内閣府仕事と生活の調和推進室
Office for Work-Life Balance, Cabinet Office, Government Of Japan
■□ カエル! ジャパン通信 Vol.27 □■
暮らし方、働き方などについて、改めて考えさせられることの多かったこの一年の終わりにあたり、「海外のワーク・ライフ・バランス事情と日本の現状」についてお届けし、私たちをとりまく働く環境について今一度考えてみたいと思います。
≪目次≫
海外のワーク・ライフ・バランス事情と日本の現状
- 有給休暇国際比較調査2011【エクスペディア】(2011年11月) 他
- 海外労働情報
- 【ドイツ】週末・夜間に働く者が増加、補償も「代休」から「金銭」へ【独立行政法人労働政策研究・研修機構】(2011年12月)
- お知らせ
- 「仕事と生活の調和(ワーク・ライフ・バランス)レポート2011」を発行【内閣府】 他
- イベント
- 平成23年度 テレワークセミナーを名古屋、広島、福岡で開催(参加費無料)【厚生労働省主催(協力:株式会社テレワークマネジメント)】 他
★≪コラム≫海外のワーク・ライフ・バランス事情と日本の現状
日本は先進諸国と比べてワーク・ライフ・バランス(以下、WLB)の取組が遅れていると言われています。2001年度のOECD諸国18カ国の「仕事と家庭の両立度」では、1位スウェーデン(3.3)、2位デンマーク(2.9)、3位オランダ(2.7)と続き、日本は17位(-2.9)でした(※1)。
それでは、諸外国ではどのような政策が取られているのでしょうか。WLB のモデル国と言われるスウェーデンでは、協調的かつ建設的な労使関係を背景に、多くの場合、法律で規定された水準を上回る待遇や処遇が確保されています。例えば、育児休業時には約8割の所得保障が政府の一般財源から支給されることが法律で規定されていますが、労働協約により更なる上積み(所得保障)を約束している企業が多数存在しています。
欧州各国では、社会保障政策や少子化対策の一環としてWLB政策が推進されています。例えばフランスでは、企業内保育所の設置・運営に対する全国家族手当金庫(CNAF)を通じた支援を中心に政策が実施されています。フランス全土に 242 の企業内保育所が存在し、保育所に入所している全児童の約7 %に当たる 1 万 5,000 人以上の児童が企業内保育所で受け入れられています(2008 年現在)。ドイツでは、企業が従業員に対して追加的な保育費用補助手当を支給する場合、当該手当にかかる部分を非課税にするという支援策を講じています(※2)。
また、アメリカではWLBの取組は政府の福祉政策ないし労働政策としてではなく、民間における自発的な企業努力として進められてきました。近年では、企業側がコストを負担して従業員に提供する「福祉的」施策ではなく、企業が業績を伸ばすための経営戦略の一部として、柔軟な就業形態の導入、家庭や健康へのサポート等を実施しています(※3)。
翻って我が国では、2007 年 12 月に「ワーク・ライフ・バランス憲章」と「仕事と生活の調和推進のための行動指針」を策定し、そのもとで法整備が進み、子育てサポート企業の認定、均等・両立推進企業表彰等による個人・企業・国が一体となったWLB施策が推進されてきました。企業では育児休業制度や短時間労働制度等様々な制度が導入されていますが、実際の労働者の一日当たりの有給および無給労働時間の合計(通勤時間を含む)は9時間で、メキシコ(9時間45分)に次いで最も長く、OECD平均(8時間4分)を大きく上回っています(※4)。この原因として、早稲田大学の小倉氏は、日本企業では年間の事業活動において必要とされる人員の計算に休日や休暇を考慮していないため等の仮説を唱えています。また、現在の日本の労働時間は、労働生産性を最大にする長さ以上の長さになっており、様々な悪影響を及ぼしている可能性を指摘しています(※5)。内閣府の調査によると、労働時間を減らしたい(「そう思う」+「ややそう思う」)とする回答は、全体の43.9%となっています。その一方で、減らしたいとは思わない(「あまりそう思わない」+「そう思わない」)とする回答も、30.1%となっています(※6)。
これからの日本では、労働者それぞれの多様なライフスタイルを尊重しながら働ける環境が求められています。知識労働へのシフトやITの進展で職場や仕事の質が変化し、若者や女性の労働意識もWLBを考慮したものへと変化しています。企業側でもフレックスタイム制や時短勤務といった柔軟な働き方の導入が進んでおり、国や地方公共団体、民間団体が実施する表彰制度による好事例の紹介等を通じて、取組企業も着実に増えつつあります。今後も、個人・企業・国が相互それぞれに関係しながらWLBの取組を行うことによって、社会全体でより一層よい関係が築かれ、取組自体が推進されていくことでしょう。
(※1)OECD Employment Outlook 2001 Chapter4 : The work-family balance(2001年7月)
