代生まれ以降の世代で大きく上昇しているなどの特徴が挙げられています。

  -http://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/2r9852000001i3eg.html


  • 企業における在宅勤務体制の整備状況【キーマンズネット】(2011年7月)

  2011年5月に実施された企業のIT担当者(情報システム部門59.2%、一般部門40.8%)を対象とする、在宅勤務体制の整備状況に関するアンケート調査(有効回答数:807)について、次のような結果が得られています。

  • 「整備済み」と回答した企業は16.5%と、有事の際に一時的に利用する特別処置としての体制が多い
  • 整備予定者の約7割は「震災時の事業継続に対応するため」を理由として回答している。
  • 整備者全体では過半数である55.3%が「満足」と回答しているものの、1001名以上の大企業を見た場合、「満足」と回答した割合と「不満」と回答した割合が逆転しており、その理由として在宅勤務の適用範囲など社内体制に対する不満が目立つ

  -http://www.keyman.or.jp/at/pcmob/mobile/30004204/

★≪最新情報≫ (原則として、発行月の前月以降に更新された内容を掲載しています。)

  • お知らせ
    • 【総務省、社団法人日本テレワーク協会】
      「節電・BCP(事業継続)対策に向けたテレワークの活用」リーフレットが公表されています(2011年6月) テレワーク導入のポイントや勤務規程例など、テレワークに関する様々な情報が紹介されています。
      http://www.soumu.go.jp/main_content/000119363.pdf [PDF形式:5304.32KB] 
    • 【経済産業省】「産業構造審議会基本政策部会 中間取りまとめ-少子高齢化時代における活力ある経済社会に向けて-」が公表されています(2011年7月)
      「産業構造審議会基本政策部会」では、少子高齢化時代における活力ある経済社会を実現する観点から、経済成長と持続可能な社会保障の好循環を形成するために必要な具体的施策を検討し、中間取りまとめを行いました。報告書では、「少子高齢化を新たな需要や雇用の創出につなげるための成長戦略の推進」が必要であり、「高齢者や女性、若者が生きがいをもって働ける全員参加型社会の実現」に向けて、「多様な働き方のニーズに対応するための環境整備」のための具体的な方向性等についても記載されています。
      -http://www.meti.go.jp/press/2011/07/20110701005/20110701005.html
  • 地方公共団体の動き
    • 【大分県】雇用再生在宅就業サポート事業(IT講座)が募集されています
      大分県では、結婚・出産・子育てなどを理由に離職した女性を対象に、在宅就業を希望する女性の支援を行っています。今回は、9~11月に実施する就業に結びつくITスキル習得の講座受講者を募集しています。
      -http://www.pref.oita.jp/soshiki/14250/zaitaku-itkouza.html
    • 【松山市】テレワーク在宅就労促進事業就労奨励金及び発注奨励金事業について
      松山市では、平成19年度から「松山市テレワーク在宅就労促進事業」を実施しています。平成21年度、テレワークの更なる拡大のため常用雇用だけに限定していた支援対象を、パート・アルバイトや個人請負等へも広げ、テレワークの受注量の安定的確保のため、発注奨励金も新たに設けています。
      -http://www.city.matsuyama.ehime.jp/chiikike/1194731_1019.html

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≪編集後記≫

  今回のコラムのテーマである「テレワーク」という言葉を私が初めて聞いたのは、5年以上前のことだったと思います。育児や介護中の方だけでなく、高齢の方や身体的に不自由のある方、あるいは遠隔地に住む方など、あらゆる状況の方が、個々人の望む就業の機会を得られるシステムだと感じ、今後幅広く導入されるシステムではないかと思ったことを覚えています。

  その時の期待とは裏腹に、今実際テレワークを行っている人の少なさに驚きます。残念ながら私の周囲ではテレワークを行っている人をほとんど聞いたことがない状況です。

  設備の面や周囲の理解など、テレワーク導入に際して必要な要素は種々あると思いますが、ワーク・ライフ・バランスはもちろん、経済の活性化や就業の幅広い選択にもつながるものだと思いますので、もっと身近なシステムになるよう普及する必要があると思います。(K)

発行
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