http://www.oecd.org/social/family/2079435.pdf
(※2)独立行政法人労働政策研究・研修機構「ワーク・ライフ・バランスに関する企業の自主的な取り組みを促すための支援策―フランス・ドイツ・スウェーデン・イギリス・アメリカ比較―」(2011年3月)
http://www.jil.go.jp/institute/chosa/2011/documents/084.pdf [PDF形式:2877.44KB]
(※3)内閣府「少子化社会対策に関する先進的取組事例研究報告書」(2006年3月)
https://www8.cao.go.jp/shoushi/cyousa/cyousa17/sensin/index.html
(※4)OECD「図表でみる社会2011」(2011年4月)
http://www.oecdtokyo.org/theme/social/2011/20110412sag.html
(※5)小倉一哉「日本の長時間労働―国際比較と研究課題」(独立行政法人労働政策研究・研修機構、2008年6月)
http://www.jil.go.jp/institute/zassi/backnumber/2008/06/pdf/004-016.pdf
(※6)内閣府「少子化施策利用者意向調査の構築に向けた調査」(2009年3月)
https://www8.cao.go.jp/shoushi/cyousa/cyousa20/ikou/2_2_01.html
★≪統計・調査トピックス≫
今回のテーマに関連した調査についてご紹介します。
- 有給休暇国際比較調査2011【エクスペディア】(2011年11月)
世界最大のオンライン旅行会社エクスペディアジャパンが今年実施した「有給休暇国際比較調査」によると、年間の有休消化日数は、日本が最下位で5日、次に韓国で7日でした。30日有給を消化する1位のフランスやスペイン等のヨーロッパ諸国やブラジルと、大きく差が開いています。さらに、実際の消化率で比較すると、欧米諸国は有休消化率86%~100%に対して日本は45%、韓国は70%となり、もともと支給日数が少ないのにもかかわらず、消化もしていないという結果となっています。
http://www.expedia.co.jp/corporate/holiday-deprivation2011.aspx?mcicid=ban____Holiday-Deprevation___145x60
- 「女性の働き方に関するアンケート」調査【日本経済新聞社、日経ウーマンオンライン】(2011年11月)
- 「理想のワーク:ライフ」について、「管理職は6:4、一般社員は5:5」
- 「職場・社内に目標となるロールモデルがいますか」という質問について、管理職ではロールモデルがいる(いた)人は約57%いたのに対し、一般社員では社内にロールモデルがいると答えた人は2割にも満たない
http://wol.nikkeibp.co.jp/article/souken/20111122/116134/?P=1
★≪最新情報≫ (原則として、発行月の前月以降に更新された内容を掲載しています。)
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海外労働情報
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【ドイツ】週末・夜間に働く者が増加、補償も「代休」から「金銭」へ【独立行政法人労働政策研究・研修機構】(2011年12月)
ドイツでは、標準労働時間(9時~17時)以外の土日や夜間に働く人が1990年代半ばから増え続けており、このうち土曜勤務に定期的につく労働者は2009年には4割を占め、1995年に比べ6%も高くなりました。残業の補償方法も変化し、「代休取得」が1984年の4割弱から1割近くまで減り、代わりに「代休取得と金銭補償との混合」、「金銭補償」が増えている等の結果が、ハンスベックラー財団の報告で明らかになりました。
http://www.jil.go.jp/foreign/jihou/2011_12/german_01.htm
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【ドイツ】週末・夜間に働く者が増加、補償も「代休」から「金銭」へ【独立行政法人労働政策研究・研修機構】(2011年12月)
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お知らせ
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「仕事と生活の調和(ワーク・ライフ・バランス)レポート2011」を発行【内閣府】
内閣府では、「仕事と生活の調和(ワーク・ライフ・バランス)レポート2011」を発行しました。本レポートは、企業と働く者、国民、国、地方公共団体の各主体における取組を定点観測し、今後の展開を含めて紹介するとともに、仕事と生活の調和の実現状況の把握をした上で今後に向けた課題を洗い出し、重点的に取り組むべき事項を提示しています。2011年版では、3.11東日本大震災の影響から、働き方の見直しに取り組む企業の事例についても記載しています。
https://wwwa.cao.go.jp/wlb/government/top/hyouka/report-11/index.html -
「ワーク・ライフ・バランスを実現する上で障害となっている規制・制度・運用等」についての意見・提案募集【内閣府】
政府では、平成22年12月に閣議決定した第3次男女共同参画基本計画(以下、「第3次計画」という。)に基づき、男女共同参画社会づくりのための施策を推進しています。
人口減少・高齢化が進み、経済が長期にわたり低迷する中、全員参加型の社会の実現を目指すためには、特に、ワーク・ライフ・バランスの実現が喫緊の課題です。
このため、第3次計画においても、第5分野に「男女の仕事と生活の調和」の分野を新たに設置したところです。
今後、WLBを推進するため、以下のとおり「ワーク・ライフ・バランスを実現する上で障害となっている規制・制度・運用等」についての御意見又は改善のための御提案を広く募集することといたしました。ぜひ、ご意見、ご提案をお寄せください。
1.募集する意見・提案「ワーク・ライフ・バランスを実現する上で障害となっている規制・制度・運用等」についての御意見・改善のための御提案2.意見・提案の取扱い
※例えば、次のような点に関するもの- 就労による経済的自立(非正規労働者や母子家庭の母等の就労、社会的起業を通じた就業など)
- 多様な働き方・生き方の選択(仕事と子育てや介護との両立の実現など)
- 健康で豊かな生活のための時間の確保(長時間労働の抑制など)
いただいた御意見・御提案をもとに、「ワーク・ライフ・バランスを実現する上で障害となっている規制・制度・運用等」について、改善方策の検討を進めます。必要に応じて、男女共同参画会議等を通じ、関係大臣への要請を行うなど、具体的かつ実効ある改善の実現を図ります。
いただいた御意見・御提案は、個人情報を除き公表する場合がありますので、あらかじめ御承知おきください。
いただいた御意見・御提案について、個別の回答はいたしません。
3.募集期間平成23年12月27日(火)から平成24年1月26日(木)まで
4.意見の提出方法及び提出先専用メールフォーム、郵送のいずれかにより、所定の様式で提出をお願い致します。
詳細は、以下のページを御確認ください。(専用メールフォーム等も以下からアクセスしてください。)
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「仕事と生活の調和(ワーク・ライフ・バランス)レポート2011」を発行【内閣府】
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イベント
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平成23年度 テレワークセミナーを名古屋、広島、福岡で開催(参加費無料)【厚生労働省主催(協力:株式会社テレワークマネジメント)】
(名古屋会場)
(広島会場)
日時:2012年1月13日(金)13:30~17:00(開場13時)
会場:安保ホール
定員:80名(申込締切1/11)
日時:2012年1月26日(木)13:30~17:00(開場13時)
会場:広島国際会議場
定員:75名(申込締切1/24)(福岡会場)
日時:2012年2月9日(木)13:30~17:00(開場13時)
会場:八重洲博多ビル
定員:90名(申込締切2/7)お申込& 詳細はこちらをご覧ください。
http://telework1.jp/
各講師の詳しいご紹介&講演予定会場はこちらをご覧ください。
http://telework1.jp/instructors
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連続講座「一歩先を行く男の子育て孫育て応援塾」の開催【ちば県民共生センター】
日時 2012年1月14日(土)から1月21日(土)14:00~15:30
会場 千葉県青少年女性会館
対象 (1/14)公開講座70名、(1/21)ワークショップ30名(公開講座受講の男性)
講演 「パパの危機管理~震災活動を通じて見えてきたこと~」NPO法人ファザーリング・ジャパン代表 安藤哲也さん 他
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在宅ワークシンポジウム「震災を超えて~見直される多様な働き方~」を開催【厚生労働省】
日時 2012年1月16日(月)13:00~16:30
会場 文京シビックホール
対象 経営者、人事労務担当者、在宅ワーカー、在宅ワークに興味をお持ちの方200名(要申し込み)
講演 「多様な働き方と在宅ワークの可能性」佐々木かをり氏(株式会社イー・ウーマン代表取締役社長)パネルディスカッション 「これからの在宅ワークを考える」モデレーター 鎌田耕一氏(東洋大学教授)
パネリスト 会田和子氏(株式会社いわきテレワークセンター代表取締役社長)伊藤正樹氏(エヌ・ティ・ティ・コム チェオ株式会社取締役)他参加費 無料
http://www.homeworkers.jp/symposium/2011.html
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ワーク・ライフ・バランスに関するポータルサイト「かながわ働き方改革」オープニングシンポジウムを開催【神奈川県】
日時 2012年1月16日(月)14:00~16:00
会場 関内ホール 小ホール
講演 「生活と仕事の調和」が企業も家庭も、そして地域も元気にする渥美由喜氏(内閣府男女共同参画会議 専門委員) 他
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ワーク・ライフ・バランスシンポジウム開催【静岡県】
日時 2012年1月19日(木)13:20~16:50
会場 静岡県男女共同参画センターあざれあ 6F大ホール
対象 経営者、人事労務担当者等働いている方、その他関心のある方300人(先着順)
講演 「働きがいを生む組織づくり」(株)スコラ・コンサルト プロセスデザイナー代表 柴田昌治氏 他参加費 無料
http://www.pref.shizuoka.jp/sangyou/sa-210/wlbchirasi.html
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「ワーク・ライフ・バランス導入セミナー」参加者募集!(県内2会場)【香川県】
(中讃会場)
日時 2012年1月23日(月) 13:30~16:45
会場 丸亀市生涯学習センター 4階 講座室
(高松会場)
日時 平成24年1月24日(火) 13:30~16:45
会場 高松シンボルタワー ホール棟 5階 第54会議室
対象 中小企業の経営者、人事労務管理者等 各50名
講演 「今こそワーク・ライフ・バランス推進の好機」渥美由喜氏(株式会社東レ経営研究所 ダイバーシティ&ワークライフバランス研究部長 兼 主席コンサルタント) 他参加費 無料
http://www.pref.kagawa.lg.jp/kgwpub/pub/cms/detail.php?id=11099
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ワーク・ライフ・バランスセミナーを開催【仙台市男女共同参画推進センター】
日時 2012年2月1日(水)13:30~16:30
会場 エル・パーク仙台 セミナーホール
対象 企業の人事・労務担当者30名(先着順、定員になり次第締切)
講演 渥美由喜氏(内閣府男女共同参画会議 専門委員)
参加費 無料
http://www.sendai-l.jp/cgi-local/event_t/view.cgi?ARTICLE=on&&B_NO=CAT01&NO=247
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人事・労務担当者のための「ポジティブ・オフ」セミナー『休暇で描く社員と企業の成長戦略~「ポジティブ・オフ」を契機として~』を開催【観光庁】
日時 2012年2月2日(木)14:00~16:30
会場 日経・大手町セミナールーム2
対象 企業の人事・労務担当者100名(事前申込制)
講演 東京大学大学院情報学環教授(社会科学研究所兼務) 佐藤博樹氏(予定) 他
参加費 無料
http://www.face2.jp/posioff0202/
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平成23年度 テレワークセミナーを名古屋、広島、福岡で開催(参加費無料)【厚生労働省主催(協力:株式会社テレワークマネジメント)】
https://form.cao.go.jp/wlb/opinion-0001.html
このままご返信いただけませんのでご了承ください。
https://wwwa.cao.go.jp/wlb/e-mailmagazine/tetsuzuki.html
https://wwwa.cao.go.jp/wlb/index.html
早いもので、2011年も終わろうとしています。
今年も色々なテーマでワーク・ライフ・バランス(仕事と生活の調和)について考えて参りましたが、やはり今年の初めに起こった東日本大震災は、私達の中に刻まれた大きな出来事だったのではないでしょうか。
今の日本だからこそ考えることができる多様な働き方やライフスタイルについて、この一年の終わりに一人ひとりが今一度振り返って考えることで、今後、ワーク・ライフ・バランスが様々な場面で浸透していくよう願いつつ、筆を置きたいと思います。(K)
内閣府 仕事と生活の調和推進室
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TEL:03-3581-2327